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第十三話「ダンジョン攻略」

 ハーフェンの南口から出てダンジョンに向かう。フィリアとエルフリーデはユニコーンに乗り、俺とアレックスはパーティーを先導している。後衛はイリスとゴーレムだ。


 どうやらイリスは自在にゴーレムの大きさを変えられるらしく、普段は小さな手乗りサイズのゴーレムとして生活を共にしているのだとか。戦闘の際や魔物が生息する地域を通過する際には、ゴーレムに魔力を注いで巨大化させるらしい。


「ねぇ、ユリウス。私の加護、使ってみた?」

「創造の加護かい? 土や石のゴーレムが作れるんだよね。まだ試していないけど、どうやって作るんだい?」

「ゴーレムを作るには魔法石が必要なんだけど、何か手頃な魔法石はある?」

「ゴブリンロードのウィンドクロスの魔法石、それからスノウウルフのスノウウィンドの魔法石があるよ」

「それではゴブリンロードの魔法石で試してみましょう」

「もしかして、魔法石の質がゴーレムの強さに関係するのかい?」

「そうね。魔法石の強さはゴーレムの知能、魔力、属性に関係してくるわ」

「ということは、ウィンドクロスの魔法が込められた魔石でゴーレムを作れば、風属性のゴーレムが生まれるの?」

「そういう事」


 イリスは俺を見上げて微笑むと、ゴーレムの作り方の説明を続けた。


「魔法石を手に持ち、素材を決定する。土、もしくは石の魔力を込めて魔法石を包み込むとゴーレムのコアが誕生する。コアを嵌めるための体を作れば、あとは勝手に動き出すわ。だけど知能が低いゴーレムは主を襲う事もあるし、命令すら聞かない事もあるから、なるべく高価な魔法石でゴーレムを作った方が良い」

「土か石か……」


 イリスから加護を受ける事によって、俺は既に地属性の魔力を体内に持っている。どうせ作るなら石のゴーレムにしよう。あまり大きくなく、防御力が高い盾役のゴーレムが欲しい。身長はアレックスと同じくらいで良いだろう。魔法石を包み込むように地属性の魔力を放出すると、ゴーレムのコアが誕生した。


「ゴーレムを強化するには、地中に埋まっている石を呼び出し、ゴーレムの体に肉付けをする」

「石を作り出すのではなく、自然にある石を利用して強化するんだね」

「ええ。その方が簡単なの。勿論魔力に余裕があるなら石を作り出してゴレームを強化しても良い。だけど創造の魔法は魔力の消費が激しいから、自然の力を借りる事が多い」

「あの茨の魔法はどういう魔法なんだい? お城で俺に使った魔法」

「あれはソーンバインド。茨を作り出して対象の動きを封じる。力が強い相手にはあまり効果が無いけど、覚えていると便利な魔法よ」


 イリスにアドバイスを頂きながら、俺は何とかゴーレムを完成させた。人型のゴーレムで、身長はアレックスとほぼ同じ。左手には石で作られたタワーシールドを装備しており、右手には石の斧を持っている。初めてのゴーレムだから、随分時間が掛かってしまったが、慣れれば地面にコアを置いて魔力を注ぐだけで、一瞬でゴーレムを作り出せるらしい。


「石から作られた風属性のゴーレム。ウィンドゴーレムね。良い盾役になれると思うよ」

「ありがとう。これもイリスのお陰だ。創造の加護、大切に使わせて貰うよ」

「どういたしまして。分からない事があったらいつでも聞いてね」

「ああ。そうするよ」


 新たに生まれたゴーレムはゆっくりと俺達の後を付いてくる。かなり知能が高いのだろうか、辺りを警戒しながら、ゴブリンやスライムが近づけば一撃で切り裂く。攻撃の瞬間に風のエンチャントを掛けて威力を高めている。ゴーレムの製作者がゴーレムに対して魔力を分け与えれば、魔法を使用する事も出来るらしい。


 どうやらウィンドの魔法とエンチャントの魔法は既にマスターしている様だ。使用可能魔法は、製作者の習得済み魔法のコピーになるらしい。ウィンドクロスに関してはまだ使えないみたいだが、練習をすれば必ず習得出来るとイリスは言っていた。勿論、風属性のゴーレムだから風属性以外の魔法は使用出来ない。


 しばらく移動を続けると、俺達はついにダンジョンに辿り着いた。ダンジョンの付近でユニコーンとイリスのゴーレムを待たせ、陣形の確認をした。前衛が俺とアレックス。中衛がエルフリーデ、フィリア、イリス。ウィンドゴーレムはパーティーの背後で待機しながら、状況に応じて精霊達のサポートをして貰う。


