修行開始
俺は淡々とクルミを叩いていた
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何でこんな事をしているかと言うと
5時間前に遡る
現状の話を聞きいたあと
屋敷の一室を借りてそこで睡眠をとった
なかなか眠れなかったが気合で何とかした
朝になり何でここにあるか分からない太陽が昇ることに目が覚めた
一様ベットメイキングだけしてから部屋を出て歩いた
人の家ってなんか漁りたくなる
そんな欲求を我慢してリビングにやってきた
「なんだ、早いのか」
自分が早いからどうかは知らないけど、この人寝たのか?
身長が低いのはそのせいなんじゃないのか
「空いてるなら持ってくるが」
いきなり言われた言葉に思い返すと
実際に結構前から食べてない
緊張とかそれどころじゃ無い気が強すぎて忘れてただけだ
普通なら死んでるかもしれん
ようやく普通の感覚を取り戻したと感じ椅子を引いて座る
出されたのは
「何ですこれ」
「魚焼きだ、ずっと作ってなかったからこんなもんしかできん」
「魚の炭ですか?」
「焼きだ」
………
仕方ない師匠になる人だ
変に嫌われても嫌だし
ここは味を感じる前に飲み込もう 、うん それが良い
勢いとノリに合わせて口に放り込む
世紀末の味がした
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「はい」
世紀末から脱出した俺は青空教室していた
内容は俺自身のパワーアップだ
運命を変える力を持っているが
今のままでは魔物に殺され、チンピラに殺され、悪化したふざけた未来のまま終えることになる
そんな誰も望んでいない結末を変えるため少しでも強くなって生き残れるくらいにはなろうぜって事
今日はその記念すべき初日だ
やっぱり凄い技とか技術とか
魔法以外の神秘とかで強化するのかな?魔道具とかで
期待いっぱい膨らませウキウキで到着すると
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「何ですこれ?」
手渡されたのは何とクルミ
クルミだ
「聞いてなかったのか? 割れ」
ん?
思っていたのと違う
もっとこう体重移動とかパンチの仕方とか
クルミ割る練習なんて
俺は人形じゃないんだよ
あ、待って行かないで
ユノは一人でその場から消えてしまった
「くそう」
魔力とか言ってた気がするけど
仕方ないから割るかそれ以外にする事ないし
俺は石を掴みクルミに向かって振り下ろした
ガキン
石が割れた
決してクルミからは鳴るはずのない音がして手元の石が割れた
その光景に絶句し、なんてもん渡したんだと思った
何度も何度も叩きつける
しかし石は割れクルミは無傷
この耐えられない現実から目を背けるため
森の彼方にぶん投げた
すると先程投げたクルミは物凄い勢いで戻って来た
掴もうとするが手を弾き後ろの木にめり込み地面に落ちる
「頑張ろう」
まず最初に確認した
どこに投げても崖から落としてもクルミは返ってくる
そしてひたすら硬い
多分鉄より硬そうだ
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何度やってもうまく行かないので昼食を先に取ることにした
確か皮膚の薄いところに擦り付けると毒かどうか分かると聞いたことがある
少し切って擦るが大丈夫そうだ
食感はスポンジ、水が沢山含まれている
水筒がわりになりそうだな、持っとくか
次は何かじゃがいもみたいだった
仕方ないな他を探すか
そう言って俺は森の中を徘徊した
「グオオオオ」
獣の声に反応して来も引き締める
縄張りか
知らずのうちに俺は人様の家に入っていたらしい
ライオンの爪を転がって避ける
大振りで殴ろうとするところを木を使ってバク転し背後に回る
攻撃手段が乏しいので逃げる
途中走りにくいようにするため木のツタなどをぶちまけて置く
だが奴は木を蹴りボールみたいに跳ね追いついて来た
噛み砕こうとするとこを間一髪回避するが
奴の腕が掠った
掠っただけなのに吹っ飛ばされてしまった
自分の後ろは木
絶体絶命の時もたれかかった木が折れ
体制を崩した俺も一緒に倒れてしまう
宙に浮いた奴が見えた時景色がブレ
次の瞬間俺は奴の背中を見ていた
みるみる離されていく
その時理解した
まるでシーソーのように俺は飛ばされたのだ
木の下には岩か何かがあった
ライオンが反対側に着地した事で俺は飛ばされた
今は居ない仕掛けるなら今しかない
木のツルを引き抜き葉を付けて括り付ける
木と木の間に結び結界のようにする
ありったけの武器になりそうな物を集め
折れた木を転がしその上に石を大量に置いた
さっきのように行けば…
俺は拳を構えた
仕掛けは揃った
後は来いネコ科最強
食物連鎖の頂点の力
どっちが強いか勝負と行こうか
木を使い変則的な動きをするライオンを張り巡らされた木のツルとそれに括り付けた葉の音で確認する
来る!
右から大振りで襲いかかってくる奴の足元に水分たっぷりの木のみを投げつけた
地面の着地時に木の実を踏み足を滑らせた
このライオンの体重がどれだけあるか知らんが
シーソーに見立てた台の上に乗った石の山を飛ばすのには十分過ぎた
強烈な音を立てて宙を舞う石
重力によって加速された石はライオン目掛けて落下する
立とうとするが地面は水分でぬかるんでいる
体に無数の打撃
地面に落ちた石を踏み台にして飛びかかって来た
殺気は先程よりずっと濃くなっている
だからお前は俺を早く殺そうとする
ただ喉笛を噛み切ろうと向かってくる牙
真っ直ぐな殺意
俺の秘密兵器はこれで終わりじゃない
高速で落下しライオンの脳天に貫通する物体
その一撃で命を取った
俺はあの時クルミも乗せておいた
あれは俺への追尾弾のようなもの
だったら巻き込めばいい
判定がアバウトだからな
「お、割れてる」
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「やりましたよ」
水成が戻って来た
きっと割ることが出来たのだろう
あれは魔力を通すと直ぐに割れるが魔力を通さなければ上級剣士でも厳しいだろう
「ほら、見てください」
私は水成の手に乗ったクルミの残骸を見つめた
「おいどうやったらこんな風になる」
「いやーライオンに襲われてこいつで殴ったら割れました」
「違うだろ!」
仕方ない予定変更だ
こいつに魔道具なんて使わせるのは辞めだ
やりたくなかったがこれしか残っていない
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