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祭り


昨日の夜に見た目は華美だが全く味のしない料理を食わされた

道中に通った料理店や保存食の方が味したぞと思ったが仕方なく食べた


最初の頃は全く口をつけず動物などに毒味させてから食べていたが

毎回食事の度に警戒しては身がもたないので個人的に出されたもの以外はすんなり食べる事にした、ここの料理も同じものをたくさんの人に配っているから大丈夫そうだったし実際のところ後々気分を害したわけではないから良かった


夜中にずっと考えた結果、宿代がどうなるかわからないため何かしらのものを採取し

ハンターギルドに売りに行くことにしてベットに入り夜を過ごした



日が昇り始め辺りが明るくなってきてから一通りの準備をして外に出る

すると街の様子は変わっていて祭りの準備が始まっていた

大通りに並ぶ出店や屋台の数々が少しづつ出来上がっていく

これなら昼くらいには完成しているだろうなと思いながら通りを歩いて外壁の門をくぐって森の方へ走り出した


これから祭りだからか馬車で街に入る人たちが多かった

そんな彼らを横目で見ながら森に入り高く売れそうな物を片っ端から取っていく

途中で見かけた魔物を殺して素材を集めカバンに詰め込んで奥に進む


奥に進んでいると一人の少女が切り株に腰掛けて何やら見つめていた

金髪の長い髪を垂れ下がらせペンとスケッチブックを持っていた

こんな山奥で絵を描くなんておかしいと思い


「何してんの?」


そう聞いた

すると少女は当たり前のように言った


「見てわかりませんか?スケッチをしているんです」


そう言って持っていたスケッチブックを俺に見せた

描かれていたのは薬草だ、それも高位の回復薬に使われる


「それはアレだ、確か珍しいから高値で取引されるやつだろ」


見たことはある、昔書庫に出入りしている時に見たことがある

量が少なく繁殖力もあまりなく貴重だと書いてあった


「よく知ってますね、これは薬になるんですよ」


知っている


「こっちは寄生するタイプの植物です」


そして次のページをめくって紹介する

それは木の間から生えている植物、寄生し養分を吸収するタイプのものだ

また次のページをめくって次々と新しいものを見せる


それをいくつか眺めた後


「なんでこんなとこでやってんだ?」


素朴な疑問

当たり前で前から思っていたことを口に出した


「私は学園の学生代表として派遣されたの研究員です」


そう言ってあたりを見回し森の木々や草花を見つめて


「ここは自然があまりないので今日のような日はここに来るんです」


「何のために」


「趣味なんですよスケッチするの」


確かにあれは上手かったから相当時間かけている

好きこそ物の上手なれと言う事か


「ふーん」


脳内完結し頷いていると


「あなたこそ何でここに?」


聞かれて当然か


「それはな、高い宿に見栄はって泊まったら金が少なくて何とか稼がないといけないんだ」


「だから金になるもの探しにここに来た」


隠しても仕方ない事だしそれに言っても害はない

それを聞いて呆れたような目をして


「見たところ旅人ですが」


「そうだ」


「ではハンターギルドの位置とかわかりますか?」


痛いとこつくな


「知らない……」


沈黙が流れる

少しして少女はなにかを思いつき言った


「この街を案内する代わりに旅の事話してください」


交換条件か知識と知識の等価交換

割りにあっているかどうかは


「大したことしてないけどな」


「私の知らない世界が見てみたかっただけなので」


「そうか、」


世界か

あまりいいものではないが

街から街への移動くらいなら話してもいいかもな


「では私の名前はエルクヒナ・ニールント」


そう言って手を伸ばしてきたから握手を交わす


「俺は水成だよろしく」



共に祭りを回り

次第に日も暮れて片付けを始めている屋台もちらほら見えてきた

俺たちは街を一望できる時計塔の上に立っている


魔道具の光がつき始め夜景が見える

するとエルクヒナが地面に座った


「どうかしたか?」


「いえ、こんなに遊んだのは初めてだったので」


エルクヒナは疲れたと言って壁にもたれかかった


「私あんまり遊んだ事ないんです」


声が聞こえるがそちらを向かなかった

聞いて欲しかったのか独り言なのか判別付かず返していいのか戸惑った


「親の期待とか学校の威厳とかのせいでいつも疲れるんです」


それは俺にはわからない

ただ近いものならわかってやれる気がする


「今日の疲れも一緒か」


「違います、今日は違うと言い切れます」


「だって楽しかったから」


「それならいいんじゃないかな、たまには息抜きしろよ」


あんまり詰めすぎるのは良くない

俺が身を持って知っている


「あなたは世界が綺麗だと思いますか」


なんの前ぶりもなく聞いてきた


「どうだか?人によって違うんじゃないか」


「私は世界が見たいんです、自分の目でなにかを感じたい」


強い意志と何かの迷いが同時に感じられる

迷っているのだろうこれでいいのかと自分の使命とやらを植え付けられた人間が

自由意志で行動するのは難しい


親の期待

一番の障害を抱えた彼女がどう歩いていくのか

いつか向き合わないといけない時が来る、それは取り返しの付かなくなる前に


「でも、これでいいのかな」


「後で後悔しても遅いからな」


俺は後悔した

だから他の人にはそうなってほしくない


「さよならだ、また会うことはあるだろうが今日はこの辺で」


「うん」





宿に戻ってカバンを漁る


「確かあったはずなんだけどな」


昨日はなんやかんやで忘れていたがやっておかねばならないことがある


ようやく出てきた

この報告書でもあり俺の日記のようなものだ

勇者の武具の回収にあたって受け取った本だ


毎日書けと言われていたが忘れていた

仕方ないから昨日の分も一緒に書いておこう









そしてこの日が全ての分岐点だとは思ってもいなかった

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