誰も知らない開幕
本編開始です!
無双するまで少し間があるのでそこまで付き合ってもらえれば幸いです
深夜、誰もが寝静まった時
昼間とは打って変わって静かで音も光もない道だ
店は全て閉まっており家の灯りは一つも付いていなかった
普段なら何人か、特に商人の類がいない事もないがこの日は人は一人もいなかった
誰もいない静まり返った王都の大通りを歩いている男が居た
王都の人とは思えない程質素な服装だった
ここに住んでいる人は少なからず金がある、服を買う金くらいは持っている
しかし男の格好は服というより、まるで布切れを纏った様に見えるのだ
擦り切れた布をいくつか巻いた格好で歩いている
長い髪は一切の手入れがされておらず、伸びたままで顔も識別できない
その不気味な人物はたった一つだけ物を持っていた
片手で握りしめている、男は何かを手にしていたのだ
とても綺麗で新品だろうと思わせる
ボロボロの布と相まってより一層凄みがあった
その四角い物体には文字が書かれていた
■
俺は今馬車に揺られている
何も考えず
ただ遠くの景色を眺めた
異世界だとしても景色自体に大差はない
不思議な植物もいないし、ドラゴンが飛んでいるわけでもないのだから当然か
ただ一面、変わらぬ森の映像だけが眼に映る
空を山をたまに見かける商業人達を無心で見つめた
二日前
俺は国の重鎮達に呼ばれた
保護という名の隔離
何をしでかすかわからず手もつけられない俺をどうにかしたかった為
手の届く範囲に収めようということだ、それも勇者輝樹との交渉材料に
行き先は魔族の進行からは最も遠い場所で一応魔族に関してだけは安心していいとのことだ
国の機関の一つで生活自体は保証してくれて不自由はないらしい
その真意はわからないしそんなうまい話があるとは思えない
自分で働くことも視野に入れておくか、履歴書とかどうするのか誰が雇ってくれるのか
確かハンターという職業があると聞いている、誰でもなれると聞いた
魔物を狩って素材を売却して生計を立てる職業だ
まんまゲームとかのハンターだ
だけど俺もあのまま城に居ても何も出来なかっただろう
せいぜい穀潰しを極めて疎まれるくらいだ
だからその話を受けることにした
最悪どうにかして生きるしかない
その後
荷物を整えて出発した
ただ別れの挨拶が出来なかったのが残念に思うが
していたら引きとめられて結局居座ってしまうのが関の山
これでいいんだ
だからといって二度と関わらないわけではない
直接何かするわけでなくとも間接的に後方支援という手もある
彼らに死んでほしくないのは友人だからかな
それに国の上層部っていうだけ彼らも馬鹿ではない
何かの拍子に俺の状況が輝樹に届いてしまった時どうなるかわかっている筈だ
少なくとも監禁して身動きが取れなくなるなどということはない
精々見張りをつけられて行動の制限くらいだと思う
それならやりようはある
俺は戦う力がないが戦いはただ殴り合うだけじゃないのだ
戦争には沢山の物資がないといけない
兵糧戦とかいう言葉があるくらいだ
食糧だって武器だっている
ゲームじゃないから急に現れたり一瞬で届いたりはしない
誰かが作って
運んでいる
俺はそれをやろうと思った
できるとは微塵も思っていないがやろうとすることが悪いことではないはずだ
勇者のサポート
いわゆる
縁の下の力持ち
影の立役者ってやつだ
着いたら頑張んないといけないな
自分に無いものを求めても仕方ないから
あるもので何とかする
着くまでの何日間かは休んでおこうか
■
王城の訓練場で輝樹が剣を振っている時何者かが屋根の上から眺めていた
「まあまあだな」
そこに高速で近づく者がいた
剣を持った騎士風の男は屋根の上にいる不審者に
一閃
騎士の間合いに入った男に刃が迫る
神速の抜刀、一撃で首をはねたかと思えたが
「危ないな、かつての恩人に向けるものじゃないだろ」
男は手に持っていた本で受け止めた
「離れてくれ暑苦しい」
本の中から無数の紙が落ちる
その紙一つ一つが形を作り騎士に向かっている
尖った針のような形になり至近距離で放たれた
騎士は咄嗟に後ろに飛びその場を離れる
先程騎士がいた場所へ放たれた針は突き刺さる
騎士は剣を男に見据えて構える、腰を落として水平に剣を向ける
喉へ向かって直線に突きの構えをとった
限界まで溜めた踏み込み
音を置き去りにした速度で殺しにかかる
しかし
「なに、殴り合いに来たわけじゃない」
騎士の背後から声が聞こえた
騎士は無理やり身体を捻り反撃に出ようとするが
空間が爆ぜた
背後からの、完全に対応できないところからだったが騎士は無理やり防御する
「凄まじいな」
横薙ぎに振るわれる剣を男は避ける
それを読んででいたかのように斬撃が向かう
それを素手で叩き落とす
「さすがだな、そこまで読んで放つとはどれだけ先を見ている」
男は両手を広げておどけた様子を取る
「何しに来た」
「別に戦いに来たわけじゃない」
「ちょと悪くなったとだけ伝えに来た、さよなら」
不穏な言葉を残して去っていった
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つまらん、読み難いと感じた方は詳しく指摘頂けると幸いです




