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裏方屋台




戦況については全くといっていいほど変わらない

それは人間も魔族も大差はなかった

そのことに魔族の司令塔であるロンドは頭を抱えた


戦線は全く変わらず同じ位置を繰り返し

旅団のアラコクスは死亡との情報が入ったからだ


この戦だけで全勢力を投入するわけではない

しかしそれは双方とも同じ事が言える

今回の戦で上位に位置するアラコクスの死亡、一つの支部の飛竜と人員の全滅

飛行船の爆破、本来ならあり得ない事が起きすぎていた


自分たちの方が有利になるはずの物がことごとく破壊されていく


それはなにかが関与しているとしか思えないほどの出来事だ


「ようやく会えたな白髪の女」


背後から聞こえる声に驚いた


魔族の司令塔それも作戦本部にいる彼女が背後を取られたことにここにいる誰もが硬直した

ただでさえ乱戦だここまでくるのはベテランの暗殺者だとしても難しい

その上内部を徘徊している兵達に見つからない事などあり得ないことだ


なのにこの男、長い髪を後ろで縛り前髪を垂れ下がらせ顔を隠し、黒いローブを巻いている

誰にも感知されなかったのか、探知機や結界をすり抜ける術があったのか

なんとも規格外の人物、それがここにいる誰もが思ったことだった


しかし司令塔である彼女だけは違った

彼女はそんな噂を聞いたことがあったからだ


探知機に引っかからず結界もすり抜ける。気づいた頃にはもう死んでいる

誰の目にも触れずに暗殺を可能とする男を、既に何人もの兵が犠牲になっており上層部では危険視されていたが姿が分からず唯一出会ったという子供からの話では


「そうか、あなたがハルミ」


彼女が読んだ報告書にはそう記されていた

しかし現れたという事は自分も殺されるのではないかと寒気がよだつのを隠し

いつでも離脱できるように魔法の発動準備をしていた


しかしハルミから発せられた言葉は彼女の想像とは全く違った


「提案があってね」


なにを言われているのか理解が完了するまで時間がかかった

この場でなにを提案する事があろうか、だからといって話を終わらせるならば殺される

そう全神経が悟ったのだ


「聞くだけなら」


何とか絞り出した声で言う


「これ以上の戦いは無意味だ、兵を退け」


あり得ないことを言い始めた


「あなたに無意味でもこっちには命を賭ける意味がある」


「それはどこぞのの神が言ったのか」


恐縮して手を出せなかった兵達がその言葉に反応して剣を抜いた

彼らにとって触れてはいけない何かにハルミは触れた

それは自業自得というものだ、手練れの兵が数人がかりで斬りかかる


無数の斬撃をその身に浴びタダでは済まないはずだが


「な、何…」


斬撃の中から無傷のハルミから現れたのだ

それも全く動いておらず防御の意思すら感じない


ハルミは何ししていないのだ、ただ斬られたはずだったが兵士の剣は折れてしまっていた

それはまるで巨大な鉱石に叩きつけたように

それほどの硬さは人体の硬度では無い、どれだけ鍛えようともあり得ないのだから


「凱殻、これができるのはこの世で私一人だけだ、これから先もずっと無いだろう」


彼らにとって聞いた事のない言葉が現れる


「そうだな君達が産まれていない頃の…ちょと違うな、まだ獣人とやらがいた頃の遺産さ」


「奴らは絶滅したそれも文献が残らぬ程前に」


獣人などという人種はいない

しかしそれがハルミのいう通りならと彼女な思考を巡らせる

その中でたった一つだけ辻褄が合う者がいる


「そうかあなたは使徒か、神に与えられし十二人の使い、既に半数以上が死んだはずだが生きていたのか」


「…………さぁ?」


「言わなくても分かっている、貴方達は人間側に立っているのか」


ロンドはハルミから少しでも大きく聞き取りたかったがそうもいかなくなった

ハルミが使徒だとすればなにが起きるか分からない、それが感じた感想だった


「私は君以外のここにいる者を全て皆殺しに出来る力は持っていると自負しているが」


「第二師団の要請を出させた化物、あなたのことね」


「……そうですよ」


今回の件に使徒が絡んでいる事が判明したからこれ以上の戦闘は無意味だ

彼らが動けばどれだけの犠牲が出るか分かったものではない

ならば少しでも足掻いておこうと彼女は司令塔として下す


「タダで軍を引くのは無理だそれ相応対価がいるが」


それにハルミは顎に手を当てなにかを考える


「王国軍の支部を全て吹き飛ばす、それなら奴らも追ってこないだろう」


「後はそうだな、君の寿命について話してもいい」


ロンドは雷に打たれたような衝撃を覚えた


「君達が戦争起こしてまでやりたかった事に関係あるはずだ、違うか」


なにもかも見透かしたような目で見つめるハルミを睨みつける

国の国家機密でありロンド自身もつい最近まで知らなかったことだ


「どこまで知っている」


「全てさ」


即答するハルミがなにを考えているのかわからない恐怖

思考の一欠片ですら感じる事のできない歪さに嫌悪感が現れる


「後は魔王様に合わせていただければよろしいんですが」


「謁見したいと」


「いえ、対話を」


「それはできない、私を含めて全軍と刺し違えても無理だ」


力強く発した

魔族として、国を背負って戦う身としての心構えだ


「それに困るのは君じゃない」


「魔王様は君ををここで失えば研究に差し支える」


「何の話をしている、それは何だ今発した言葉の意味は何だ」


問い詰めたい衝動に駆られハルミの胸ぐらを掴んだ


「答えろ!」


「あなたの目的は何?」


「私の目的はただ一つ未来を破壊する」



「そのために舞い戻ってきたのだから」

感想や意見をいただければ幸いです

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