フェルディナントについて 2
ほんと、ボチボチ更新ですね……
剣士団で過ごす日々はとても刺激的だった。
自分より弱い奴もいれば、強い奴もいる。
互いに切磋琢磨してしのぎを削りながら上達を感じることは、この上ない快感だった。
一日一日を追うごとに腕が上がり、強くなる。
昨日、倒せなかった奴を今日は倒せた。
その逆も然り。
それがとても面白い。
昨日上手くいったからといって、今日も同じという訳ではないというのがいい!
頭も使うしな。
一人一人、癖も違えば、得意とする技もスタイルも違う。
どうすれば攻略出来るかは一人一人違うという訳だ。
父と二人でチャンバラしていた頃とはまるで違う。
周りをどう出し抜くかは自分次第ってことだ。
クックック……
「次! フェルディナント!」
名前を呼ばれ、俺は立ち上がった。
手には木刀を携えている。
今日は剣士団見習い(まずは見習いから始まる)の手合わせの日。
俺の相手は、一つ年上のバルだ。
この男。恐らく見習いの中で一番と言えるほどの体格だ。
攻撃ももちろん、力に任せた豪快な大振り。
当たらなければなんてことは無い。
避ければいいだけのことなのだが、体に似合わず意外に素早い。
大振りを避けたと思えば、次撃が素早く打ち込まれてくるから油断が出来ない。
まぁ、そこを除けばただのバカ力なだけだ。
対策をしっかり立てておけば何てことはない。
……と油断することが負けに繋がる。
どんな相手であっても、確実に仕留めるためには、些細な隙を見せないことだ。
俺はバルに向き合い、構えを取る。
基本中の基本、中段だ。
「おいおい、フェルディナント! 何初心者みたいなことしてんだよー!」
「バルに敵わないからって、ヤケになるなー!」
外野のヤジがうるさい。
こいつらバカなのか?
中段は確かに基本だ。
だが、その基本をしっかり押さえとけば、応用なんていくらでも効く。
バルに対してもそうだ。
しっかり間合いを測って動きを掴んでいけば……
バルが動いた!
俺は剣先で間合いを測りながら、奴の動きをしっかりと見る!
一旦前に出たかと思えば、寸前で……
左に跳ねるか!
上手いな、バル!
相手に勢いよく向かって行けば、思わず避けるか、剣を振ってその場をやり過ごしたくなるもの。
その心理を利用して、相手の死角に回り込んで攻め込む算段だな!
俺はバルの突っ込みに動じず、足のステップを見て左に逃げると読んだ。
案の定、バルは左に跳んだから、俺は間合いを保ちつつ、バルの跳んだ方へと剣先を向ける!
ーーいた!
……筈。
なのに、次の瞬間、宙を舞っていたのはこの俺だった。
一体、何が起きたんだ……?
ーー
「ブアーッハッハッハ! だからこうしてだな、こうして、ああしたんだよ!」
剣士団の食堂では、先輩剣士たちが戦場での武勇伝を、鼻高々と語らっていた。
俺たち見習いは食堂の片隅で、ただモソモソと夕食のフォークを動かしている。
「なぁ、フェルディナント。傷は痛むか?」
不意にバルが話し掛けてきた。
「まぁ、勢い余って飛ばしちまったが……悪かったな」
バルはそう言ってその屈強とも言える顔を歪ませた。
驚いた。
こいつ、こんな強面だからさぞや性格も悪いんだろうと勝手に勘ぐっていたが……
案外いい奴なのかもしれない。
「気にするな、訓練だったんだ。それに、お前に負けたってだけで、死んだ訳じゃない」
俺がそう言い返すと、バルは途端にその強面をクシャッとした笑顔に変えた。
意外に可愛い顔をするんだな。
「そうか! そう言ってくれて良かった! 実は気にしてたんだ、俺、こんなバカ力だから友達が出来るかちょっと不安だったんだ!」
友達?
こいつ今、友達って言ったか?
「あのな、バル。俺は誰かと馴れ合うつもりは……」
「そう言うお前も、あの構え! 隙がなかったぞ! どう攻め込むか、正直悩んだからな!」
ん? それは褒められたのか?
こいつ、俺のことを?
「とにかく、フェルディナント! 俺はお前が気に入った! また手合わせしてくれ!」
と俺の背中をバンバン叩いて、バルはその場を立ち去っていった。
後に残ったのは、冷めた俺の夕食と、ジーンと鈍く痛む背中だった。
なんだかよく分からんが、俺に友達ができたらしい。
拙い文章ですが、お読み頂きありがとうございます!
これからもよろしくお願い致します!