表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【連載版】追放後の悪役令嬢ですが、暇だったので身体を鍛えて最強になりました  作者: タック
第二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

17/58

寝室で男女二人

予約投稿しようとしたら、ミスって即投稿してしまった……!

「ジョセフィーヌ、いいよ。すごくいい」


「あ、あまり見ないでください……」


 寝室で興奮するケインの声と、恥ずかしそうにするジョセフィーヌの声が聞こえている。


「どうしてだい? こんなにも美しいのに。それを見るなというのは芸術の神への冒涜だ」


「で、ですが、恥ずかしいものは恥ずかしいですわ。このような行為…………彫刻のモデルなんて(・・・・・・・・・)!!」


 ケインはベッドで横になりながら、スケッチブックと木炭を持っている。

 その視線の先には椅子に座り、微動だにできないまま固まっているジョセフィーヌがいた。

 もちろん服は着ている。


「なるべく時間を無駄にしたくないから、眠くなるまでデッサンして彫刻のイメージを深めておこうかと思ってね」


「そもそも、どうしてわたくしを彫刻のモデルにしようと?」


「キミが追放されたと聞いてね。その理由は根も葉もない言いがかりだと憤慨してしまい、見れば誰もが凄いと思うキミの像を作ってやろうと思ったんだよ」


「そ、そんな理由のために、処刑されることも厭わず作業をし続けていたというのですか……?」


 ケインの身に降りかかっている問題は、今すぐ逃げ出してしまえば解決するものだ。

 ジョセフィーヌからしたら、自分の像を作るために命を投げだそうとしているなんて考えられないだろう。

 しかし――


「私の芸術家としての命は、あのときのジョセフィーヌによって削り出されたモノなんだ。己を鍛え上げるキッカケをくれたキミへの恩返しできないのなら、そんな命は必要ないのさ」


「熱い……ですわね……」


「窓でも開けるかい?」


「そうではなくて……ケインのハートが、24時間耐久筋トレしたときのように熱いという意味ですわ」


「それは光栄だね。あとはそのハートをジョセフィーヌの像に込めるだけさ」





 ……しばらくスケッチをしたあと、ケインはスゥスゥと寝付いていた。

 ジョセフィーヌはその寝顔を見て、子どもの頃の無邪気な彼を思い出す。


「可愛い寝顔だこと」


 そう小さく呟き、部屋の外に出て重力百倍で筋トレを再開した。




 ***




 ――そして、三日後がやってきた。

 白く輝くような高い壁の王宮、その庭園は綺麗に緑が刈り揃えられていた。

 今日は珍しく、門が開かれて民衆たちに解放されていた。


「カロリーヌの彫像のお披露目でオレたち呼ばれたんだってよ……」


「誰が好き好んで、一般人にまで無理難題を押しつけるブタのために……」


「シッ、聞こえたら処刑されるぞ……?」


 民衆たちの気持ちは沈んでいた。

 王国でのパワーバランスがカロリーヌに傾いてから、その重い体重のような負担が下の者にまでのしかかってきているのだ。


 税は上がり、食料は王宮に徴集され、カロリーヌを褒め称えよと兵たちが見張る。

 噂では婚約者となった第二王子のトリスだけではなく、王国内の様々な権力者を掌握し始めたとも言われている。


「ジョセフィーヌ様さえいてくれたら……」


 彼らは、よくお忍びで街にやってきていたジョセフィーヌのことを思い出す。


 口調や仕草はどう見ても悪役令嬢そのものだが、教会の支援をしながら親のいない子どもたちに勉強を教えたり、国民の声を聞いて街の整備を進めたり、ご老人の家を声かけついでに話し相手として回っていた。


 間違いなく、国民からの人気があったのはトリスやカロリーヌではなく、ジョセフィーヌだった。

 しかし、甘い汁を吸いたいだけの貴族からしたら、金を国民のために使ってしまうジョセフィーヌは目障りだった。

 そのため、大勢の貴族たちがジョセフィーヌの追放の後押しをしたのだろう。


 ――そんなひそひそ話をする彼らの足元から、何か大きな震動が伝わってきた。


「ブッヒィィィ! 何かジョセフィーヌって聞こえたわねぇ……アタシがこの世でもっとも嫌いな名前よ!」


 ジョセフィーヌの話を耳ざとく聞いたカロリーヌが、ドシンドシンと巨体を揺らしながらやってきた。

 庭園は揺れて葉が落ち、地面に深い足跡が付いている。

 招待された一般人たちは震え上がる。


「ひぃっ!? かっ、カロリーヌ…………様! お助けを!」


「そうね、良いことを思いついたわぁ。許してあげてもいいわよぉ?」


 どうやらカロリーヌにも、脂肪だけでなく人の心もあったようだとホッとした。


「あ、ありがとうござ――」


「今から食べる揚げバターの中がベーコンだったら助けてあげる。その代わり、チョコレートだったらこの場で今すぐ処刑ねぇ。……まぁ、今日はチョコレートの日なんだけどぉ」


「そ、そんな理不尽な!?」


「いただきま~~~……」


 腕の太さほどもあるバターを油で揚げるという狂気のおやつ――特大揚げバターを持ち上げて、一口でペロリと食べようとしていたカロリーヌ。

 だが、そこにローブを深く被った顔の見えない女性がやってきた。


「お待ちになって。天才芸術家であるケインさんの傑作が披露される場、血で汚しては勿体ないのですわ」


「あらぁ、たしかにそうねぇ……って、この声どこかで聞いたことが……」


 カロリーヌは何か違和感を覚えたが、その女性はすでに遠く離れたところに移動していた。

 ケインの横にいるので、助手か何かだろう。


「まぁいいわ、今日は気分もいいし」


 カロリーヌは巨大な揚げバターにかじりついた。

 ブッシャアアアアと溶けたバターとチョコが噴き出す。


「アタシの威光を輝かせる日なんですから。ブッフゥ!!」


 笑いなのか、ゲップなのかわからないカロリーヌのおぞましい声が響き渡った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【作者の書籍情報】
j0jdiq0hi0dkci8b0ekeecm4sga_101e_xc_1df_
『伝説の竜装騎士は田舎で普通に暮らしたい ~SSSランク依頼の下請け辞めます!~』カドカワBOOKS様書籍紹介ページ
エルムたちの海でのバカンスや、可愛いひなワイバーン、勇者の隠された過去など7万字くらい大幅加筆修正されています。
二巻、発売中です。
ガンガンONLINEで連載中のコミカライズは、単行本一巻が発売中です。
よろしくお願いします。

【こちらの連載もよろしくお願いします】
『猫かぶり魔王、聖女のフリをして世界を手中に収める ~いいえ、破滅フラグを回避しながらテイムでモフモフ王国を作りたいだけの転生ゲーマーです~』
聖女(魔王)に転生したゲーマーが、破滅フラグを回避するために仕方なく世界を手中に収めるという勘違い系物語です。
― 新着の感想 ―
[一言] カロリーヌ、もう人じゃない? オークなんじゃ?
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