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ヨハンの場合
ハルトマン大佐に呼び出されたのは、寒さの残る2月の半ばであった。
北部方面第2旅団を預かるハルトマン大佐は、ヨハンから見れば雲の上の存在であり、呼び出される理由について心当たりがなかった。
少し緊張しながら執務室のドアを軽く叩く。
中から入室を許可する声が聞こえ、執務室に足を踏み入れる。
「失礼いたします。ヨハン曹長、呼応に応じ参上いたしました」
「よく来てくれた、とりあえず掛けてくれ。なに、君にとって悪い話ではないと思う」
「ハッ。失礼いたします」
ハルトマン大佐が席に着くのを待ってからヨハンも革のチェアーに腰掛けた。
革の冷たさに今日は冷えるな、と思っていたが、そんな事は頭の隅にも残らないほどの展開が待っていた。
「単刀直入に言おう。君は護国の盾の入団試験に興味はあるか」