VS珍獣
「なんで」
水成が気絶している頃
突如として現れた結界が迷宮を覆ったのだ
ここはユノのテリトリーの筈だ
彼女以外の物が何か出来るわけではない、ましてやここに入ってこれる者など居ない
だが結果としてこうなっている以上
それが絶対で無かったのは確かだと証明されてしまった
中には水成がいる
何者かがこの結界を張ったとしたら何が目的か
水成をどうしたかったのか、それがユノには理解できなかった
だが彼女のする事は変わらない
彼女自身の希望である水成を救い出す事だけだ
ユノは結界の破壊を始めた
何重にもかけられた結界を破壊していく
強度も半端ではないため時間がかかるが必ず助けるとおもって
■
今の状況を少しだけ整理しておこう
迷宮の最上階までやってきた俺はでかい扉を開けて中に入った
中に待ち構えていたのは異形の物体だった
盛り上がった筋肉どうやってバランスとってんのか不思議な筋肉ダルマ
手には俺の何倍もある大剣が握られている
部屋の内部は魔力か何かで光ってるカンテラが複数
趣味の悪い鎧が囲うよう並んでいて、剣や槍を持って突っ立ってた
そして俺は少しの間戦闘を行った
戦ったと言えるかどうか分からないくらい一方的だったのは黙っておこう
結局、衝撃波と共にぶん殴られて扉破壊しながら吹き飛び壁にめり込んでた
意識飛んで変な夢見て、目が覚めたらこんな感じで今に至るのだ
目障りで重い瓦礫を蹴り飛ばし起き上がる
色々と覆い被さってる物を払いのけスペースを空けてから敵を見据える
不思議生命体は発情期っぽいので暴れてる
俺が起き上がったのに反応してこちらを向いた
不思議生命体の大きめの眼と合った
そういえば屋敷から持ってきた剣が手元に見当たらない
飛ばされた時にどっかに行ったのか
そう考えていると壁に刺さってるのが見えた
流石に遠いな
走って取りに行く事は出来なさそうだ
仕方ない俺の国宝級の拳で相手してやろう
腰を添え拳を握る
敵に向け一直線に構える
ボスであるよくわからない物体
もうこの際怪獣でいいや、おい怪獣
怪獣は剣を高く振りかぶった
その次に鼓膜が破裂したかのように思える破裂音が鳴り響く
怪獣はそのムキムキの足で踏み込み、異次元なスピードで飛んでくる
それを俺は迎え撃つ
のは無理そうだ
空中を高速移動してくる怪獣の下をスライディングして通り抜ける
頭上を通るのを見届けてから片手をついて体反転させ立った
俺が居た場所を真っ直ぐ突っ込んでくる怪獣の背中にドロップキック
着地点を狂わせ怪獣を前のめりに倒れさせた
この調子でたたみかけようとしたが
だが奴も馬鹿ではなかった
直ぐに起き上がって蹴ってきたのだ
俺はそれに合わせて横に跳ぶ、ギリギリの所でなんとか回避する
足蹴りだけで終わらず連撃を叩き込んでくる
俺はそれを避け、たまに逸らすために叩く
ガラ空きになった顔面に蹴りを放つ
倒れた怪獣に追い打ちをかけようと近づいたとき
横薙ぎに振られた腕にぶつかり飛ばされる
右半身に仰け反らせ少しだけ威力を弱めたがそれでも強い
「ガハッ」
壁に激突しそうになるが
たまたま近くに刺さっていた剣へ手を伸ばして掴んだ
柄を軸に身体を回転させ勢いを殺す
そのまま遠心力で飛び上がり剣の上に立つ
ヤバイな
多少鍛えたお陰で死にはしないがあんなの沢山の食らいたくない
身体の各部位はまだ動く、支障はないようだし
剣を引っこ抜き降りる
途中壁に刺しながら降りたお陰で安全だった
床に着地し したところで怪獣もこちらを向いた
飛びかかってくる怪獣にカウンター
いい所に入りよろけたためこちらの連撃を叩き込む
俺に向けられた腕を掴み膝でへし折る
痛みで鈍った瞬間蹴り飛ばした
後方に飛んだ怪獣は叫び出した
「がががああああああ」
突然怪獣の身体が膨らみ出した
パンみたいなのじゃなくてもっとこう気持ち悪い奴だった
メキメキと音を立ててより異形へと進化を遂げる
姿は先の何倍にも膨らんでおり主に脚部と腕部が重点的に太い
