頼みごと
時間が経つのは早い
そう実感するのは初めてだった気がする
ここに来てまだ一年も経っていないのに何年も、いや何回か死んで生き返ってる
多くの人生を送って来たように感じる事が多々ある
内容が濃いのか
こんな場所で世界の状況がここまで悪くなければゆったりしていたのか
だらだらと過ごしていたのか、想像がつかない何故だろう
今頃輝樹達も戦いの準備を進めているらしい
ユノによればそう遠く無いうちに戦争が起こるとのことだ
二ヶ月か三ヶ月、それ以上かもしれないしもっと少ないかもしれない
見えない時計は着々と進んでいるのだ
見たことも無い敵
知識としては知っていても実際は初めてだ
どんな奴かもわからないしどんな戦い方をするかもわからない
ぶっつけ本番って事だ
考えても仕方ないし残りの時間を有意義に過ごすしか無い
そう思って寝転がって空を見上げた
いつもの不思議空間ではない、ちゃんとした空だ
何も無い風景で代わり映えのない空だ
鳥も飛行機も飛んでない自然のままの空、不自然な雲がない
青い空に浮かぶ雲は次第に流れていく、到着点なんか無い
ただただ流されていくのだ
時間とともにオレンジ色に染まって来る
この色はとても短い、すぐに黒く塗りつぶされてしまうから
黒色が広まっていき太陽は追いやられ代わりに月が星を引き連れてやってくる
空に散りばめられた星々は不規則に並んでいる
俺の知っている星座は一つもない
それは異世界だし仕方ない、この世界の人たちは星座だなんだっていう程暇じゃないのか
月だ星だ何だ言っても星座が無いのだよくわからん話だ
月は少し大きく見える
うさぎとかサソリとかには見えない
どちらかと言うとカレーライスに近い、白いとこがライスで黒いとこがルーの位置
ガキの発想だ、それは仕方ないガキの頃の浅知恵だから今にも根付いている
人間そうそう変わらんな
俺は変わったつもりでもいつかまた戻ってしまうのか
まあ良いや、今は考えるのやめる
仕方ないし、後で考えるなりなんかするか
地面に寝転がる
ずっと不思議空間に居たからまともな地面が久し振りに感じる
あそこはなんか違うんだ、言い表せないけど違う事はわかる
心地よい風が吹き木々が揺れる
虫の音がよく聞こえる
ここは灯りが無いんだったな
最初来た時は不便に思えたけど慣れた
向こうは常に明るいから多少は違和感あるけどすごく昔だな
やっぱり人がいないから灯りもない
未開地なんだよここは
目をつぶり身体の力を抜いてだらける
視界を閉ざし記憶に浸る、楽しかった事や向こうの事
そんなにないけどこうして思っておかないと本当に忘れてしまいそうだから
この時俺は無性に外に出たくなった
とても当たり前の事で普通極まりない事だがちょと前までなら考えもしなかっただろう
訓練漬けで頭がおかしくなっていたから思考から外れていた
急にどうしてか?あの話を聞いたからか、それならそれで良い、人間は求めているものだから
お金があるわけじゃ無いけど行ってみたい、何かする事ができるかと聞かれればできないと答えるしかないけど、とにかく出たいのだ
だってそりゃ、せっかく異世界来たのにずっと不思議空間に居て戦争待つなんてちょとつまんなくないか。少しくらいここの雰囲気とか楽しみたいの俺は
それにしっかりと街に入るのは初めてなのだ
ここに来るときは直接馬車の所まで一直線でまともに見れていなかったし
なんせ屈強な男たちに囲まれていたから肩身狭かった、誰とも目を合わせずひたすら歩いた
視線が痛かったのを覚えている
思い立ったら吉日とか言ってるけどもう遅いから今日は辞めておこうかな
黒い空には満月と星々が浮かんでいる
こんな時間に行っても着いたら遅いし心配かけるだろうし
店とか全部閉まってるだろうしね
「何、ここにいたの」
「ああ、悪い」
ユノが来た
何も無い空間こじ開けてきたから周りが少し歪んでいる
探してたのか、悪いことしたな、ふらっと出て行ったから
最近はあんまり言わないけど謝っとかないといけないからしておく
「別に良いけど」
ユノはそう言って向かいに腰かけた
そして空を見上げている俺を見て聞いてきた
「どうしたの?」
「俺たちの世界とは少し違うと思った」
「空なんて変わんないでしょ」
不思議そうに首も傾げた
普通ならそんなもん見てる奴なんていないし、輝樹達だって見てないだろう
ただ今日は無性に見たかったのだ、歳かな?
