食事会
「状況はわかった、礼を言おう」
憲兵に事情聴取を受けるために専用の部屋に入り質問される事は全て答えた
仮面の男が現れて乗客を殺したこと、そして彼がどっからか乗ってきたこと
仮面の人物は今までもいたるところに現れて殺人を犯してきたらしいが死体が見つからずその上すぐに姿を消してしまうせいで特定できなかったと聞いた
今回の件で一人死にかけているが捕獲することができた
「情報は吐かせたか」
「いえ、全く」
今のところは何の情報も得られていないか、これからを見てでも遅くはない
そう思って憲兵についていき捕獲された仮面の男の場まで連れて行ってもらう
情報は無いが吐かせる手伝いくらいはできるかと思って行ってみると
部屋の中で鎖を四肢に繋がれて横たわっている少年
仮面はついたままだが割れているから取れないようになっているのか
しかし全く動かない死んでいるのか
「ダメージが大きすぎて動けないようです」
憲兵からそう言われた
俺が顔面を殴ったことがここになって響いているのか
腹くらいにしておけばよかったかもな
「すみませんね、なんか」
「いえ、それよりも」
謝罪をするが頭を振って断る
そして横たわる少年を指差した、その指の方向へ視線を向けると
「首に何かの魔道具が埋め込まれているようです」
首に太い棒のようなものが埋め込まれていたのだ
これのせいでまともに話すことは無理そうだなと感じ憲兵に聞いてみると
案の定思った通りの答えが返ってきた
「これを抜くと死ぬだろうと我々は見ています」
その名の通りに口封じか
この魔道具のおかげで外部に漏らすことはないし引っこ抜けば死ぬ
死人に口なしか嫌なもんだな
顔に張り付いている仮面を取り去ると顔があらわになる
半分ほど潰れてはいるがまだ幼い、俺より身長は低いしきっと子供だ
好きで戦っているのならこんな道具を埋め込むことはしない
ということは
「組織の動き」
「でしょうね」
自分からこれを埋め込むことは不可能
となれば外部の人間の手によって埋め込まれ生物兵器とされたと考えるのが
一番筋が通るだろう
「そしてこれは」
そう言って憲兵は少年の袖をめくった
そこには番号が刻まれていたのだ
「二十八か、こんなものが後何体もいるってのか」
二十八人もの人間がこんな風に殺戮マシーンと化しているとでも言うのかこの街は、こんな奴らを街に入れる事はほぼ不可能に近い、という事はこの街で製造されたと考える方が容易いのだ
気味の悪い話だがこいつらがどこかで作られている
この街はどこかおかしい、もしかすると俺の探し物もこの街の事に関わっている可能性だってあるすでに誰かと手に渡りそのものが悪用してこいつらを
「市長がお呼びです」
思考に集中していたから気づかなかった
後ろから聞こえた声に驚きながらもまたかと思いながら振り返ると
そこには前にも見たような執事風の男が立っていた
「この状況でか?」
「この状況だからこそです」
何も動じずに答えた
そのそぶりから見ると彼らは何かを知っているのではないか
この犯人が誰かこれを差し向けた者が誰なのか目星がついているのではないか
「何を知っている?」
「その話のためにここに来ました」
関連性はある
今回の事件に関わっている何かのために俺は呼ばれたのか
「わかった行こう」
執事風の男についていき二度目となる屋敷に入ることになった
■
無駄に大きく豪勢に作られた屋敷の門をくぐり中に入る
そして案内される部屋に進み扉を開いて中に入った
すると中には二人の男がいた
大きな長机に座っている男
「昨日はどうもアルメヌ市長様」
この男がこの街の市長
市長だがこの国での立場は他国の貴族のようなもの
それもこれほど大きな都市だ、かなり偉いと見ていい
そして始めてみる男が一人
金ピカの鎧を着て顔はかなりのイケメンだ
たいそうモテるのだろうな
「こいつは」
「彼はジークハルト、Sランクハンターだ」
ハンターの最上位
かなり強い分類に入るとされる人物だ
素人が見ただけでわかるほどの高い武器に性能のいい防具
相当金があり贅沢してんのな俺と違って
「座ってくれ」
椅子を引いて座るとメイドの人たちが料理を運んでくる
分厚いステーキが運ばれてきて目の前に置かれた、下にひいてある鉄板はまだ音を立てている
そして湯気のたったスープが置かれそれを眺めていたら
「君たちのどちらかに頼みたいことがあるんだ」
本題に入る事になった
「最近謎の殺人集団が現れて困っているのでな護衛をつけたいが適任がいない、そこでどちらかに私の護衛を務めてもらいたいと、金ははずむ」