そしてパワーもスピ………
視界が全て線に見えた
壁に激突する衝撃を受け、ようやく事を理解した
俺は飛ばされた、動きに反応できなかった
少し見誤ったな油断していたつもりはないが失態だ
パワーアップする前に倒しておくべきなのは当たり前だなんだが
移動体制に入った
いつでも反応できるよう目に集中する
後は勝手に身体が反応した方に逃げろ
間一髪のところを回避
怪獣の拳は床を貫いていた
今まで必死に登ってきた下が見えた
迷宮の螺旋階段は一階が見えないくらい暗い
今までの苦労が思い返される
だけどそんな暇があるわけじゃない
まともにやり合うことが出来ないため回避に専念する
簡単に殴らせないように怪獣の周りを回避しながら隙を伺う
怪獣のパンチを何度もスレスレで躱す
鎧から槍を奪って走る
槍を床につき飛び上がる
槍を振り下ろすが斬れずに途中で止まってしまった
「なッ」
そんな俺を怪獣は掴み壁に押し付けた
背中に衝撃が走り血を吐く
目の前の怪獣は片手を思いっきり引き今にも殴りそうだ
しかし掴まれているから逃げ出せない
食らえば確実に死ぬ
何かないか
そしてあった、武器が
「これでもくらっとけ」
かろうじて抜け出せた右腕でカンテラを破壊する
中には赤い魔力結晶が入っていた
火が出ているわけでなく結晶そのものが熱を帯びて光っている
それを確認するまでもなく掴み取った
その物質は何度あるか知らないかとても熱く手が焼ける音がする
それを俺を掴んでいる腕にぶつける
突然の熱に驚き手を離す
その瞬間俺は緩くなった手から抜け出し先程の槍を拾う
掴んでいる魔力結晶を怪獣の目へ向かって投げる
真っ赤に腫れ上がった手を堪えて槍を構え怪獣の腕を駆け上る
はたき落とそうとする手を槍で貫き、時には斬る
魔力結晶が怪獣の目に届きそうな時
怪獣が目を閉じた、だがそこで止まるはずもない
まぶたで止まってしまった魔力結晶を槍で押し入れる
怪獣は目を抑えようとし体制を崩し背中から落ちた
当然俺も宙に投げ出される
「がぁぁぁああああ」
怒号の叫び声
空間すらも振動する程の音が目の前で解き放たれた
当然そんなものに耐えきれるはずもなく俺の鼓膜は弾けた
だが仕掛けは終わっている
そんなものくれてやる、お前の命と引き換えに
怪獣が床に到達した時この階の床は突き抜けた
今まで怪獣の拳を回避しながら走ってたせいでもう限界だったのだ
そして今回の衝撃で終わりを迎えたのだった
底の見えない闇に共に落ちて行く
紐なしバンジージャンプしている気分だ、最も落ちたら死ぬんだけど
だがお前の方が先に落ちるんだからな
さっさと死ねクソ野郎
落下中に目に見える景色
登る時あんなに大変だった迷宮
通ってきた沢山のプラントが流れるように目に入る
落下速度は増していく
怪獣は手を伸ばし迷宮の壁に掴まった
落下スピードは途絶えず怪獣の手から血が吹き出しても止まる気配はない
怪獣は必死にもがいているがもう遅い
迷宮自体が限界を迎えた
全てのプラントが崩壊して中の物が出てくる
石造りの壁や天井が落ちてくる、大質量の瓦礫が怪獣の上に激突した
腕を貫き、止めるものは無くなった
もはやこいつに奇跡は起こらない、ただ死ぬまでだ
でも俺は死にたくないんでな
一つのプラントから水が溢れでる
元々ここのプラントは海洋生物がいたためプールみたいになってた
横からの水圧をより階段部分に押し出される
螺旋階段だったため転がり落ちる
「あっぐっ」
人生つらいな
階段まで壊れた
また紐なしバンジージャンプの時間だ
重力と迷宮そのものによって叩きつけられた怪獣は大量の血飛沫をあげ四方に飛び散った
俺はその一つにぶつかりまた飛ばされる、ギリギリだったが俺が耐えれるくらいには
威力が落ちていたので助かった
ともあれなんとか勝った
大きく息を吐く
疲れたしなんか意識が…
もう……
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