主人公
読んでくれている方に感謝します
団長との話を終え
輝樹は自室に戻ろうと長い廊下を歩く
自身にあてがわれた部屋に入り衣服を椅子に掛けて
ベットに身を投げ出し仰向けに寝転がった
寝返りを打ち部屋を眺めた
その部屋には並べられた剣と自分用に作られた鎧
訓練で使用する訓練着が畳んで置いてあった
輝樹達が元々持っていたものは
もう部屋の隅に追いやられていた
まだ一ヶ月すら経っていないのにとても前の様に感じてしまっていた
それはきっと毎日が初めてで驚きだった
とても濃い経験をし過ぎたのだろう
普段通りの日常からいきなり世界を救う勇者になってしまった
それを感じながら輝樹は意識を手放した
■
「寝てたのか」
輝樹が目を覚ましたのは夜だった
城から見える街の灯りが少しずつつき始めている頃だ
輝樹はベットから起きて壁にかかっている上着を羽織り部屋を出た
剣を振るには遅いと思い彼は食堂に足を運んだ
普段なら混んでいるはずの時間帯だか何故か空いていた
不思議に思った輝樹は食堂のおばさんに聞いた
「今日は、少ないんですね」
「それはね、騎士団長さんが経費で酒盛りするとかしないとかでみんな言っちまったよ」
「確かに言ってましたね」
自身の時に多めに降りたと言う話を思い出し納得するが
それで遠征が無くなるのではないかと輝樹は心配になる
「では、僕はいつものをお願いします」
輝樹は初めてここに来た時団長に勧められたバランスはいいが兎に角量が多いものを頼んだ
「はいよ」
出来るまでの時間立っている訳にはいかないので席に座る
「あ、輝樹くん」
「おーい」
入り口からの声に反応して振り向くとそこに火織と立花が居た
手を振ってくる彼女たちに輝樹も振り返す
輝樹の真正面に彼女らは座った
「頼まなくていいのか」
忘れてたと言い
席から走って行った
「これとこれと………あと大盛りで!」
輝樹でも食べきれるか分からない量を取る彼女に
「あんまり食べ過ぎると太るぞ」
と、忠告するが
空かさず反論を入れた
「知ってる、魔法使うとカロリーも消費するのよ」
「そうなのか?」
横にいる立花に確認を取ると頷いた
「そうなんだ」
「そうよ」
輝樹は魔法がこれほどまでに便利だったのかと感心した
■
食事を終えた輝樹は先程の話を彼女達に伝えた
「今度、騎士団と魔法師の合同遠征があるのは知ってるか」
「初めて聞いた」
その事に輝樹は団長のサボりに怒りそうになるが抑えた
「ゴホン、まあそんなのがこれから説明されると思ってくれ」
「うん」
まずある事だけ知って貰えれば良いと話を進めた
「今ここに居ない騎士団が証拠だ」
「何で?」
輝樹は今の経緯を説明する
団長が財務大臣を脅し経費をもぎ取ったことや
その経費で遠征に行く事を
「そんなんで良いのかな」
「経費の使い道なんてそんなんだよ、多分今回の酒盛りも書類上はそれっぽくなってるだろうし」
大人社会の闇を垣間見た瞬間である
「具体的には何するの?」
立花の質問に対して輝樹自身も大したことを知らない事に気づき悩む
「僕の想像だけど、やっぱり連携とか魔物の対処とかここでは出来ない実践的な訓練とかだと思うけど」
「確かにここの訓練所では出来ないわね」
城の訓練所も大きいが流石に全軍を入れるスペースはない
陣を組んでも溢れるものや狭くて入れないものが出てくる
外部の広い土地があればそちらの方が良いだろう
「そうだ、最近新しい魔法覚えた?」
話に詰まった輝樹は別の話題を出した
「上級魔法を使えるようになったよ」
「私も」
「僕は一杯一杯かなあんまり最初から進んだ気がしないんだよね」
「それは最初が凄いからでしょ」
火織が少し皮肉を言う
「そうならいいけど」
「私たちは少し特殊だから、そう言うこともあるよ」
「特殊か」
輝樹は水成の事を思い出した
共に召喚された友人
輝樹達と違い力を得なかった者
『殺されたかもしれん』
団長から言われた言葉を思い出す
現に彼の乗っていた馬車は残骸と化していた
だが死体は見つからなかった
輝樹は希望を捨てたくなかった
「僕は水成が生きてると信じてる」
「………」
「あいつは直ぐにくたばる奴じゃない」
「きっと生きてる」
それは彼女らに言った言葉というより自身に向けられた言葉だった
■
一方で水成は
「待って待って!それ砂!こっちが塩!」
「分かりにくいわね」
「わかってください、お願いします」
「私食べなくても…」
「俺は食べないと死にます」
「うん…」
水成の食事問題は困難を極めていた
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