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俺の第二幕

ブックマークと評価ありがとうございます




強烈な鉄の匂いに目が覚めた


天井は無く見えたのは岩や苔だ

寝転がっているため周りを見ることは出来ないがここが洞窟だというのは予想ができた


暗いな


仕方ないと言えばそうだが


とても昔の事の様に感じてしまうが

元々至る所が光っていて

心と性根以外は全部LEDで輝いていた日本から来たのだ


もう思い出せないこともある

記憶が心が遠くに行ってしまったみたいだ




あの戦いからどれくらいが過ぎたのか分からない

身体を起こし腕をついて立ち上がろうとした時、バランスを崩し

倒れこんだ


まだハッキリしない視界で見たのは肘から先が無い自分の左腕だった


血は止まっていて大した痛みはないが違和感がある


何故なら動いたような気がするが無いのだから


痣だらけの身体で立ち上がり

洞窟の出口へ歩き出す


激痛がする足を一歩一歩進む

こんな身体で俺は戦ったのか


死ぬと思った

喰われると思った


でも生き延びた


その気持ちを込めて俺は外に出た





森だった


だけど森とは思えないくらい明るかった

目に見える範囲には魔物も動物も居ない


辺りは木や草花しかないが一本だけ小道があった


道に沿って歩いていると幻想的な湖があった


湖の上に何故か立っている人間が見えた

奇妙だったから少し近づいて見てみようと思い湖に近寄った


するとこちらに気づいたのか振り向いた

まだ遠すぎてよく見えないな


「おい」


「うあああ」


いきなり背後から聞こえた声に驚き慌てる

木の根に足を取られこけた


俺は急いで起き上がるとその人はいた

まるで自分より年下に見える


だが予測だがあの時助けたのは彼女だろう

意識を失い前に見た氷の魔法


「助けてくれてありがとう」


ここは素直に礼を言おう


「気にするな私のためだ」


そういうと俺をジロジロ見てきた

いろんな方向から見る


なんだろう

誰かと間違えた?


同じ黒髪でも勇者じゃないよ


少女は気が済んだのか俺の前に戻ってきた


「お前を見て分かった、私はお前を知らないし見たことも無い」


急に当たり前のことを言い出した


「きっと……」


何かを喋った

最後は小さくて聞こえなかったが


少女は切り替えて話を始めた


「契約を結べばその傷を治そう」


契約?

どんなやつだ


「何のために…、俺を助けた事と関係あるのか」


少女は頷いた

たしかに無償で助けるわけないよな


「お前は私のために戦ってもらう」


「俺に出来ることなるてたかが知れてる、他のやつの方がいいだろう」


勇者の方が強い

なんならチンピラの方が強い


「お前にしか出来ない」


お前にしか出来ない


その言葉は何か引っかかった


「俺にしか出来ない…」


信じきれなかった

こちらに来て何も出来なくて惨めな俺に何が出来るのか



「俺は何の力も持って無い」


だが少女言う


「そうだ、だから私は」


少しの間を置き


「私はお前に生きる術を、何かを守る力を、そして友と並び立てる強さを与える」


白髪の少女は言った


俺に力を与えると

何も無くて泣いたあの日

何も出来なくて、みんなから見放されたと思い悔やんだあの日


そして生きたいと願ったあの時


あの時の約束を

共に戦うと交わした約束を

力になりたいと感じたあの気持ちが嘘でないのなら


自然と答えは出ていた


「俺は力が欲しい」


萎れた声しか出なかったけど叫んだ


「もうあんな辛い思いしたく無い」


苦しかった 辛かった


溜まっていたものを吐くように叫んだ


「俺は一人になりたく無い」


勝手に涙が出ていた


「置いていかれたくない、見放されたくない」


ひとりぼっちの悲しさを知っている

救ってくれた恩がある


彼奴らにそんな思いさせたく無い

輝樹に火織に立花に


「誰も死なせない、俺が守りたい」


「俺は死にたくない、みんな守ってみんな救って」


「それで…だから」


「俺に力を下さい」


泣きながら地面に頭を擦りつけた

さぞみっともなかっただろう


無様だっただろう


でも


「分かった、私はお前の教師となり師匠のユノだ」


「名前は」


気持ちが晴れた気がした


「俺の名前は水成…」


「水成だ」



こうして俺の話は二幕を開けた


辛く険しいが突き進む覚悟があった










面白い!続きが気になる!という方は評価やブックマークを

つまらん読み難いと感じた方は詳しくご指摘頂けると幸いです

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