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第1話

ノックをし、両開きの扉を開いて中に入ると、そこには見た目25歳ぐらいの軍服を着込んだ女性が奥の方で

足を組んで座っていた。机も椅子も落ち着いた色ゆえに、少し短めのスカートから大胆にのびた、

黒のストッキングに包み込まれている足が目立った。正直言ってとてつもない美人だ。


御劔疾人みつるぎはやと特佐、命令により出頭しました」


右手を帽子にかざして、敬礼をする。自分より階級が下の人間に敬語を使うのもおかしい気がしたが、

この学校では教官となるので、やはり敬語を使うべきなのだろう。ちなみに俺の特佐と言う階級は、

少佐と同等の権限を与えられている。


「ええ、ご苦労様。しかし、今の君の階級は特佐じゃないよ」


一体何の話だと目で訴えかける。


「今の君は軍隊で最下級であり、この学校でも最下級の階級となる二等兵だ」


「………!?」


「これは君の上官である大島大佐の命令だよ」


あまりに驚いて声を上げそうになってしまった。そんな俺を見て面白そうにしている

大尉に少し腹が立ったが、上官に刃向かうことは軍人である以上当然できない。


「しかし君のあの部隊での階級に変わりはないそうだ」


「大尉は秘匿部隊をご存知で?」


「私ももともとはリーブラの隊員だ。君がもといた特殊部隊の隊員でもあった」


これには少し納得させられた。大尉が纏う濃密な殺気が、この話に入った途端に発せられていたのだ。


「さて、この学校での君の扱いがわかったところでこの学校の説明を始めるとしよう」


殺気が消え先ほどの色香が舞い戻る。


「この学校は、今はGoEに占拠されてしまった日本列島を取り返すために、生き残った日本人たちが国連の

本部近くに築いた、軍事教育機関だ」


「学校の周囲30km圏内は日本の領土としてアメリカから借り受け、日本人の居住スペースや、

日本の街並みを再現してある」


「まぁ、日本列島を取り返すまでの仮の拠点とでも思ってくれていい」


「そして、この学校に在籍しているのは二等兵から一等軍曹までだ」


事前に配布された資料で全て知っていたが、ここは言わないのが身のためだろう。

触らぬ神に祟りなしである。


「そして君のホームルームだが、君には最弱と呼ばれている分隊に入ってもらう」


「その理由をお聞きしても構いませんか?」


「ええ、もちろん」


と、なぜか二つ返事で快諾された。


「この学校には年に数回模擬戦があってな、もちろん実戦もあるのだが昇級は模擬戦で決定する」


「そして通常の高校卒業年齢までに一等軍曹になれないものは、階級を取り上げられ軍から

追放処分となる」


俺は首を傾げ、尋ねる。


「どうしてそこまで行う必要が?」


今の日本は実は領土がないというだけで、資金や物資はむしろ前より豊富なのだ。


「それには、軍に入れば国家からの恩恵を多く受け取れるという、一つの事実が関係してくる」


「別に軍に入らなければ生活が苦しい、などというやつはいないのだが、

軍に入ると特権として税の免除があるのだ」


「現代の税は昔に比べるとかなり高騰しているからか、できることなら払いたくないという

風習が根付いてしまい、軍に入るやつが増えた」


「結果、一般職の人口が減少してきたため、適性がないと判断されたものは戻されるということだ」


「それで、俺にその最弱分隊を任せると?」


と、尋ねると首を縦に振った。


「失敗したら俺も民間人送りってことですか…」


「そうなるが、君の実力ならあの小隊を昇級させることも難しくはないだろう」


考えさせてもらいたいところだがそういうわけにもいかないだろう。

仕方なく引き受けることにし、第12分隊の下っ端として入隊することになった。

明日が入学式となっており、今の時刻はすでに22時を回っているため、そろそろ

帰宅することにした。


「それでは、俺はこれで失礼させてもらいます」


「ええ、また明日」


これは後から聞いたことだが、なんと五条未咲ごじょうみさき大尉は今年で30歳で

独身、さらに彼氏もいないそうだ。まぁ確かに、あんな殺気を平気で会話中に撒き散らす