「フィリア。ダンジョン内ではファイアストームを使用しないように」

「分かっているわ。今日はファイアの魔法だけを使う」

「イリスはソーンバインドで敵の動きを封じてくれるかな?」

「任せておいて」

「それじゃ、私はアイスシールドとアイスニードルの魔法で戦うわね」

「アイスニードル?」


 詳しく聞いてみると、氷の針を作り出して飛ばす魔法らしい。エルフリーデは防御系の魔法陣に特化した精霊らしいが、簡単な攻撃魔法なら使用出来るのだとか。


「予めエルフリーデが使用出来る魔法陣を教えて貰っても良いかな?」

「ええ。まずは結界の魔法陣。これはお城で見たから知っているでしょう?」

「精霊以外の侵入を拒む魔法陣?」

「そうね。精霊と精霊に触れている者以外は結界の魔法陣に入る事は出来ない。ただし、外部から魔法陣製作時に込められた魔力以上の攻撃魔法を使用すれば、結界の魔法陣は消滅する」

「なるほど。そういう仕組だったんだね」

「それから私が一番得意なのは守護の魔法陣。魔法陣内のメンバーの魔法防御力を大幅に上昇させる。それから回復の魔法陣なんかも使えるわ。魔法陣内に入った者を持続的に癒やし続ける。ユニコーンのリジェネレーションと同じ効果だけど、持続時間は回復の魔法陣の方が長い。回復量はリジェネレーションの方が上かな」

「俺以外にも回復魔法の使い手が居ればより安全に狩りが出来るね」

「ええ。最後に魔法反射の魔法陣。名前の通り魔法を反射する魔法陣。いかなる魔法も反射させられる魔法だけど、魔法陣を書くのに大量の魔力を消費する。それに、自分の魔力を超える魔法は反射させられない」


 俺の想像を遥かに上回る魔法陣のバリエーションだ。回復の魔法陣はどうやら使い勝手が良さそうだ。魔法反射の魔法陣は、自分の魔力を下回る魔法を全て術者に反射させる効果があるらしい。しかし、魔法陣を書くためには膨大な魔力が必要なのだとか。ダンジョン内では使い勝手が悪そうだ。物理攻撃に対する防御効果は無い訳だから、敵が魔法を使用しなければ魔法反射の魔法陣は何の効果もないからな。


「教えてくれてありがとう。今日はパーティーでの初めての狩りだから、まずは一階層と二階層で狩りをしようか」

「ユリウス。ちゃんと私の事守ってよね」

「勿論だよ、フィリア。それじゃダンジョンに入ろうか」


 ついにダンジョン攻略に挑む。アーチ状の石の門の先には階段があり、苔むした階段をゆっくりと降りる。予め魔剣を抜いてエンチャントを掛けた。アレックスは俺と共に最前列で敵と戦う。斧を構えながら俺の隣で周囲を警戒している。


「アレックス。君が居てくれて頼もしいよ。俺の獣魔になってくれてありがとう」

「こちらこそ、見ず知らずの俺を助けてくれてありがとう。しかし、ユリウスは俺とスノウウルフの戦闘を見て、どうして俺を助けようと思ったんだ?」

「それは、ミノタウロスが闇属性と敵対する種族だと知っていたからさ。俺は聖属性の魔法の使い手。闇属性に敵対する者が複数の敵に囲まれているのを見過ごせなかったんだ」

「そうか……最も習得が難しい属性。癒やしの属性とも呼ばれている聖属性の使い手が居れば、俺も安心して敵と戦えるな」

「ああ。怪我をしたらすぐに言ってくれ。回復魔法だけは得意なんだ。攻撃魔法はまだ練習中なんだけど」


 アレックスと共に周囲を警戒しながら、薄暗いダンジョンを進む。アーチ状の石の通路を進むと、俺達はゴブリンの群れと遭遇した。エルフリーデが杖をゴブリンの群れに向けると、氷の魔力を炸裂させた。


「アイスニードル!」


 魔法を唱えた瞬間、無数の氷の槍が放たれた。鋭利な氷の針はゴブリンの体に突き刺さると、ゴブリンの群れは怒り狂って襲い掛かってきた。その時、イリスの魔法が放たれた。


「ソーンバインド!」


 地面から茨が伸びると、ゴブリンの下半身に絡みついた。俺とアレックスは移動すらままならないゴブリンの群れを次々と切り裂いた。


 戦闘は一瞬で終わった。十五体以上居たゴブリンを圧倒的な力で倒せたのだ。イリスのソーンバインドとエルフリーデのアイスニードルは相性が良い。これなら順調に敵を倒せるだろう。活躍の機会が無かったフィリアは寂しそうに俯いている。


「私だけ何もしていないから自信を失いそう」

「大丈夫。俺はフィリアの強さを知っている。必ずフィリアの力が必要になる時が来るよ」

「そうね! 私の出番が来るまで気長に待つとしましょう」


 ファイアの魔法は既に使いこなせる筈だが、ドラゴンとの戦闘で俺の手を燃やしてしまったからだろうか、魔法の使用を躊躇している様だ。それに、狭い通路ではフィリアの魔法は強力すぎる。魔法の制御を誤れば、レベル50の炎がたちまち通路と仲間を燃やすだろう。


 彼女に自信を持ってもらうためには、小さな成功体験を重ねて貰う以外に方法は無い。俺はフィリアを自分のすぐ後ろに待機させた。次に遭遇する魔物はフィリアに倒して貰おう。


 暗い通路をホーリーの魔法で照らしながら進むと、俺達は魔物の群れが巣食う大広間を見つけた……。

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