進撃開始
一日目は動かない方がいい
そう結論づけて思考に専念した
そして動くなら二日目だ、そのための布石を今のうちに行っておく
いくつかわかったことがある
このループには必ずと言っていいほど同じことが起こる
俺はこれをイベントだと解釈した、二日目には必ず電車が襲われる
それは決まっているが俺が介入すると少年の捕獲が出来る
捕獲をしてすぐ後市長に呼ばれ護衛を頼まれるということだ
だが可笑しな点がいくつかある
奴は、あの市長は襲われる事を知っていたのではないのかと長いループの中で思うようになってきた、情報が回るのが早過ぎたのだ取り調べを受けた後すぐにこちらに向かうのは何かあると勘ぐられても仕方がない事だと思う
だからこいつが黒か白か見極めなければならない
そのために場を初めから作ることにした
市長から食事会に誘われる前にジークハルトとコンタクトを取った
内容は馬鹿にならない金を払って指名依頼とやらを受けさせた、ハンターギルド側も金を受け取っている以上信頼を守るために意地でも受けさせるのだ
体裁よく振る舞いジークハルトに依頼と称して仮面の男を探させた
理由はでっち上げだ馬鹿だったから簡単に信じて動いてくれた
ハンターギルド側に仮面の男について認知させる事にも意味がある
ジークハルト以外のハンターにも人探しという名目で依頼する、こっちは指名ではないしそれほど金はかかっていない
誰でもいいのだ
その次に俺は仮面の人物たちのつけられていた魔道具製作所に再び踏み入れた
気づかれないように細心の注意を払いながら中を漁る
前回と違い人が多い
物陰から見ていると一人の少年が連れてこられ寝台に寝かされた
そしてその少年の首に魔道具を埋め込んだ、当然悲鳴は上がるが麻酔のようなもので無理やり抑え着いた頃にはもう言葉は発していなかった
だがやはり奇妙だ
全員が同じ顔
さっきつけられた少年も同じ顔なのだ
連れてこられたと思われる部屋の中に潜入しようと思い
研究員を一人気絶させて身ぐるみを剥ぎ上から白衣に似たものを着る
扉を開き中に入るとそこには吊るされた無数の少年たちがいた
全員同じ顔
なぜ気づかなかった
あの時は魔道具の破壊をして
いや違うなぜきずかなかったのだ
こんな扉があったんだ漁っている最中に見つかってもおかしくはない
もしかすると俺が踏み入れた時にはもういなかったと見てもいいのか
そうでなければ気づくはずなのだ、しかしそんな事をすれば誰でも気づくだろうこんな奴らが一斉に押し寄せてくるんだ発狂しても仕方がない
全員家に閉じこもって
震えて窓の外を見ていることしかできない
おい待てよ
俺は最初のループのとき街中で殴り合ったはずだ
しかも人の店の中でも殴り合ったしぶん投げた記憶もある
だが誰一人として騒ぐこともなく、野次馬が現れることもなかった
なぜだろうか、誰も気づかなかったのではなく気づけなかった
いや違う
誰も端っからいなかったんだ
こいつらが動き出したのは俺が来る前
そうなるとループのときにこいつらが関わっている可能性は高い
そして当たり前のようにいたローブの男たちは主犯と見ることができる
今回は闇が深いな
「次のサンプルはどこだ?」
俺に声がかかった
潜入中だがバレるわけにはいかない
後ろから同僚だと思って声をかけてきている奴にバレないようにやり過ごす
どう受け答えるのがベストか
「すみません、怖くて」
咄嗟に出たのはそれだった
サンプルだ、名前からしてヤバそうだし
なんせこいつらのサンプルの事だろうから汚い物を見せられるに決まっている
「付いて来い」
呆れながら
指示をしてそれに付いていく
奥の部屋に入ると何やら冷たい風が吹き白い煙が出ているのが見える
「血の採取は三百だ間違えるなよ」
目を疑うような光景
人だ、生きた人間が囚われている
腕を繋がれて並んでいる光景
処刑場でもこんな事はしないと断言できる
「こいつだ間違えるなよ」
そこにいたのは
何回目かのループの時に俺が助けたハンター
結局殺人者扱いされてその場から逃げてしまったが
その時のそいつがなぜここにいるんだ、もしや俺が助けなかった場合はここに運ばれていたという事か
「お願い助けて」
今にも消えそうな声で言った
「うるせぇこのアバズレが!」
俺をここに連れてきた奴が蹴り飛ばした
鎖で繋がれているから飛びはしなかったが蹴られた箇所を抑えてうずくまる
「助けてジークハルト」
今なんて言った
この目の前でうずくまっている女は今なんて言った
ジークハルトと言ったのか、なんでこいつの知り合いがここにいる
『人違いだ、それに人を探しているから時間がない』
そうループの途中に言われたことがあった
そうかこいつがそれなのか
俺の依頼を受けたのは金のためではない
ハンターギルドに毎回行っていたのは金のためではなかったのだ
行方不明になった仲間を探すために通っていた、そして俺の依頼は探すための少ない情報の一種だった、仮面の男が俺の仲間を攫ったと書いたから快く受けたという事か
血を抜くための注射器を渡されそれで抜いていく
チューブの中を血液が通り試験管のような容器に入っていく
「なんでこいつを?」
素朴な疑問を装って聞いてみる
まだバレていないから答えてくれるといいんだが
「こいつはエサだ」
そう言って女の髪を引っ張って腫れ上がった顔を出した
「ジークハルトとか言う奴をおびき寄せるための罠だ」
誘き寄せるための罠
だがどうやって
こいつがいるから来いなんて言われてホイホイ来る奴は少ない
何かしらの言い訳がいる
例えば利害の一致を見せかけたりするとか
「そいつがいれば俺たちの研究、最強の兵士を作り上げることができる」
「それは凄い」
話を続けてもらう
「優れた奴らのいいとこ取りをして最強を作る、それにSランクハンターは最適だ」
「まあそれも天才エルクヒナがいなければ無理だけどな」
エルクヒナが何をしている
あいつもこれに参加しているとでも言うのか
「あいつのクローンよく働いてくれるお陰ですぐに事が運ぶ」
クローン
そんなものまで作っていたのか
それで最強のサラブレッドを量産する気たったのか
だから戦闘能力が高かったのか
「その内俺らも最強の仲間入りだ」
そいつは笑い始めた
何がおかしいのか、それとも嬉しいのか
まるで信じているのだ自分が最強になれると
エルクヒナのクローンが使われている
あいつが務めているのはこの街の研究所
まさか
その場所で採取されたのか
健康診断だと偽ればいつでもできる
それにアルメヌがジークハルトに護衛と称してそそのかし
仲間を攫った奴が相手だといえばのこのことやってくる
最初から仕組んでいた
俺があの野郎を助けた際にもう目をつけられていたのか
ようやく選ばれたの意味がわかった
これは最強の兵士を作る際のサンプルとして俺とジークハルトは選ばれた
そしてエルクヒナはその手足として使われている、それもクローンなんて物まで作られてだ、そんなものふざけている
全部奴の思いのまま
奴らは俺を殺しにきたのはループ直前の夜
その前にジークハルトは死んでいる
だったらこのループはなんだ
誰かが抵抗した結果だと俺は思っている
この街の中に俺と同じ間違っていると思っている奴が何処かにいる




