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【改訂版】マスターレベルの錬金術師となった転移者のおっさんは島を買って魔王と戦う  作者: Edu
転生したら錬金術スキルがマスターレベルになっていました
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第9話 錬金術マスターレベル2

9話もお読みいただきありがとうございます。

 その夜、宿屋"眠るクジラ亭"の錬金術師フィリップの部屋からは緑色の光が漏れでていた。

 緑色の光がドアの隙間から二階の廊下を照らし出していたのだ。

 その光はすぐに収まった。


「ふぅーこんなところかな?」

 フィリップは目の前にある黄金色にきらめく小物たちを眺めた。

 完全に黄金色になった小刀、同じく黄金となったスプーンなどのカトラリー類(研究所から持ち出したもの)や、変質に失敗した食器類がずらりと並んでいる。


 どうやら今のところ、5gから10gくらいの物体で、できれば銀や錫などの金属類を、複数純金に変質させるのが限界のようだった。それより大きい物体だと、一部が変質するような感じになる。また少なくとも、いまのところ金属を黄金に変えることはできるが、土器とか陶磁器は変えられないようだった。


 とはいえ陶磁器に塗られた釉薬(ゆうやく)は金属に変えることができるようだったが、微妙な色合いの模様が黄金になるとどうも違和感のある食器類が多かった。


 さらに色々と試してみたが、銅を鋼に変えるなども可能のようだったが、とりあえず現金になるという観点では純金が一番よさそうだ。精錬されていない鉱物も変質はさせられるがムラがあるようでうまくいかなかった。


 マスターレベル1の状態ではだいたい1週間に50gか100gくらいは変質できるようだった。

「明日、クルエラに売ってきてもらうとして……」


 黄金色にきらめくスプーンをひょい、とつまんで眺める。

「これもしかして、もう少し高そうな銀食器とかを黄金に変えたほうが付加価値つかないのかな?」


 いま持っているのはシンプルな量産型のカトラリーだ。

 もしかすると今回、売って出来たお金を原資にもう少し材料を買ってきたほうがいいのかもしれない。


 いろいろと思案しているとドアがノックされた。

「なんだ……?」


「エレノアだ、錬金術師殿、ちょっといいか?」

 堕落した、堕勇者のエレノア……とはいえ昨日の出来事で汚名返上したので勇者エレノアと呼んでもいい……と思っているとドアが開いてエレノアが入ってきた。


 さすがに旅装は解いていたが、麻の服の上から革の胴着を着込んでいつもの剣は腰の帯革(たいかく)で吊るしている。表情が暗い。何か深刻な話なのだろうか。


「どうした、エレノア殿……」

「錬金術師殿」

 エレノアは銀色の瞳をうるわせていた。


「エレノア殿……?」

 そしてとたんに鳴る彼女の腹。

「腹が……空いた……」

 エレノアは崩れ落ちた。


「……夜食でも探しに行こうか……」

 まだ換金前だが財布には銅貨10枚は入っていたはずだ。


 クルエラも行くかもしれないと思い、彼女の部屋のドアをノックしたが静まり返っていたので置いていくことにした。


 この時期でも外は肌寒い。

 マントを羽織ってフィリップとエレノアは"眠るクジラ亭"を出た。


 街の中は研究所のある港町ザンスケルと同じように、金属の柱の上で光る球体が並んでいるので、少なくとも周囲が見えないということはなさそうだった。

 

 石畳もとこどろころ、何か光る小石のようなものが埋め込まれているようで、ぼんやりと見えるようになっていた。


 街角にはところどころ屋台のようなものが出ていて、暖めた葡萄酒や、焼いた栗などを売っているようだった。


 葡萄酒と焼き栗を買って噴水の傍に座る。

 噴水は何かの魔法か何かの影響か、ほんのりと温かく、噴水の周囲に光る玉がいくつか浮かんでいて幻想的な光景だった。


 葡萄酒を飲むとハチミツや何かのハーブの香りがした。

「あっつ!」

 エレノアはどうやら猫舌らしい。


「……ところで例の研究活動の登録料なのだが」

 エレノアが切り出した。

「金貨3枚と宿屋の女将が言っていたな……錬金術師殿には世話になっている。そこで……」


 彼女は長剣を外し、柄をぐいっとフィリップに突き出した。

「この長剣は銘があるわけではないが、風妖精(シルフ)の祝福を受けた剣だ。鍛えも良いから金貨数枚にはなるはずだ。これを質にでも入れて足しにしてほしい」


 彼女の目は真剣だった。 

 フィリップは笑った。


「冗談ではなく、真剣だぞ!」

 エレノアが憤慨する。

「いや、すまない……俺は錬金術師だ。何とかするさ」

「金属を黄金に換えられるわけではあるまい?」

「どうかな」


 フィリップはにやっと笑って剣を返した。

 エレノアは納得したようなしていないような顔だったが、彼女の申し出そのものは有難かった。金のない勇者にとってその武器を差し出すというのは本当によく考えた末の行動だったのだろう。


 宿屋"眠るクジラ亭"にエレノアを送ると、フィリップはぼきぼきと腕を鳴らし、もう一度、錬金を試みた。緑色の光が広がる。

 そしてどこかからか声が響いてきた。


「錬金術マスターレベル2になりました」



――フィリップの現在の所持金

馬車短距離二台分 銅貨 -5枚


銅貨5枚(2000円相当・財布)

銀貨8枚 銅貨6枚 銀貨(68000円相当・クルエラ管理)

一部が黄金色になった小刀

黄金色のスプーン





ついにマスターレベル2に到達! ٩(ˊᗜˋ*)و

その能力については次話にて。


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