煮詰まったコーヒー
煮詰まったコーヒー
朝に入れたコーヒーが
薄いガラスのサイフンの底で
真っ黒く沈殿している
挽きたての豆の香ばしい香
朝に入れたてのコーヒーが
私を大人の世界へ導いた
ちょっと苦い大人の味
お砂糖もミルクも入れないで
我慢して大人を飲んだ十代
爽やかな苦味
舌を焦がす
来る大人の世界の前兆だった
コーヒーのほろ苦さは
青春の心の疼きのように
完全に消えることはない
朝のコーヒーが
サイフンをいっぱいにし
コーヒーカップに幾杯も注がれた
青春はほろ苦さを舌の上で転がしながら
朝に光に眩しく
雨の日に安らぎを与えた
どろどろに煮詰まったコーヒーが
サイフンの底を焦がす
味を失なったコーヒーが人生を濁らせる
大人の社会のように
煮詰まったコーヒーは
朝を語らない