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川岸


流れる滝の音だけが残るこの場所でひとりの男がいた

自然に溶け込む、初めからそこに居たとまで思える程に自然だった


川沿いに腰を下ろし何も見ていない

目を開いてはいるがどこか曇っていて倒れそうなくらい猫背で前かがみになっている

川を泳ぐ魚でさえ気づかないほどの存在感の無さは不気味に思えるだろう


静かな空間の中で男は呟いた


「確かお前はリュウガだっけ?」


「そうだ」


リュウガと呼ばれる茶髪でロングコートを羽織った者が男のすぐ後ろに立っていた

顔は季節外れのマフラーを巻いている為よく見えないが

隙間から傷跡が見えるくらい大きなものがあった


背後に立っているリュウガへ振り返らず


「何しに来た、今忙しいんだ」


男は曇った眼で答えるが、側から見れば忙しいとは到底思えない

ただ川を眺めているだけにしか見えないからだ

男の答えなど無視してリュウガは簡素に言う


「聞きたいことがあってな」


「俺じゃなくてもいいだろう」


男は脇目も振らず即答した

言葉には突っぱねるような意思は感じなかったが

関わって欲しく無い気持ちが少なからずこもっていた


しかしリュウガはこのまま帰る訳にはいかない

元々用事があってやってきたのだからそれを済ませようとしたが機嫌を損ねて破綻しては元も子もない

かといって他の人間ではどうしようもない


「この世で一番知っているのはお前しかいないんだ」


「だからどうした、俺には関係ないし今この状況でお前側が出しゃばって来るのは見過ごせない」


「これでもか?」


リュウガは懐からある物体を取り出し男に向かって投げた

それは刃が中程で折れている剣だった、男の目の前に落ちた剣は石の上に刺さった


この時男の目が覚めた

今までの曇った目がようやく開いたのだ、男は剣を静かに拾おうとするが

剣が急に宙に浮き始めリュウガの手の中に戻ってしまった


戻るところを黙って見ていた男はようやく話を聞いた


「それは、先代勇者の遺物」


「どこで手に入れた」


リュウガを問い詰めるが


「交換だ」


このままでは何の解決にならない事を悟って、駆け引きの材料として持ってきたのだ


「まあいい、そいつは捨てろ、今すぐにだ」


男は石を無造作に掴み川に投げた、着水点の近くに居た魚達は一斉に逃げ出す

波紋を広げるが次第に流れでかき消されていく


「それは無理だな」


男から殺気が漏れ出す

今にでも殺しそうな圧力だがリュウガは顔色一つ変えずに立っている

川に波が起こり木々は揺れ始める、泊まっていた鳥たちは一斉に飛び立った


「そうか」


男がそう言うと手に持っていた本を真上に投げた

本からは大量の紙が舞う


舞った紙の一つ一つが形を変え、鋭利な槍に変わった

槍は宙に固定されたかのように止まり、全方向からリュウガに向けられる


男はゆっくり立ち上がる


「そうなれば少しばかり消えてもらおうか」


殺意の乗った目で睨む


一方リュウガは両手を上げ降参を示した


「何もどうすることはない、ここで争っても俺に勝ち目は無いだろうし、俺がここで退場するのは

都合が悪いだろ」


「わかってるなら初めからするな」


膨大な圧力は消え、先程までの出来事が嘘みたいだった


「要件を言え、ひとつだけ聞いてやる」


「なら■■とは誰だ」


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