第93話
上へ、上へと目指す。イリアに言われたから、と言うこともあるがあそこには自分の居場所がないからとも言える、それくらいの熱戦だ。だから隙をつき何か他の解決策を目指そうと上を目指す。
「ここか」
たどり着いたのはたぶん最上階の扉、と言うより扉がこれだけだ。そしてその扉を開ける。
「ここは、っ」
左腕に痛み、体に衝撃、目の前には見知ったメイド服と見知った顔が2つ。
「ここまで来てしまったの」
「誰だ、リズとエレナに何をしたんだ」
そうエレナが2人いた。
「エレナ、ああ のことね」
「なんて」
「あなたには理解できないのね」
エレナのそっくりさんが、エレナの事を呼んだとき、理解できない空白がならんだ。まるで超音波を聞く時のように。
「 」
「 、エレナだったかしらあなたが彼女を呼ぶのは」
「ああ」
左腕からリズは離れないが、結構深くまで噛みつかれているのか無理に離すと余計に傷が増えそうなので話すことができない。
「彼女の本当の名前は、ってああもうあなたは感染したからもういつもの言葉に戻していいわね、 」
理解できない空白が続く、どうやらリズ達も吸血鬼化しているようで、それに噛まれた自分も吸血鬼になった体で話しているらしいが、魔力を媒介に感染するために観戦できない自分には、ただの無言の空間が広がるだけだ。
「 」
「 」
と言うかリズはいつまで噛みついているのだろうか。
「 」
「 」
口は動いているので、どちらが話しているのかが分かるので、会話しているのだろうと何となく分かる。
「 」
「 」
エレナの方が強気で、もうひとりの方が少し押されている。
「 」
「 」
とこちらを向く。
「 」
こちらに向かって何かいっているようだが、やはり空白だ。
「 」
なんだか知らないが怒っているのだが、何に起こっているかすらわからないのでどうしようもない。
「 」
「 」
「 」
「あの分かるように話してくれませんかね」
遂に口を開く、正直噛まれた腕は痛いわ、無言なのに怒りを示しているやらで疲れるのだ。そう言われもうひとりのエレナが口を開く。
「ならそこに座りなさい」
「噛まれてるんですが」
「いいからっ」
正直エレナくらいの小さな子に凄まれても怖くないのだが、一応座っとく。
「ほら見なさい、命令聞いているでしょ」
噛まれている左腕をあげながら座るのだが、座ったことでまた無言で言い争うので、立ち上がる。
「命令聞きなさいよ」
「いやなんでさ」
「反論」
「するよ、はぁどうすればいいんだこの子」
エレナの方を見ると任せてと言わんばかりの顔をされる。
「 」
そしてまた無言になると、もうひとりのエレナが。
「一応聞いておくけどあなたがエレナを」
「えっと助けたことがあるかな、あと名前とか聞いていい」
「私はエレナ姉でいい、でその奴隷商人は」
「殺した」
そういいきるしかない、死体の確認もしたから完璧だ。といっても大分前なので死体は残っていないだろう。と言うよりも姉と言うと。
「ああ私たちが吸血鬼と呼ばれる種族の最後の正当な生き残りよ」




