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【改訂版】マスターレベルの錬金術師となった転移者のおっさんは島を買って魔王と戦う  作者: Edu
転生したら錬金術スキルがマスターレベルになっていました
10/23

第10話 オリヴィエル帝国への研究費申請

10話もお読みいただきありがとうございます。

 朝から快晴だった。

 エレノアは宿にしている"眠るクジラ亭"に残ると主張して朝からぐだぐだしていた。


 フィリップは弟子のクルエラだけ連れて散策に出た。

「とりあえず書類だけは整えてありますけどぉ、登録料の金貨3枚どうします……?」

 クルエラは心配そうだ。


「大丈夫、実は秘蔵の品があるんだ」

 フィリップは懐から黄金色にきらめくスプーンを5つ取り出した。


「あれっあのスプーンまだあったんですか?」

「実は錬金したんだ」

「またまたぁ」

 クルエラはケラケラ笑ってフィリップの背中をどんと叩く。


「はは……」

 実際錬金には成功した。

 マスターレベル2になったことで、金に変換できる質量が増えたようだった。


(これここ(・・)に来る前に出来たら凄いことになってたよな……)

 ここに来る前はしがないサラリーマン・新井だったフィリップはそう思った。


「じゃあとりあえず換金に行きましょうか」

「うむ……」


 宮殿に向かう大通りに面した雑貨商に入る。

 その雑貨商は派手な店構えで、どちらかというと控えめで優雅な景観の王都の中で、こじんまりとはしているが、まるでゴシック建築のように凹凸の多い装飾が施されている。

 店の窓にはガラスも使われ、センスはともかくかなり派手な雰囲気だ。


 重々しい木の扉を開けると、そこかしこに、これまた派手なツボやら極彩色のグラスやら、よくわからないものやらが陳列され、奥にカウンターがひとつ。

 そして赤と青のストライプの服装に、緑に髪を染めた恰幅のよい中年男が座っていた。男は長いつけまつげをつけ、頬紅をつけていた。


「あーらいらっしゃい」

 男は品定めをするような目つきでこちらを見ている。


「あたしはトルヒーヨ……見たところ学者先生のご一行って感じかしら?」

「まぁ当たらずとも遠からずかな」

 フィリップは若干、気圧(けお)されながら言った。


「ここはかなりの高級店よ、学者先生に売るものなんかあるのかしら?」

 鼻で笑うトルヒーヨ。

 むっとしたらしいクルエラが彼に詰め寄る。


「先生は、ただの学者先生じゃないんですよ!」

「へぇ?」とトルヒーヨ。

「そりゃあ研究費がいつもなくて変な薬ばっかり作ってるし、体力はないし、ついでに実験もしょっちゅう失敗してますけどぉ、雑務もたくさん押し付けてくるし」

「……それ何かいいところあるの?」

「あ、うーんそう……うーん……」

「そこは考え込まなくても」フィリップはがっくり肩を落とす。

「そ、そうだ、善人! 善人です」

「学者関係なくない?」

「キーッ!」


「まぁ…まぁまぁ」

 フィリップが割って入る。


「いや実際俺はそんなに大した学者ってわけじゃないんだが、秘蔵の品を売りにきたんだよ」

 そう言ってフィリップは高級感のある色合いの布をカウンターに広げる。その布には黄金のスプーンが5つ入っていた。


「あらぁ?」

 トルヒーヨが目を細めた。 

 眼光が鋭くなる。


「ちょっと見せてもらってもいいかしら?」

「どうぞ」

 トルヒーヨはルーペのようなものを取り出して、黄金のスプーンを1つつまみ、眺めた。


「ん……みた感じ金無垢ね……刻印とかなーんにもないけど……」

 秤の上にスプーンを乗せて調べ始める。重量を見ているのだろう。

「……多分純金ね。アタシは鑑定スキルは持っちゃいないけどだいたい分かるわ」

 そう言ってトルヒーヨはじろりとこちらを見る。


「これどこで手に入れたの?」

「先祖が残したものの中にあったんだ」

「そーお? この形はわりと最新だけどねぇ……」

「何か問題でも?」

「出所が確かじゃないものは基本的には買わないんだけど、物はいいわね……」


 トルヒーヨはカウンターの上に金貨を3枚置いた。

 研究所のある港町ザンスケルで売った時よりも若干レートが高い。


「おぉー研究費クリア!」

 クルエラが思わず言う。


 トルヒーヨが噴き出した。

「くくっ……あんたたち、研究費の申請に来てたの? あぁ登録料か、今年から上がったらしいわね」

「まぁそうなんだ」

「ふーん、まぁ本当は情報料とも思ったんだけど……あんたたちが気に入ったわ。今回はこのレートで買い取ってあげる。ただ次は出所がある程度確かじゃないと買わないわよ」

「恩に着る……」

「この町は帝国のおひざ元でもあるから、地方と違って買い取りや中古品の売買にも結構規制があるのよ。まぁあたしなら何とかできるけどねぇ」

 トルヒーヨが怪しげな笑みを浮かべる。


「考えておく」

「また来てね、学者先生」


 扉を閉めると、思わず息をついた。

「いやーなんかすごい人でしたねぇ」とクルエラ。

「あぁ……だけどこれで登録費はクリアかな?」

「ですね?」


「錬金術師どのぉ」

 聞きなれた声がする。

 見ると、白金色の長髪の女性騎士が哀れな様子でこちらを見ている。

「エレノア……」

「く、空腹で力が……」

 がくりと崩れ落ちるエレノア。


「魔物を両断した時はかっこよかったのに……」

 クルエラがぼそりとつぶやいた。

「……とりあえず飯に行こうか」

 

 そしてその後、エレノアは金貨以外のほぼ全財産分食べたことは言うまでもない。


――フィリップの現在の所持金

食事代エレノア 銀貨-8枚

黄金のスプーンを売った代金 金貨+3枚


金貨3枚(240,000円相当)

銅貨5枚(2,000円相当・財布)

全部が黄金色になった小刀


久々の更新です ٩(ˊᗜˋ*)و

ちょっと金に変換できる質量が増えたようです。


やはり帝都のほうが物価が高い分買い取り価格も高いのですが、

色々と規制がありそうです。

金を作って現金に換えるのが意外に大変のようですね。


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