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狩籠師  作者: 篠崎砂美
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岐路(きろ)

「さて、どちらにむかいましょうか」

 分かれ道にさしかかって、青陵は腕を組んで考えた。

 けれども、考えたところでどちらを選んでも同じように思える。いっそ、今きた道を戻った方こそ正解であるのかもしれない。

「早く、対であるという太刀を見つけたいのに」

 青陵は小さく溜め息をついた。

 正しい道は皆目分からず、進む先には分かれ道ばかりが現れる。いったい、どれが正解だというのだろう。

「それを見つけだしたときこそ、私が誰であるか分かると上人様はおっしゃったのに。いったい、どちらの道をいけば、より早く……」

 そう言ってしまってから、青陵は静かに(かぶり)を振った。

「いけない、いけない。こんな気持ちだからこそ、目的を果たせないのでしょう。急がば回れ。その方が、より善き結果を導くこともあるはずですから。ただ、手遅れにさえならなければ……」

 青陵は、あらためて新しい気持ちで分かれ道を見なおした。

 風が吹く。

 道端の草が、右に(なび)いた。

「では、そちらへ参りましょう」

 青陵は、右の道を進んでいった。


 人の通らぬ道を、風だけがさやさやと通り過ぎる。

 日も暮れかかったころ、やっと人影が現れた。

「分かれ道か。どちらにいく?」

 凜華は、相棒に訊ねた。

『俺に聞いて、そのとおりに進むつもりか?』

 幽明の太刀が、聞き返した。

「それもそうだ」

 楽しそうに凜華は笑う。

「そうだな。お前を立てて、倒れた方に進むか」

 冗談めかして、凜華は言った。

『本気で言ってるんじゃないだろうな』

 それは悪い冗談だと、幽明の太刀が言い返す。凜華なくしては自由に動けないからといって、ゆく先を占うための棒きれと同じ扱いをされるのは酷すぎる話だ。

「嫌なのか?」

『あたりまえだ!』

 面白そうに聞く凜華に、幽明の太刀が怒って言い返した。

「せっかく道を選ばせてやろうと思ったのに」

 いかにも不承不承といった感じで、凜華は道端に落ちている棒を探した。

 手頃な小枝を拾うと、そうれと宙高く放りあげる。

 風に(もてあそ)ばれながら、小枝が宙を舞った。

 ぽとりと、小枝が地面に落ちる。

「右か」

『あいも変わらず、適当な奴だ』

 凜華の大胆というか大雑把(おおざっぱ)というか、そんな性格に幽明の太刀は溜め息をついてみせた。

「左がいいのか?」

 だったらそう言えと、凜華は幽明の太刀を見た。

『いや、俺も適当が好きだ。始まりなんかはそんなもんで充分だ』

「結果がちゃんとでればな。まあ、適当すぎても、お前のような厄介事をかかえ込むことになったりするが」

『言っておけ』

 凜華の含みに、相棒がちょっと気を悪くする。

「さていこうか」

 凜華は気をとりなおすと、すたすたと歩きだした。

『おい、こちらは、左だぞ』

 分かれ道を左に曲がる凜華に、幽明の太刀が声をかけた。

「気が変わった」

 さも当然のように凜華は言った。

『やれやれ。それでいいやら悪いやら』

「なあに、じき分かるさ」

 凜華は楽しそうに笑ってみせた。


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