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背負う覚悟

ブックマークありがとうございます

あと、前回少しだけ変更がありますので先に見返して貰えると助かります



「『固有魔術、心性領域解放』」


『号哭の泥沼』


暴風のように吹き荒れる魔力

常人ならば吹き飛ばされるであろう程の密度


木々の擦れる音や竜巻のように舞う砂埃

それらの中心である少年の目からは血が流れている


「はああああああ」


バースを中心にした魔力の嵐をハーネイルはただ観ていた


固有魔術は名の通り本人のみのオリジナルマジックだ

それは魔力の質や人体に大きく関係している


固有魔術にはいくつか種類がある

本人の魔力によって通常とは違う方に変質した魔法

本来なら交わるはずのない属性を持つ魔法などが当てはまる


中でも心性領域といわれる魔法は術者の心と魔法の才や肉体的な物まで関係する

最も強く、そして危険な代物だ


術者の心理が働く以上気持ちの強さ、覚悟の重さがなければ失敗する


戦士としての一種の到達点であり出発点


その高等技術を土壇場で発動しようとしている

ハーネイルは嬉しかった、こんな戦士がいる事に


『発動』


暴風は全方位に向けて放たれる


そしてバースを中心に黒いヘドロのような泥が波のように押し寄せてくる

ハーネイルは木の上に飛び上がり様子を見た


彼を中心に五十メートル程が泥で覆われた

泥は草木を飲み込んでいき、木々はみるみる沈んでいく


「だが」


心性領域は魔力の消費が激しい

先人たちが知恵を絞りに絞って詠唱を簡略化し魔力消費を抑えた通常の魔術と違い

固有魔術は一代限り、その者限定の魔術だ


だから魔力消費は多い

それもバースは今初めてだ、全くの改良が加えらていない魔術

他の術者の二、三倍もしかするとそれ以上かも知れない


次第にハーネイルの足場である木も沈む


彼は泥の上にたった


「行こうか」


「はああああ」


バースが叫ぶとハーネイルの足に泥が吸い付いた


バースは泥を足場にして斬りかかるが止められるが

巧みに泥を操ってハーネイルを押し返す


津波のように押し寄せる泥を斬り合間見える


地面から棘のように変形した泥を斬りバースに横薙ぎを入れる


先ほどの戦いで受け止めることは不可能だと判断した彼は泥を何重にも盾にして受け止める


泥を弾状にし飛ばす


ハーネイルはそれを拳で跡形もなく全て砕く

負けず、なだれ込む泥を斬り刻む


斬り裂かれた先には大質量の岩が飛んできていた

ハーネイルは真っ二つに斬り落とし岩を足場に加速する


その目の前に飲み込まれた仲間達の武器をばら撒く

流石の彼も予測出来なかったが


風魔法で吹き飛ばす


距離を置いてもう一度構える


バースの目からは血が流れている

魔力は残り少ない証拠だろう、肉体に使う魔力まで使用しているのだから


一方ハーネイルは傷は無いが苦戦を強いられていた

この泥は想像以上に厄介な代物だ


常に絶えず流れ続けているせいで良く探知が出来ない

その為不意打ちを食らってしまうのだ


ハーネイル攻撃を泥を何重にもする事で防いだ

バースの認識内では防がれると考えて良いだろう


両者攻める


力で負けるなら手数で、虚を突いて

打ち合うたびに増える深い傷


バースの足は既に限界、腕だってボロボロだ


だが諦めない


勝つために剣を握る


構えを取り踏み出したその時、閃光が鳴った


視界は閉ざされたのだ


だがバースは知っていたこれが何かを

そうこれは魔族側の作戦完了の合図だった


ハーネイルは思考を巡らせた

この光が意味するものを分からねばならないがバースは違う


一瞬ほんの一瞬ハーネイルの気がそれた時

バースは自分でも驚くくらい身体はスムーズに動いていた


全ての泥を集め自身の足から噴出する事で加速をした


出遅れたハーネイルは防御に回らねばならなくなる

渾身の斬撃を繰り出す


何度も何度も叩きつけハーネイルを後方へと吹っ飛ばしたのだ


しかしそんなものでやられる程『超越者』はヤワじゃない


全身の筋肉に前に進めと命令を出す


残像と砕け散った大地を残してバースの目の前に踏み出した


神速の居合切り。放たれる一閃はバースの肩先から斬り裂いた


「泥人形か…」


斬られた物体は次第に茶色く変色し崩れた

辺りの泥も消え去り飲み込んでいた草木も現れる


ハーネイルは剣を鞘に納め振り返りその場を離れた


「中々の逸材だ、敵にしては惜しいな」


大量の返り血を拭い、そのまま歩いて行った




「はっはぁはぁ」


バースは逃げ切った

ズタズタの腕を抑えて傷だらけの脚からは絶えず血が吹き出ている


咄嗟の機転で作り上げた技だったが何とか上手く行った事で命を救われたのだ


森の中を駆ける

撤収の信号弾が上がったので元々決めていた位置に駆けていく


仲間を全員失ったが自身の役目である足止めは出来ただろう

その強敵相手に出し抜いてやった気持ちと仲間を殺された気持ちが入り乱れる


「作戦は成功だ」


バースの目から涙が溢れた


自分のミスで相手を見誤り窮地に陥った

仲間もたくさん殺された


けどこの涙は頑張った自分では無く死んでいった仲間への気持ちだった

苦楽を共にした者との別れ


うまく言えないがただただ言った


「ははっ、俺やりましたよ、あんな化け物相手に戦って足止めしたんだ、思った以上に強かったけどやったんだんだ俺は」


レイはバースを抱え


「ああ、良くやったお前のおかげだ」


レイは慰めるのでは無い、本心だった


「でも俺のせいで、俺の」


「遅かれ早かれ奴が動けば終わっていた、それを止めたのが()()()だ」


彼らが命を張った意味があった


彼らの死は無駄では無かった


それを聞いてとてつもない感情が押し寄せてきた

喜びと悲しみそして仲間への感謝だった


「泣くな、お前らしくない、何時もみたいにいきがっとけば良いんだ。それがお前なんだから」


「はい」


涙でぐしゃぐしゃの顔を腕で拭い立ち上がる


「帰るぞ、俺たちの国に」


無数の影は数える程に減っていた

ただ少なくとも彼らの中には確かに人数分の意思が宿っていた



主人公してるな こいつ主人公でいい気がしてきた


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