二章
小さな時のサチは雨の日が嫌いだったようだ。
幼稚園も来ないし、家からも出てこない。
それはサチの両親も何も言わなかったようだ。
昔はサチは水がつくと消えてしまう、わたあめのような子なのだと勝手に思い込んでいた。
「いっちゃん、そっち濡れてる」
サチは俺の肩を見ていった。
「いいんだよ、俺は別に。」
こうやってサチを見ていると本当に変わったなあと思う。
昔はもっと意地っ張りでわがままでそれこそ可愛げもなかった。
小学校の卒業アルバムと、中学校の卒業アルバムじゃ
全く別人のような笑顔を顔に張り付けている。
「いっちゃん、ぼおっとしてどうしたの」
「いや、大丈夫」
サチの肩に触れると、パチッと静電気が起きた。
「静電気か、この時期に」
「ほ、本当だね。びっくり」
サチも静電気に驚いたようだ。
「そんなに驚いたのか」
「え、あ、うん。びっくりしちゃったあ」
可愛く言って見せたが、この顔は絶対学校ではしないなと、しみじみ思った。
「サチさ、こうやって学校でも素直に笑えばいいのに。クラスのマドンナの顔より、今の顔の方が絶対いいよ。」
「そうよね、でも私学校内だとああいう風にしか振る舞えないのよ」
哀しげな表情だった。
「ごめん、余計なこと言って。」
「いいのよ、ごめんね」
サチの声が少しぎこちなく聞こえた。
「私、ここでもう大丈夫。」
「え、送ってくよ。まだここ俺の家だし」
「大丈夫、走ったらすぐ着くし」
「じゃあこれ」
俺は自分の指していた傘を差し出した。
「ありがと、じゃあまた明日返すね」
そのまま俺の傘を受け取り帰って行った。
「また静電気だ」
傘を受け渡した時に手が触れた。
そこでもまた静電気が起きた。
少し痛んだ手をさすって俺はサチの後姿を見ていた。




