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フェルディナントについて5

 開戦後の夜。

 陣地ではかがり火がたかれ、陣地内を柔らかい灯りが照らし出していた。

 陣地内にはテントがいくつも張られ、二人にひとつがあてがわれ休息を取れるようにしてある。

 その中で、俺とバルは焚き火をしながら飲み物を飲み漁っていた。


「バル、今日はすまなかった。お陰で助かったよ」

「ハッ、何を言うかと思えば、お前らしくない」


 バルは焚き火が照らす柔らかい明かりの中で、ニコリと微笑んだ。


「お前はもっと堂々としていろ。貴族の息子だろ?」

「し、しかし……」


 そんなバルの言葉に、俺は思わず言葉を詰まらせてしまった。


「いいから、フェルディナント」

「ん、あ、あぁ」


 おもむろに飲み物を渡され、ついそちらへと意識がいってしまう。

 バルは気にするなと言うが、俺は気にしてしまうんだ。

 俺の実力が足らないせいで、あんな体たらくを招いてしまった。

 家の名に恥じることだ……


「そんなに自分を責めるもんじゃないぜ、フェルディナント」

「バル……」


 バルは俺の顔を覗き込むと、悪戯っぽい笑みを浮かべていた。


「どうせ、家の名とか、恥とか、実力とか、そんなこと考えてたんだろ?」

「あ、それは……」

「顔に書いてある!」


 と、ビシッと顔を指差されてしまった!


「いい加減にしろ、フェルディナント! ここは戦場だ! 俺たちは戦ってる。戦争してるんだ! 生きるか死ぬかをかけて戦ってるんだ! そんな甘ったれたことばかり考えていたら、本当に死んじまうぞ!」


 思わぬ指摘に、初めは頭がカッとなってしまった。

 別にバルに心配されるようなことでもないし、心配される筋合いもない。

 だが、変に心地良い。

 他人(ひと)に心配されるというのは、思われるというのはこういうことだろうか。


 この戦争に赴く前。

 少し時間ができたので実家に顔を見せに行った。

 父上は相変わらず厳しそうな顔で、だが一言。


「死ぬな」


 と仰っていた。

 やや年の離れた妹は……

 心配そうな表情を見せはするものの、あまり言葉は交わさなかった気がする。

 いや、俺には聞こえていなかったのかもしれない。

 妹は……、俺の中ではあまり関わりたくない存在だからだ。

 そして、最近迎え入れたという侍女見習い。

 何とも目つきの悪い、育ちの悪そうな小娘だったな。


 兎にも角にも、実家への顔見せが終わらされたのは良かった。

 もしかしたら、帰れないかもしれないと思うと……

 今になって思えば、俺は戦争を舐めていたな。

 不思議だが、死ぬ危険はないと勝手に思い込んでいた。

 何日か戦って帰るものとばかりに考えていた。

 とんだ甘ちゃんだ。

 バルの言う通りだな。

 俺は甘えていた。


「す、すまん。バル」

「いいか、フェルディナント。俺は常に死と隣り合わせの人生だった。剣士団に入るまではな。その日、何を食べるかで命の取り合いをしていたような環境で育った。だが、お前は違う。俺なんかとは比べものにならない、裕福な環境で育ったんだ。だから、だよ。俺はお前が心配だ。どっかで気を抜くんじゃないかってな」

 

 言われてごもっとも。

 バルの言う通りだ。俺はどこかで気を抜いていたんだ。

 その結果があれだ。


 済んだのところでお前に助けられたわけだ。


「甘さは捨てろ。それが生き残る術だと俺は確信している。戦いでいつも先に負けるのは甘えん坊な奴だ。状況が何とかしてくれると思うからな。だが、実際は自分で道を切り開かなきゃならない。自分が生き残ることを第一に考えるんだ。そういうしたたかさがなけりゃぁ、戦争で生き残るなんて無理だ」


 一頻り喋ると、バルは手にしたコップをグイッと煽った。

 コップのフチから液体が溢れている。

 水か?

 もしくは酒だな。


「ぷふぁ、だがまぁ、フェルディナント。心配するな」


 バルは酒臭い息を思いっきり吐き出している。

 というか、それ、酒だったのか……


「お前は俺が守ってやるよ」


 そう笑顔で俺の背中をバンバンと叩くバルは、どこか寂しそうな……変に暗い顔をして見せた。

 焚き火が照らし出す明かりで陰影が強く炙り出されたその横顔を、俺はいつまでも忘れることが出来ない。


 そして翌日。


 俺たちは再び敵軍と会敵したのだ。

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