1.雨
なんとなくの投稿です。お気軽に見てもらえると幸いです。
偶々いつもより早く家を出て、いつもと違う通学路を使ってみたら。
道路の真ん中に子供が倒れてて。
いつもは車通りが少ないはずが、その日は雨のせいでいつもより多かったようで。
もしかしなくてもやばいと思ってたら
トラックが子供に迫ってた。
俺は傘と荷物を捨ててすぐに走り出した。
火事場の馬鹿力か、子供を放り出す事は出来た。
ガードレールがなかったのは幸いで、子供は脇道に飛ばされていた。多少怪我はしても命には変えられない。
そしてこのとき咄嗟に動けたことを、俺は生涯忘れない。
が、運動神経のない俺の肉体はトラックを避けきれずに、どーん、とあっさり跳ね飛ばされた。
何メートルか吹っ飛んで、地面に転がって、体が動かなくなった。
そうして俺の人生は終わった。
冷たい、雨の日の事だった。
☆
「お目覚めですね、雪さん。」
「へ?」
意識が、覚醒した。
何故?俺は死んだはず。他でもない自分のことだからわかる。あれで助かるほど人間の体は強くない。
だが、確かに意識があって目の前には人がいる。
「ここはどこですか?」
「ここは無の世界、私が作り出した生も死もない世界です。」
無の世界か。言葉通りだな。
今俺がいる空間はどこまでも真っ白いだけで何も無い。
「ところで、あなたは?」
「申し遅れました。天使です!」
にっこり笑う天使?様は、見たことないくらい綺麗な金髪の少女だった。
幼げな顔立ちで、庇護欲を掻き立てる。
「天使・・・様ですか。」
天使、神の使い。そもそも神がいたことにも驚きだが、俺が呼び出される理由が分からない。
「何神の使いなのでしょうか?」
「シスト神です。死と愛を司るお方で、現在はとある事情で長い眠りにつかれています。」
シスト神、聞いたことがない。
日本の神じゃないとは思うけど。
「それで、天使様が何か用でしょうか。」
「えっ?」
「えっ?」
天使は急に顔を引きつらせた。
え?何か変なこと言った?
「あの、その、テンプレ?ですよね。
最近の人は異世界転生とかに造詣が深く、説明はいらないと聞くのですが。」
「異世界転生?あまり聞かないですね。」
異世界に転生する?よく分からない、というより意味が分からん。
そもそもテンプレ?も分からない。
なんでか天使はこちらの世界を誤解しているようだ。
「アニメとか、ゲーム、ラノベという娯楽の題材になっているそうですが・・・・ご存じない。」
「申し訳ないですが、俺はそういう娯楽には興味がないんです。」
「成る程。人の趣味は万人共通ではないですよね。」
「そうですね。」
天使は一度肩を落とし、顔を上げて頷いてから辿々しく説明を始めた。
「ええっと、雪さんは自分のいた世界で善行を為されたので、人間に生まれ変わる権利と、さらに来世に対するわずかな配慮が得られます。」
善行、子どもの命を助けたのが、そう見なされたのか。
「配慮とは?」
「わ、私の主のシスト神と他4柱の神が治める世界に生まれ直す権利を差し上げます。」
天使はフンス、と言った感じでどや顔をした。
可愛いけど、残念な感じが否めない。
「それは、なんの得があるので?」
何故によく分からん世界に転生するんだ?
住み慣れた地球に転生した方が楽だろ。
「そう、ですよね、そんな冷たい反応が普通なのかもしれません。」
今度はさっきより深く肩を落とし、ジトーっとした目をしてきた。
「魔法が使えます。特にエルフは絶世の美男美女ばかりで、強大な魔力を持ちます。」
魔法、か。
成る程それは面白い。アニメは見ないけど、映画は好きな俺からすると杖でドンパチかますのは夢だな。
エルフ、も名前は聞いたことがある。
「あとは?」
「あ、あとはえ〜と、チ、チートが使えます!」
「チート?不正ということですか?天使様が自信満々に仰ることではないような気がしますが。」
「違います!強い能力で周りをあっと言わせることができます!」
「それは良い事なんですか?貰った力で悦に浸るのは抵抗がありますけれど」
うん?何がしたいのか、この天使。
「あぁもう、つまり、雪さんは亡くなりましたが、人間のまま違う世界に生き返るか、同じ世界で記憶をリセットして生まれ直すか選べるって事です!どちらとも平均より生きやすい世界になれます!」
成る程、早く言えばいいのに。
この天使、見た目は隔絶しても頭はもう少しのようだ。
「違う世界なら記憶を引き継げると?」
「はい。さらに生まれ直しか、ある程度成長した肉体に蘇るか選べます。ただし、容姿はそこまで変わりません。」
もっと世界を満喫できるのか。だったら、そっちを試してもいいかもしれない。
「じゃあ、肉体が成長してある異世界転生で。」
「了解しました!」
天使はそれはもう嬉しそうに微笑んで、手をかざしてきた。
「では、お好きなスキルを三つ選んでください。」
そう言うと、目の前に物凄い数の文字の羅列が並んだ。
液晶が宙に浮かんでる感じ。けど、触った感触はある。
なんだこれ、近代的すぎる。
「スキルとは?」
「・・・技能を予め与えます。例えば炎魔法のスキルがあれば練習なしで炎が放てます。」
「練習すれば放てるのですか?」
「はい、ただスキルを持っている人にはどうしても届かないと思います。神様が与えるものですので。」
だったら慎重に選ぼう。ドンパチも楽しみだけど生活に困っては世話がない。
俺はひたすら液晶画面をスクロールして、天使に聞きながらもスキルを選んでいった。
「そういえば、善行を積むと、毎回こんな感じになるんですか?」
「いえ、今回はとある事情がありまして。
詳しくは申し上げられないのですが、全ての人がこの場に来ることはありません。」
事情、か。そもそも子供があの場にいたのも疑問だ。家出か、事件か、迷子か。雨の中で一人で居るような年ではなかったようだけど。
「この、薄暗くなっているのはなんですか?」
「戦闘系のものです。以前、転生者に戦闘スキルを与えたら、シスト神に剣を向けまして。かなりの激闘の末シスト神が勝利したのですが、それ以降は戦闘スキルは無しになりました。」
ドンパチはできないのか。
まぁ、しょうがない。地球にないものを見ていくのも楽しいだろう。
俺は何時間もかけて、スキルを選んでいった。