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軟化していく元・日本史上最凶の通り魔犯(後編)〜〜獄中で芽生えた恋心〜〜

完結まで、この話含めてあと六話です。

ガチでターニングポイントとなるんで全力で頑張ります!!

 結婚してくれ______



 そう加藤に言われた時、信じられない気持ちに私はなった。


何故私なんかに結婚を申し入れたのか……私には本当にわからなかった。


なにしろ男性に告白された経験など皆無。


ただ、悪い気はしなかった。


獄中結婚なら、拘留までの間は結婚は出来ないが、執行されれば新しい相手を見つけられるというのもあるし、何より好意を持ってもらえたのは事実。


だが、すぐ結論を出すわけにもいかなかった。


「……いやー……まさかそう言われるとは思ってませんでしたから……今ここで結論を出すというのは……うん、難しいですね…普通に………。」


「あ……ああ、いや、すぐに結論を出してくれ、って言ってるわけじゃないんだよ。その結論は……手紙でもなんでもいいのさ。ただ……俺のことをちゃんと理解してくれるのは……アンタしかいないって思っただけさ。だから……俺の気持ちだけは……わかってくれるか……? 瀬川さん。」


ものすごい恥ずかしい気分になった。


まあ、加藤も顔を赤らめているので本気なのは伝わった。


「……でも……悪い気はしないですね。では後日、お手紙の方で結論を出させていただきます。」


「あ、ああ。わかった。返事は待ってるからよ。……ゆっくり決めてくれ。」


「ええ。それでは、今日の方は失礼します。」


こうして、私は面会室を後にした。




 加藤は面会室から独房に戻る時、刑務官と会話した。


「加藤……なんであの記者さんに結婚を申し込んだ? まあ、拘置所に出会いはねえからそういう理由もわからなくはねえけどな。ちゃんとお前のことも受け止めたしな。」


「……なんでだろうな。俺もよくわからねえんだ。……出逢ううちに考えが変わっていったのかもな。ただ……顔の良し悪しじゃねえさ。顔なら瀬川さんよりいいのはごまんといるさ。けれど……女は中身だな。上手く説明はできねえが……あの人なら全部を……わかってもらえる気がするんだ。」


そういって、加藤は今まで見せたことのないような笑顔を刑務官に見せた。


眩しい笑顔だった。


「……もう4年もお前を見てきてよ……そんな顔を見せたのは初めてだ。改めてお前の担当でよかったよ。」


「……そいつぁ、どうも。……刑務官(オヤジ)さん。」


こうして加藤は独房へと入っていった。




 一方、告白を受けた側の私はというと。


(ヤバイヤバイヤバイ……どうしよう……どう受け止めればいいのこれ!? マジでわかんないって……!!)


ドラマみたいな展開で私は興奮していたのだった。


ただ、一回冷静になろう。


「これ編集長に報告しないとダメじゃない……!? 結婚を申し込まれたってこと……!!」


そう思い立った私は、幽芳社まで車を走らせていった。




 そして幽芳社に着いて、編集長室へと駆け込んで行った私は、編集長に事の顛末を全て報告した。


加藤が事件の真相を告白したこと、そして、結婚を申し込まれたことを。


それを聞いた編集長は大笑いしていた。


「ハッハッハッハッ!!! まさか加藤が君に告白とはねえ!!」


「ハア……編集長、まじめに聞いてください。」


「いやあ、申し訳ない。まさかそんな展開になるとはねえ……。うん、いいんじゃないか? 受け入れても。君は経験しなかったことだろう? そういう感覚を知っておくのも、悪くはないんじゃないか? もし君が受け入れるという決心をしたのなら、僕は喜んで君の証人になってあげるからさ。」


「………お心遣い、感謝します。」


「……それならば、次がおそらく君に乗り越えてもらわないといけない試練になるかもしれないけれど……。君は加藤の母親の連絡先を貰っているんだろう? 『笠木かや』から。」


「……ええ。頂いておりますが、それが何か。」


私は固唾を飲んだ。


「……母親に取材してくれるかい? かなりの高いハードルになるけど……今の君になら、やれると信じている。やってくれるかい?」


話を聞く限りだと、悪辣な母親に取材をしろ……。肺の中の空気が熱くなり、息をするのも苦しいが……。


加藤のためと、未来の母親になる人のためには立ち止まるわけにはいかなかった。


感情を押し殺し、意を決した。


「……やります……! というか、やらせてもらえませんか! 編集長!!」


人生25年生きて、今までにない力強い声を発しただろうか。


覚悟はもう、決まっていた。


「……うん、いい返事だ。もうこの件は、君に全部一任する。……未来の親になる人たちのために取材する。それが君の、生きる道だろう?」


私は編集長に一礼をし、編集長室を後にした。




 編集長に報告を終えた後、オフィスを出た私は自宅にいた。


「……さて……。とにかく準備だな。まずは。伽耶さんに連絡を取らないといけないな、これは。……まあ、そこは軽く食事にでも誘えばいいか。」


私は伽耶に連絡を入れた。


どうやら今は撮影の合間だったようで、明日の昼、時間があるというので、取材を受け入れることを了承した。


とにかく急いで記事を作らないと、加藤の処刑までは間に合わない。


加藤に未練を残させたまま殺させるわけにはいかない。


ここがヤマ場だな。


そう思い立ち、私は録画を溜めていたアニメを一通り観ることにしたのだった。

次回、伽耶に2回目の取材を敢行しますが……あくまでも母親の取材の協力者となってもらうだけです。

完結まで毎日投稿を続けていくので最後までよろしくお願いします。

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