目標
王城にある訓練場
そこで輝樹は闇雲に剣を振っていた
剣を振るのを止めて汗を拭う
辺りは暗くなっており輝樹が剣を振り始めてからかなりの時間が経っていた
しかし輝樹はまた剣を握り振り始める、そしてまた時間が過ぎてゆく
「いつまでやっている気だ」
輝樹は剣を止めて声の方へ振り向く
そこにいたのはハーネイルだった
片手にカンテラを持っていることから通り過ぎる予定でここによる気は無かったと見える
通路からずれ柱にもたれかかり輝樹に声をかける
「わかっている、力不足だと思っているのだろ」
それは輝樹の内心をよく表現したものだった
お前は焦っていると輝樹の中に浸透させる
その言葉に輝樹は俯く
図星で何も言えなかったのだ
「今回の戦争でかなりギリギリの戦いを強いられていた」
確かにそうだろう
他の人に聞いても皆がそう言う。そんな戦いだった
もしも何かが違えば結果はまた変わっていただろうと感じさせる
「もし魔族側の動きが速くて戦線を突破されていれば勝機はなかった」
輝樹自身も戦線にいたからその激しさはよく知っている
一歩たりとも引くことのできない状況下で必死に皆が踏ん張った
「たった一つたりとも突破させなかったのは軍の意地なんだろうね」
「そうだな」
ハーネイルは小さくうなずいた
「一番危なかった戦場、確か特殊な魔術を使う魔族のいた所はファーゴ小隊とネルト中隊達が止めて団長がトドメを刺したと聞いています」
輝樹の知らぬところ、情報がせき止められているためほとんどの人物は知らない
しかしハーネイルはその場に居合わせているし応援を要請したティエラからの話を聞いている
ファーゴとネルトは撤退した
それが事実だが言うことは許されない、この場で必要なのは無用な真実ではなく
これから誰がどうするか、そうハーネイルは心の奥に押し殺す
「……あいつらも頑張ったんだろう」
「彼らの尽力がなければ勝てなかったも同然でしょう」
輝樹は悔しそうに言った
「僕は何もできなかった」
結果だけ見れば何もしていないと言われても仕方がないが勇者がいるだけで士気は上がるし
一般の兵よりかは戦績がある、ただ表立った働きがないだけだ
「僕は今回仲間を危険に晒した」
「本人がやりたくてやったんだ気にするな」
自分を責めるように言う輝樹を抑える
こうでもしなければ人は止まらない、ハーネイルがよく知っていることだ
「あの場で水成を守れなかった僕のせいで彼は傷ついた」
「これは僕の責任だ、もっと強くなってみんなを守らないといけない」
それが輝樹の剣を振る理由
「そうか、でもこれ以上の強化は望めない」
しかし現実は簡単ではない
剣を振った分だけ強くなるのは当たり前だが時間が足りない
今からどれだけ振っても半生を剣に費やした者と一年もしない者ではどれだけ才能があっても追いつくことは不可能だ
それに
「最高の武器に最高の防具、その上勇者の力まであるお前は短期間で多くの力を身につけた」
すでに輝樹には環境が整えられている
丸腰同然で戦っていたものが装備を整えたら強くなることはある
しかしこれ以上の物がないためそれは無理というものだ
「しかしこれ以上劇的な強化は望めない」
現実を輝樹に叩きつけるがそれで諦めるほど彼は弱くはないことをハーネイルはよく知っている。
「このままでいるなんてできない」
ハーネイルは予想通りの答えに口元が釣り上がる
「だろうな、方法は無いに等しいがかけてみる価値はある」
「十帝になれ、輝樹」
飛び出てきたのはあまりにも大きすぎる事だ
十帝、それは世界に選ばれた十人の人物の事を指し選ばれたものは絶大な力を得ることができる
「世界の力は絶大だ、俺が身をもって知っている」
「どうすればなれますか」
力を求める輝樹は前のめりになって聞いた
「十帝は世界の中で最強の十人を選び力を与えるものだ」
ハーネイルは淡々と説明をこなす
それを輝樹は一字一句違わないよう記憶する
「ジャンルは違うしただ単純に戦闘力だけの俺もいれば魔法のやつもいる」
「頭の出来がいいやつもいたし特に縛りはない」
「その分野で最強になれば力が手に入る」
「ただ補欠のようなものもあるんだ、元々誰かがやるやつってのはジャンルが少ないため被るやつもいる」
この世界に何人の戦士がいることが
その中で一二を争うものたちの誰かを倒せば
「そこで選ばれた奴を倒し空席になった十帝の座にお前が座れ」
「そうすれば新しい力が手に入る」
ハーネイルは手を握る動作を見せつける
「新しい十帝の席に収まるんだ、お前がその手で」
「ですがここから動けば何を言われるか分かったものではないはずです」
輝樹の疑問はもっともだ
ここで冷静になれるだけの胆力があればできるだろうとハーネイルは密かに思う
「期限は知らん、だが国の上層部の奴らが他国に応援を要請するらしいからそれに便乗して
殺しに行けばいいそれも山奥に引きこもっているような死んでもいい奴を」
「強くなるそれしか方法は無い」
輝樹は十帝になる事を決め使者として他国に渡った