女を取りたいとは、いくら美人でも思いにくいだろう。現実はいつも非情で厳しいものだ…。



帰宅途中に光学迷彩を纏った人間が3人自分を尾行している、と気づいたのでしばらく

放っておくと、なんとコンタクトを取ろうとしてきた。普通は尾行者が対象に干渉するなど

ありえない。おそらく干渉する前に殺されているだろう。しかし、光学迷彩を解いてようやく正体がわかった。黒ずくめの格好に、左肩に天秤のエンブレム。

最新型の人工筋肉とカーボン装甲を使った隠密戦闘スーツ。

さらにどことなく宇宙人を想起させるヘルメット。

中央に立っているのがH&K XM8アサルトライフル、

右に立っているのがH&K HK417アサルトライフル、

左に立っているのがFN P90サブマシンガンを装備している。全員サプレッサーをつけている。

サブウェポンまでは見えなかったが、おそらく全ての銃が

対GoE戦闘用弾頭から対人戦闘用弾頭に取り替えられている。


「リーブラの方が俺になんの用ですか?」


「そんなに冷たい態度を取らないでくれよ〜、これから一緒に働く仲間じゃないか」


と、案外軽いノリで、中央に立っているのが話してきた。そこで向こうがヘルメットを取ったので

顔が確認できたが、意外にも俺と年が近いようだ。中央と右にいるのが男、左にいるのは女だった。


「それでも、その仲間を尾行するのはどうかと思うが?」


すると女の方が今度は口を開く。


「これから一緒に働く仲間だからこそ、新入りの君の実力が知りたくて…

試すようなことをしてごめんなさいね」


女の方は軍隊に所属していながらあまりその印象を受けなかった。

どちらかといえば、実戦というよりスパイとかの諜報部向きな感じの

おしとやかな感じであった。もちろん、リーブラに所属している以上

実力は折り紙つきであろう。顔は、というとこれまた美人である。

しかも金髪でたぶんハーフか何かだろう。


「ここで自己紹介と行きませんか?」


と、女が言うと男がそれに反論。


「資料で知っているからいいだろう」


「向こうは私たちのことは知らないはずですし、あとでどうせ名乗るのだから

べつにいいでしょ?」


すると男は渋々うなずいた。俺の事情は無視か…と思ったが、

気にする事情がよく考えたらないから流れに任せることにした。

どうやら最初は女の方からのようだ。


「私の名前は鹿島梨沙かしまりさ階級は少尉、年齢は17歳、アメリカ人と日本人のハーフで

Lisaが英語名にもなっているわ。よろしくね、ちなみに3人とも君と同じ高校の生徒だよ」


最後の一言が気になったが事実なのだろう。次に中央の男だ。

こちらはさっき少し話したので気さく、と言うよりは楽天的なのだろう。


「俺は岸田昌平きしだしょうへいだ。年は18歳、階級は中尉、純日本人だ。

まぁ、これからよろしくな!」


最後は右にいる、なんだか爽やかそうな顔をしたイケメンだ。


「僕は徳倉慎二とくらしんじ少尉。年は16歳で、君と同じだ」


ということで、俺の年齢はバラされてしまったが、一応言っておくことにした。

しかし、ここでの俺の階級は特佐なのかそれとも二等兵なのかかなり迷った末に

特佐にした。


「俺の名前は御劔疾人みつるぎはやと。階級は特佐で年は16歳だ。よろしく頼む」


その瞬間、なぜかその場にいた3人とも青い顔をしていた。俺は何を焦っているのだろうと

思ったが、そういえば俺の階級はこの3人より上だ。つまり上官なのだ。

その上官に敬語を使わなかったことに対する焦りだろう。おそらくこの3人は

その資料とやらで、俺の階級は二等兵と知らされていたのだろう。


「まぁ一般的には俺の階級は二等兵になっているから普段はそっちで頼むよ」


これを聞いて安心したようであった。用も済んだようだし

向こうはみんな手を振って光学迷彩で消えた。こちらも振ってはみたが

向こうが見えていたのかはわからない。これでようやく帰れる。

すでに23時を過ぎていたので、ため息をつきつつとっとと帰ることにした。

とにかく早く寝よう…。










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