腕を組んで俺たちを見つめている
「少しいいですか?」
「何だ」
こいつの言っていることはおかしい
「何故集団なんですか?」
「憲兵の報告でそう聞いたからだな」
当たり前のように嘘を吐いた
「それは違う、憲兵は今回で集団だと認識した。それも今日今さっき」
「彼らが職務怠慢で馬鹿なら仕方ないでしょう」
「そいつらを処罰しよう、それでいいか?」
「十人余りの人間が全員知らなかった、となればアンタ何で隠している」
憲兵はナンバーを見て複数の存在を認識した
と言うことは彼らは知らなかったのではないかあの顔は嘘ではない
嘘はこいつらだ
「こっちは自分と知人が狙われました、何を知っているんですか」
長いテーブルの向こう側に座るアルメヌに向かって問う
「守って欲しいが情報は一切出さない」
「そんな虫のいい話があるとでも思っているのか」
こいつの言い分はおかしすぎる
言っていることがめちゃくちゃだ
「たかが子供の出来事で頭に血が上りすぎだろ」
ジークハルトは小馬鹿にして言ってきた
ナイフをこちらに向けて円を描いた
「ガキに遅れをとって死にかけた、だから何だ?俺なら簡単に仕留められた」
「あっという間に殺せたさ」
馬鹿を言うな、殺して何になる
こちとら情報と今後の事を考えての行動だ
仕留めるだけならどうとでもなる、脳を潰せばいい首をへし折ればいいそれで終わりだ、こんなんで終わっていい話ではないから聞いてんだ残党だっている
全員殺してもまだ出てくるこいつをなんとかしないといけないから聞いてんだボケナス
頭湧いてんのか
「おいボケナス、話を最後まで聞け」
顔を真っ赤にさせて怒っている
そんなにプライドが大事か、女抱くのにプライドがいるのか
お前はチンパンジーと大差ないブスを抱く余裕があるなら言葉を知れ
「ここで出せる情報を提示してもらえないと護衛もできません」
アルメヌは何も答えない
ただ黙って俺を見つめている
「あくまで黙秘を貫くとそう言うのですか?」
「そうだ下手なことは知るな危険だぞ」
危険か、すでに片足一本浸かっている
もうどうしようもないだろ
「貴様ァ」
逆上したジークハルトがナイフを俺に向かって投げてきた
飛んでくるナイフをフォークの間に入れ天井に投げて突き刺す
「言いたい放題言いやがって」
「怒るだけの知能があるなら話を聞け、それがないなら席に着け」
「殺してやる!」
話を聞かずに剣を抜き斬りかかってくるジークハルトに向かってステーキ皿をを叩きつける、鉄板で熱しられた皿を顔面に食らい叫ぶ
見えていないのに剣を振り回す
性能のいい剣のおかげで斬れるようだがこんなのがSランクハンターか馬鹿だろ
戦場の兵士の方がよっぽど凄いぞ
ようやく叫ぶのもやめてしっかりと剣を握る
床を蹴って上から斬りかかってくるがテーブルクロスを引っ張ってジークハルトの視界を遮断し慌てて攻撃を中断した奴の顔面に蹴りを入れる
身体強化魔法のおかげで気絶はしなかったようだがいいダメージ入ったな
「クソ!卑怯な真似しやがって」
「もう喋るな醜いぞお前」
怒り任せに斬りかかる奴に打撃を叩き込む
背後によろけたジークハルトの腹部から踏みつける
「正々堂々勝負しろ!インチキ野郎」
「何だっけ?よく聞こえなかったな?」
片手を耳に添えて耳を踏んでいるジークハルトに向ける
彼は悔しさの滲み出る表情で発狂し始めた
「貴様タダで済むと思うなよ」
負けていることがわからないタンカスは未だにほざいている
今から逆転のチャンスがあるとでも思うのか詠唱すればその前に肺を潰し喉を掻っ切る、剣は遥か彼方だ確実に仕留めれるのは俺の方だ
「ワンワンワン、負け犬語は良く分からないな人語で話してくれ」
「貴様ァ」
踏む力を強くして鎧ごと肋骨を砕く
痛みのあまり叫び始めもがき苦しんでいるジークハルトを部屋の隅まで蹴り飛ばす、砕かれた鎧から転げ落ち無様に気絶した
それを見届けてからアルメヌへ向けて言い放つ
「俺は帰るぞ、話にならん」
「お前の戦闘能力はよくわかった」
何を思ったのか口元が緩んでいる
この戦いを楽しんで見ていたのか、それとも何か隠しているのか
今からジークハルトが起き上がってくる事はないそういう風にぶちのめした
「わかったのならいいだろう、護衛の件はそこの青二才にでも頼め」
扉を蹴りやぶって出て行く
最悪の日だったこれほどまでに糞みたいな気分は初めてだ
ただ黙って見過ごすのは駄目だと思う、俺の事に関わるしなんせ勇者の武具が関わっている可能性のある物を黙って見ているなんてできない
勝手に潰して目的を達成する




