訓練
黒円がが付いているところはちょとだけ先の話です
あの日とんでもないことになってから数ヶ月が過ぎた
手足に魔力でできた重しと縛り、その辛さに耐えていた
最初の頃はとても最悪だった
寝るときも魔力の枷のせいで思ったように眠れないし
食事の時もコップが持てないなんてことになった
モテないのは分かってたけどコップにも愛想つかされた
いつも自分の何倍もあるだろう重しをつけられて走らされるのだ
ユノが言うには、戦場では動けないやつはゴミとかクズとか、とにかく使えないらしい
バテてるやつから殺されるしヤバくなったら逃げないといけない
戦場での俺の仕事はだいぶハードみたいだから
へばって死んだら元も子もないので必死に頑張った
一日に何時間も走ったかわからないくらいに走る
足腰は元々少しだけ鍛えてあったから大丈夫だと思ってたら重しが増した
疲れと栄養不足で意識が朦朧としてぶっ倒れたら無理やり回復されて叩き起こされる
起きた時には全開だってバレてるからまた走らされる
眠気まで飛ぶし、回復あったら寝ないでいいらしいなので十五徹なんで常識はずれなことが起こった
そんな便利なもん別の誰かに使えばいいのに
訓練中に足からなっていいのかわからない変な音が聞こえるし
途中から何も考えずに走れるようになった、無我の境地っていうの?知らないけど
もしやこれが俗に言う並列思考なのか、俺すごいんじゃない
おっと感覚マヒしてたけどだいぶスパルタだ、教育委員会があったら訴えてやる
今はギリシア時代か何かか?
基本的にはやれることはなんでも教わった、使わなさそうな技術とかあるかどうかすら怪しい
武器の使い方、例えばスコップとか
なんでも剣士が実戦で綺麗に技が決まるとは限らないし
その前に手元に何があるかわからないからだ、スコップかもしれないしツルハシかもしれない
石の投球のフォームから木人の殴り方、
人体の急所、まあ金的のことだ
中には剣の使い方とかボウガンとかもあったけど魔道具はなかった
なんでか聞くと『無理でしょ』と即答された、もう少し信じようぜ!
結局そこまで上手くなれなかったけどいつか必ず使う日が来ると思ってる
来なかったら…
毎日のように山とか谷とか岸辺を走る
動物の死体の中を走る練習もあった
いわく、『そういう場所もある、慣れろ』
それは今後行くことになる魔族との戦争のことだろう
戦争なんだから当然敵味方問わずたくさん死ぬ、
死体の掃除をしてくれる特殊清掃の便利な人はいないからほったらかしになる
俺は勇者を生き残られないといけないから最短距離を突っ込んで行くことになる
キレイなところは存在しないし走りにくいから遠回りすることは許されない
人だと思い込むよう意識したけどダメだった
動物の肉を踏む感触が気持ち悪くて吐きそうだった
気分が悪くなってかがんでいる俺をユノは何も言わずにただ見ていた
俺の場合リーチは短く、魔法が使えないから遠距離攻撃ができない
だから投球の練習をすることになった
投げる石を選ばないようにとにかく投げた
コントロールが難しいかったけど五十メートルくらいなら当てられるほどになった
まだまだ魔法は遠くまで飛ぶし弓にだって負ける
近距離の延長線上でしかないんだ
他にも崖登りとかもあった
敵陣に気付かれず入るならこれが一番いいとのことだ
岩の間に足かけて登っていく十秒ほどで登れれば及第点
ロッククライミングなんて初めてだが気合でなんとかした
食事面は一番ややこしかった
この世界の人達がみんな化け物みたいな身体能力を持っている理由がそこにあった
なんでも、生物は皆魔力を持っていて食べ物を食べるとその魔力が体内に入り
訓練すると同時に筋肉と一緒につくらしい
ここにある動植物は地上よりも世界のエネルギーに近いのと神がいるから密度が高い
同じような肉でも何百倍から何千倍もあるらしい
そのかわり味がしない、クソまずい
食べたからと言って簡単に取り込むことができないからまた走ることになる
たくさん吸収するためにはこれしかないのだそうだ
それとユノは壊滅的に料理が下手だ
自分は食べないから作らないとか女子力なさ過ぎだと思います。
すみません
裁縫も得意ではないらしいし俺の服もどこにあったのかわからないやつだ
いちよう着れるしいいけどね
料理も俺がなんとかしてる
手伝おうとしてくれるけど皿割るからダメ
最近では物欲しそうに眺めている、作ったものは食べてくれる
ここでの唯一の人間だこの空間を大事にしていこう
風呂はとても広かったのだ
温泉かって思えるくらいでかい
この水もすごいらしいなんとかの聖水だとか、よくわからんけど凄い
疲れはとれるし大丈夫
それとなぜかユノが入っている時がある
俺のマッサージをたまにしてくれる
作ってもほぐさないといけないがやり方を教わりながら自分でも頑張る
最初は動揺したが出るものが一切合切存在しなかったのでなんかかわいそうだ
たまに見える素顔はなんかしっかりしてる妹みたいだった
妹みたいだって言ったら打たれた、首折れたイタイ
未だに剣の使い方とか分かってないし
走幅跳も十五メートルくらいだ
格闘技も隙があるって言われて叩き込まれるし
受け身も満足に取れない
だから必死に特訓してみんなの力になれるように頑張りたい
何もない俺だけどできることはしていこうと思う
これからもたくさん訓練して魔物とか軽くあしらえるようになりたい
そして変えてみせるから
みんなが死ぬ最悪の未来を
だから応援してくれると嬉しい
なんて書いても誰も見ないんだけどね
「水成」
ユノに呼ばれて俺は日記帳を閉じた
椅子から立ち上がって部屋を出た
「今行きます!」
さあ、今日も頑張りますか!
俺たちの明日のために
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