「ちょと違うんだ、少しだけ」
もう一度じっくり見た
動かない星はあるが周りがごちゃごちゃしている
知ってる星座はやっぱないか
「ふーん」
ユノは頬杖をついて俺を見た
何が違うのか興味があるようだった
「俺達の世界には星座ってのがあってそれを探してもないんだ」
何で覚えているか聞かれると暇だったからと答えるしかない
怪我で入院していた時暇すぎてアニメとかゲームとかそういうものをよく見てた
ユノに無駄な知識を広げた
対して面白くなかっただろうが聴いてくれた
「すごいのね」
その後少しだけ話した
俺の世界のことを
こうしてみるとあまりこの手の話はしていなかったことに気づいた
自分で思い出したくなかったのか、しっかり決めた今だからこそ言える
どんな物があったとかのことを話した
ユノは興味津々で聴いていたけど途中恥ずかしくなったのか縮こまった
ふつうに聞けばいいのに
そしていくつか話した後思いついた
もうこの際今言ってもいいよね
さりげなく、勢いで頷いている最中にぶっこめばいける
出来るだけ早い方が、後で忘れても嫌だし
というわけで頼みごとだ
「やりたい事が出来たんだ」
「明日どこかに行ってもいいですか?」
勢い作戦失敗
首を振らずに止まったのだ
断られませんように
必死にお願いする、心の中で
頭を下げてお願いするとようやく折れてくれた
「いいけど変なことしないでよ」
諦めたユノはそれだけ言って了承してくれた
でも変なこと…
きっとあの事だろう
俺は迷宮の後助け出された
あんな高さから飛び降りるなんて正気の沙汰では無い
自殺志願者のすることだ
至る所に打撲や破片が刺さっていたらしい
運が良かったのか気絶していたから痛みは感じていない
だいぶひどい怪我だったらしくめちゃくちゃ怒られた
しかもユノのハイパーパンチが飛んできて今世紀最大の重傷を負ったが本人は俺のせいにする
あれが一番の原因だ回復魔法がなければ後遺症は免れないだろう
結局の所あの怪獣は元々居なくて違う奴だった事
誰かが干渉してきた事、なんかがあったけど何とかなった
しかしその後の修行が厳しくなった
誰だそんなことした奴とばっちりでこっちが酷い目見た
今度会う機会があればぶん殴ってなりたいね、顔知らないけどそんな気概で
そんなこんなで時間は流れ
俺も新しい技とかパワーアップができた
今までとは違うぜ、なんせ変わったからな
そういや変わったことと言えばユノが
「髪切ったんですか……」
切ってしまったのだ、髪を
それを見たとき俺の中の時が止まった
驚愕で何も言えずにこけしみたいに突っ立って口開いてただろう
何故かしらんけど
本人はイメチェンとか言ってるけど絶対違う
わかんないけどもっとこう何か違うんだよな
一応褒めて機嫌だけ取っておいた
急に切ったりすると怖いじゃん、女が切るときは失恋とかって言うし
基本的に切らないらしいから怖い
自分に部があるのか
考えたけど心当たりが多すぎて分からん
どれが悪いのかこんがらがってると真顔で横を進むのだ
絶対なんかある
その後数日顔色伺ってたけど大丈夫そうだったのでいいだろうと思い元に戻した
何事もなければいいんだけどな
話が逸れたな
さてさて本題に戻ろう
「変な事はしませんよ、ただ街に行ってみたいだけです」
「わざわざこんな時に」
確かにそうだけど
「こっちの世界に来てから観光とかしてなかったので、大冒険ってわけじゃないけど外を見たい」
「そう」
ユノは少しの沈黙の後に手を出した
そして指を立て
「なら少しだけあげる、お土産よろしく」
俺はどれだけか知らんが少しの休暇を得たのだった
お土産と言う名の供え物によって
「わかった、考えておく」
「俺のセンスはピカイチだから」
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「ユノを連れ出す」
「戦いが終わったら街に行こう、きっと楽しい」
「沢山人がいて、いろんなものがある」
「だからいつか行こう約束だ」
「そんなに言うなら仕方ない」
うっネタが無い




