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7/14

7年ぶりの実家帰省

あくまでも一応ホームドラマという立ち位置にこの話はあるので、ぎこちない会話がありますが……。虐待を受けた子供って、親とまともに取り合ってもらえずにコミュニケーション能力が欠如していることが多いんですよね。

僕も小学生の頃は母親に僕の意見を全く取り合ってもらえなかったので……今でも人と話すの苦手なんですがね……(苦笑&隙自語)

そういった意味も込めて書きましたので是非ご覧あれ。

 私は休日を利用して、埼玉県八潮市にある実家に帰ることにした。


なぜ実家に急に帰ろうと思ったのか、私にもわからない。


だが何か加藤のあの事件に繋がるヒントがあるのではないだろうか。


話を聞いていると私の母、「公子(きみこ)」と本当によく似ていた。


加藤に時間がないのは私もわかっている。


だからこそ何か足掛かりがあれば。


そう思い立ったのだった。



 高速道路で車を走らせている道中で思い出すことがある。



 18の時に進路を決める時、私は家出をした。


人の意見を全く聞かなかった母のことだ。


勝手な行動だとは思ってはいたものの、この家出は、母に対しての最初で最後の反抗にしようと決めていた。


母からの暴行にもう、耐えきれなくなったというのはあったのかもしれない。


今考えたら。


春日部市で暮らす父の下へ逃げたのを今でも覚えている。


まあいわゆる「偽造親権」とでも言うべきだろうか。


親権は母のところにあったのは事実だ。


けれどもどうしても心理学部に行きたかった私は、進路のところに保護者欄を父に書いてもらうために、母に何も言わずにある日の土曜日午前1時に家を飛び出した。


そして父の家へと向かっていったのだった。



 父のところにはちょくちょく遊びには行っていたのではあるが、その年に父は川口市から異動となって割と遠い春日部市に住んでいた。


思ったよりお金が掛かって苦労した思い出がある。


バイトをしたお金はほぼ母に持っていかれたのもまた事実。


今思えば異常で、クズな母親なのだが、私は母が親でなければ、反動でアニメの世界にのめり込むこともなかっただろうし、加藤の妹、伽耶がAVデビューした時と似たような事情だ。


そして今この仕事をやっていて思う。


なんで実家なんかに足を運ぶことになったのか。


加藤との出会いが運命を結んだのではないだろうか。




 1時間半車を走らせて、八潮の実家に着いた。


といっても築40年にもなるアパートなのだが。


その一階の一番奥の部屋に私の実家もとい、悪夢の時間がある。


立て札はどうやらそのままなようだ。


母はまだいる。


心臓が恐怖という緊張で高まるのを感じる。


それもそうだ。


何も言わずに家出してから母に一切連絡を取ってないし、7年も家に帰ってもいないのだから。



 手が震える。



 深呼吸してなんとか心臓の鼓動を抑えようとするが、どうにも止まらない。


恐る恐る、インターホンを押した。



 ピンポーン、という独特な音が響く。



 あのね、ウチは新聞お断りって何回言えばいいんですか、という声と共にドアが開いた。


母・公子の姿が現れた。


7年前より、シワが増えた母。


押さえている感情を私は更にグッと堪える。


母は驚いた顔をしている。


何せ7年ぶりに帰ってきた娘の姿なのだから。


「は……晴香……!?」


驚くのも無理はない。


帰ってこないであろう筈だった娘が目の前にいるのだから。


「うん………ただいま。」


少し困った表情になった私は家に招き入れられた。




 7年ぶりに入った実家のリビング。


テレビは一応あるのだが、とても小さいし、昔より物がない。


相変わらず狭い部屋だ。


何から話せばいいのか……。


母と今話すことといえば加藤の件なのだろうが、そもそも母は私の今やっていることや趣味のことも一切を伝えていない。


まずは勝手に家を飛び出したことを謝るべきなのだろうが……どうも謝る気にもなれない。


複雑な気持ちがよぎる。


スーツ姿で時期外れの帰省をした私を見た母はこう呟いた。


「……なんか、明るくなったね。晴香。」


久しぶりに聞いた実家での母の声はその一言だった。


その声色にはもう、何かストレスがあれば私に手を挙げていた母の姿ではなかった。


丸くなった、とでもいうべきか。


そうかな? と私は反応する。


「……あの後ずっと待ってもアンタは帰って来なかったからさ……。気力ももう、無くなっちゃってね……。てっきり死んだのかなって思ったらさ……。」


「………。そっか…………。」


母は母なりに心配してたのだろうが、母が私にしたことを覚えているので項垂れた声を出すしかなかった。


「……どうせ……父さんのところに行ってたんでしょ? ……母さんに何も事情を話さないで……さ?」


「………うん……。」


「母さんさ……もう5年前にタバコ…辞めてんの。…なんでかわかる? 晴香。」


「秋葉原のアレ?」


「そう。で、犯人の裁判があったでしょ…? それ聞いてたらさ……私も…晴香に似たようなことしてたな…ってさ。思っちゃって。」


「………。」


母の懺悔とも取れる一言。


加藤のあの事件の影響は母にはいい方向に影響していたようだが……。


加藤の立場が私であればどうなっていたことやら。


そう思うと言葉が出てこない。


「今はもうさ…仕事も辞めて生活保護受けてるんだよね……。もうやる気も起きなかったしさ。タバコ辞めた後。……今の晴香見てたらわかるよ。もう、自分と同じ経験を他の人にしてほしくないって思ってるのがわかる。……だからさ……。」


「……母さん……もう……いいからさ…そういうの…。母さんが親じゃなかったら…今の仕事やってないと思う。私は。……むしろ私の方が心配かけたと思う。」


謝罪しようとする母を他所に言葉を振り絞る私。


母なりに私を心配していたのはわかったのでつい、出てしまった言葉だ。


やっぱり腐っても親は親だな。


そう認識したと同時に、母に対しての軽蔑も消えていた。



「母さん……その……ありがと。私のやるべきこと……改めて確認できた気がする。」


「……アンタ、やっぱり変わったよ。7年前、こんなに自分の意見言える子じゃなかったもんね。……私のせいでもあるのかもしれないけど……。」


「まあ……、違う世界見てきたからね…。色々勉強出来たから今の私がある。」


「……気をつけなさいよ? 晴香はさ…? あまり帰りたくないのかもしれないけど…待ってるからさ…? いつでも…。」


この言葉に涙が出そうだった。


だが、グッと堪える。


「……わかった…。行ってくるよ。私のやるべきところにさ。」


母の方を一切振り向かず、私は実家を後にした。



 

 こうして実家を後にした私は、自宅まで車を走らせている途中で、涙が溢れるのがわかった。


母が昔のことを反省しているのが窺えたことにホッとしたのか……。


家出した時には一切思わなかった、親との別れがここまで惜しいのかという気持ちもあったのだろう。



 母さん、貴女も変わったよ……。



 3日後には加藤との3回目の面会が控えている。


母に会って近況を聞いてよかったのかもしれない。


私は涙を拭って、自宅まで車を発進させていった。

母の晴香に対しての想いはやっぱり自分の子供ですから、そりゃ心配しますよね……。家出して帰って来ていないとなったら。書いてて結構カオスっぽくなりましたねwww


さて、次回は加藤との3回目の面会です。この回は前編と後編に分けようかと思いますので、そういう心づもりで頑張りたいと思います。

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