出会い
目が覚めた俺はベットから出て仕度をして宿を飛び出した
今日でこの街ともお別れだその前にエルクヒナと待ち合わせがある
場所は昨日のところでいいだろうと思いカバンをぶら下げて走った
通りは人でごった返していてとにかくうるさい
だが待ち合わせは昼だまだ少し時間があるから食事でも取るか
近くにあった屋台でいくつか買って食べた
ここの食事の方があの宿より美味い、見た目だけの残飯より美味いのだ
食事を終えてから集合場所へ向かった
■
昼時になっても来ることはなく時間が経ってからその場を離れた
何かの予定があったのかどうか知らないが迎えに行ってみればいいだろう
そう思い歩いているとエルクヒナがいるのを見かけた
「おーい、どうして来なかった」
近くに駆け寄り声をかけるがあまり反応がない
忘れていたとでもいうくらいの薄さだ
エルクヒナがは首を傾げ
「誰ですか?」
そんなことを口走った
何故そんなことを言うのか嘘をつく意味がわからず聞き返した
「いや、昨日約束しただろ」
確かに言ったはずなのだ
約束をしたのでは無いのか忘れていたのか
必ず来ると約束したはずじゃ無いのか
「私は昨日一歩も外へ出てないですよ」
「何を言っている?冗談だろ」
冗談にしか聞こえない
悪い夢でも見ているみたいだ
少しめまいがしてふらつく、きっと疲れている
脳みそが追いつかないだって昨日約束して宿に帰って寝てそれから……
「これで失礼します」
エルクヒナは考えている俺に一言いってその場を離れた
離れていく彼女に後ろから声をかけて引き留めようとするが止まらずに行ってしまう
「待ってくれ!どういう事だ」
叫んでも止まらずに赤の他人だと言いたげな目を向ける
「何で、俺はまた裏切られたのか」
嘘だろ
俺は知っている
何でこんなことに
頭の中に仮面が浮かんだ
俺が捕獲した少年の付けていた物に酷似している
それに違和感を感じて仮面の男が繋がれてている場所へと向かった
■
「仮面の男について聞きたい」
単刀直入に言った
今この状況を作り上げたものが奴らならあのガキが死んでも構わん
今欲しいのは状況を打破できるほどの力だ
憲兵に押しよって問い詰めるが
「何故それを!」
しらばっくれる気か
「俺が捕獲しただろ?この前」
机を叩いて言うが全く反応がない
彼らの中では周知のはずだ
「何を言ってる、正体不明の殺人鬼を捕まえられていれば俺今頃こんなとこにいない」
怒りのこもった顔で俺を突き飛ばした
来るとわかっていなかったため壁にぶつかり座り込む
「帰れ!」
大きな声で怒鳴った
すると数人の憲兵が俺の腕を掴んで外まで連れ出し放り出した
人通りの多い場所で投げ捨てられ倒れこむ
街ゆく人たちが見下ろしている
ヒソヒソと何かを話しているのが聞こえる陰口を言っているのが聞こえる
何でだよ、誰も俺のこと覚えていないくせしやがって
お前らは俺の事何にも知らないはずなのに何でそんなこと言えるんだ、何でどうして俺は何だったんだ今までの事は全てなんだったんだよ
「見てよジークハルト、あそこの人なら暇そうだし何か知ってるんじゃない」
「何だあれゴロツキか?」
この声に聞き覚えがあった
それにその名前
「ジークハルト!」
俺は跳ね起きてジークハルトの目の前まで走った
奴の肩を掴んで揺さぶった
「お前昨日何があった、全部吐け」
「誰だお前、何しやがる」
俺の手を払いのけた
腕が動いている、昨日俺が
「何ともないのか?あんだけ殴ったんだぞ」
「それに口から槍が……」
何かが流れ込んでくる
夜だ月は出ていない暗いところどこかの通り
こいつは死んだはずだ、俺が殺した
「人違いだ、それに人を探しているから時間がない」
俺を突き飛ばすように押した
「さっさと退け」
頭痛が激しくなってきた
痛みとともに何かが流れ込んでくる
昨日夜
俺は腹を貫かれた
ジークハルトは死んだんじゃなかったのか
あの仮面は何だ
あそこにいた奴らは何だ俺はあの時致命傷を負った
俺の攻撃が通用しなかった奴がいた
それに固有魔術師がいたんだ魔法の無効化とか言っていた
思い出した昨日俺は
「いくら祭りで酔っ払っていてもそれはないだろう」
は?
「何だ祭りってどういう事だ」
言っていることが理解できない
頭痛で思考がうまく回らないが意味がわからない
「今日は年に一度の祭りだぞ馬鹿か?」
年に一度の祭り
確かにそうだがそれはもう終わった話だ
「祭りは一週間前に終わったはずだ」
「何言ってんだ?今日だからこんなに人がいるし俺も来たんだ」
嘘だ
祭りは終わった
その次の日に電車が襲われて仮面の男が現れてその後にこいつに出会った
電車は運行停止になってそれから
聞こえてくる車輪の音
ガタンゴトンと聞こえてくるあの聞き覚えのある音
まさかそんなはずは
俺は音のした駅へ走った
「何だアイツ」
■
駅は封鎖されたはずだったそれなのに動いている、通常運転しているのだ
壊れた痕跡もないし何かがあったようには見えない
何が起こっている
俺の見ていたものは幻だったのか
全部夢だったのか
それとも時間が巻き戻っているとでも言うのか
俺だけが取り残されたのか、時間に世界の流れに
考えても考えてもわからない何故こんな事になっているのかわからない
頭が割れるくらい考えたが何もわからない
ただ今はこの場を離れた
幸い荷物は持ったまま出ているから今から別の街に行けばいい
こんな出来事なんて忘れればいいただの夢だったんだ




