まず一人
そして迎えた食事会
これがターニングポイントでこの時から全てが終わる
今まで通り部屋に連れていかれ席に着く
しかし今回は違う、こいつが犯人だと知っている
こいつの言う事全てが嘘で今回の件の言質を取ったらすぐにでも叩き潰す
席に着くように促され座った
議題はもちろん仮面の男についてだ、表面上は俺が捕まえた奴についてだが本当は俺らの捕獲、もしくは材料に見合っているかを見定めるため
電車の被害は無い
そのように動いたからだ
奴が乗ってきた瞬間に叩き潰した
手加減はないからすぐに終わった
そして話は始まる
食事の用意とワインの瓶が目の前に置かれるが口をつける気は無い
前回食べなかったのは幸いだ、何が仕込まれているかわかったもんじゃない
しかしこっちの気なんて知らずに
「護衛を頼みたい」
またあの会話が始まった
前回と何ら変わりのない言葉の羅列が繰り返される
その言動の数々にイラついてくるのが自分でもわかる
「サンプル?だったか」
アルメヌの顔色が変わった
しかしすぐに平常を装うが鋭い眼光は誤魔化せていない
こいつは今すぐにでも俺を殺す気だとすぐにわかった
「クローン、合成人間による最強を目指す、あとは何だっけな?」
「何の話だ?」
誤魔化せると思うか
「随分と気色悪い事してくれたな」
ステーキ皿をアルメヌに向かってぶん投げる
周りの人達が間に入って当たりはしなかったが既にその顔は平常心を装っていない
今の事で完全にキレれたか
「護衛?違うな、研究サンプルって言えよ」
今すぐお前をぶん殴って俺はこのループから抜け出す
この中心はお前らの方だから完全に潰せばお終いだ
「知られて逃すほどお人好しではない」
その合図と共に天井が破壊され一人の男が降ってきた
それに向かってナイフを投げ突き刺そうとするが目視してから避けられた
合成人間か、スペックが高いのは面倒だな
降りてくる奴が着地する前に机を蹴り飛ばし敵を吹っ飛ばす
勢いよく宙を飛び壁と机の板挟みに会い壁にぶつかった
俺を敵が机を退かす前に、敵の視界が開く前に走り出した
両足で力強く踏み込み飛ぶ、机に手をかけて投げようとするのが見えるが遅い
確実に机をドロップキックし押し込んだ
そして壁を貫通し、ましてや隣の部屋までも吹き飛ばし街へとぶっ飛んでいった
埃が舞う部屋の中
アルメヌは何かを感じ取って剣を抜いた
それを構えると斬りかかってくる
速さはある
パワーもある
流石は合成人間だと素直に賞賛したいくらいだ
しかし負けるわけにはいかない、剣が届くよりも先に俺の拳が届く
一直線に拳を放とうとすると
アルメヌの手から剣がすっぽ抜けた
回転しながらこちらに飛んでくるのを避けて前に踏み込む
「相手をするのは私じゃない」
背後に飛んで行った剣の空気を切る音が止まった
まさかと思って後ろを振り返るとそこにはさっき吹っ飛ばした奴が剣を握っている
上から剣を振り下ろす、凱殻で纏った腕の一部に当て、衝撃で回転しながら裏拳をぶつけた。しかし敵は俺の打撃を受けながら腕を掴んだ
そして屋敷の三階の窓から飛び降りた
腕を掴まれそのまま道連れに落下、この高さから落ちるのは良いが身動きが取れないのは別だ、魔力放出で敵を屋敷の壁に押し付ける
落下のスピードで背中の強打と引きずられる痛みで敵は手を離す
その隙に顎先へ蹴り上げ反動で距離をとった
「野蛮だな、知能は低いのか」
瓦礫に埋もれていたがそれを飛ばして起き上がってくる
手には剣が握られそいつを向けてくる
俺は近くにあった街灯の下をネジ切り槍の代わりとする
「そんなんで大丈夫か!」
そう言って斬りかかってくるが
「違うな、こうやって使う」
先程テーブルに置いてあったワインの栓を抜き中身を口に含んだ
口いっぱいに入れたワインを霧状に吹き出し魔力灯を近づけると
ワインが燃え始めまるで火を吹いたかのようになった
これは目くらまし
両腕で防御の姿勢をとった敵を掴んでぶん投げる
地面を転がる奴に瓦礫を蹴り飛ばして追撃をする
先ほどの炎で目をやられ視力が回復するまでの少しの時間を無駄にしない
体勢を整えて起き上がった奴に蹴りを入れる
相手が飛ぶ前に肩を掴んで飛び込む
この時間に来るとわかっていた電車
線路に飛び込んだ俺は敵を掴んだまま窓ガラスを突き破って
電車内に引き摺り込む
ひらけた空間では人目につく
あらぬ疑いをかけられるのはよろしくない
そのためこの場所を選んだ
人はいない事を確認してから来ているし
この時間帯には誰乗っていないことはすでに知っている
敵を蹴り飛ばして反動で床を転がり起き上がる
すると奴も起き上がって
「固有魔術、四腕操糸」
固有魔術を発動させたのだ
少しずつ形が見えてきて現れたのは
腕だ
四本の腕が背中から生えているように見える
しかもその指先から糸が出ている
例えるなら蜘蛛だろう
こいつの固有魔術は具現化系統のものか
具現化、操作、干渉、大体のものはこんな感じた
具現化系は物質そのものを生み出すことができる
操作系は指定した物質を触れる事なく動かせる
干渉系は指定したエリア内である一つのことなら干渉できる
目の前の異形の腕と張られていく糸
この狭い空間なら一騎打ちでボコボコにできのと思ったんだがな
かえって不利になったが逃げ道がないのは同じ
掴みかかってくる腕を蹴り飛ばして起動を逸らし吊り革を掴んで回転蹴りを食らわせる、仰け反ったのと同時に糸で俺を掴む、俺は鉄パイプの手すりを引き抜き敵の腕に当てて壁にめり込ませる一つの腕を固定されその場から動けない敵を何度も踏みつける
隣の車両との間にある扉に糸を挟み奥に走り抜ける
その場から動けないのに引っ張られる力が加わると結果は腕が引きちぎられる
固定していた腕を捨てたようで扉を突き破ってこちらになだれ込んだ
蹴りを放つが受け止められる
受け止められたまま壁際まで走り
窓ガラスに押し付け勢いのまま窓ガラスから外へ吹っ飛ばすことに成功
宙に投げ出されこのまま落ちれば死ぬ、必死に電車から落ちまいと鉄パイプに巻きつけしがみつくために糸を飛ばす
発射された糸を掴み振り回す、たった一本の糸にしがみついている奴は四方に振り回される、上から下へ叩きつけると高速移動している最中に地面に擦り付けられる
腕を立てて地面との接触を阻止してこちらに飛んでくる
でもな
車両と車両を接続する連結部位を破壊する
向かってくる敵は大質量の車両と激突し顔面を強打
全身の骨を砕かれて車両の下敷きになり車輪によって引き裂かれた
辺りに散らばった血液を眺めながら今日の終わりを予感した




