第90話 あの価値とかは
激戦に放り込まれる前、わずかばかり時間があったので全身鎧の指揮のもと簡易な壁を用意し始めた。材料はそこら辺の家具だ。
「あの価値とかは」
「気にするな」
「いや気になりますってなんですかこのテーブル豪華そうな」
「タナカさんそれ安いですよ」
「………………そっか」
そんなやり取りをしながら壁を築く、と言っても高さはしゃがんで隠れられるくらいの壁だが。本当ならさらに築く予定だった。しかし。
「なにか来るぞ隠れていろ」
「はっはい、タナカさん任せましたよ」
「あっはい」
なにかを関知した全身鎧の一声で捕まっていた人をその壁の裏へと隠し、更に自分達も隠れる。隠れるのだが。
「あの」
全身鎧は隠れない。
「まあ見ていろ、マイヤー様親衛隊の実力を見せてやらないとな」
親衛隊なんていたのかと思いながら、待つ。この頃になると足音やら金属音がこちらに向かっているのがわかる。幸いにして通路は1つ、複数から襲われる恐れはない。そして角から敵が。
「私には優しさなんてないぞ」
例のショットガンをぶっぱなす。それだけで済むはずだった。
「はっ」
「えっ」
爆発音、しかも至近距離で。そして向こうの方から銃声。全身鎧が撃たれたのだ。爆発の衝撃波を避けるために隠れる。そして顔をあげると鎧の性能がいいのか黒く焦げて倒れている鎧のそれに群がる敵って。
「くそっくそっくそっ」
その敵に向けて撃つ。はじめは奇襲だった為バタバタと倒れるが、こちらに気づくと激戦が開始されたのだ。
銃を使って足止めするためには撃ち続ければいい。言うのは簡単だが向こうも撃ってくるのだ。撃たせないためには顔を出せないように延々と撃ち続ける必要があり、これを可能にするために総弾数が多い銃が存在する。それがないとにはどうすればいいかと言えば。
「エレナ」
エレナに手渡し、エレナがマガジンを替えた銃を受けとる。そしてそれを撃ちまくる。そしてその隙に。
「リズ行けそう」
「任せてください」
リズに全身鎧を回収させる。生死は不明だがほっとくわけにはいかないだろう。だから隠れる余裕はなく両手にS4を持ち撃ち続ける。みるみる弾が減っていく。だが気にしている余裕はない。
「無理です、重い」
「ならそのまま前進して角に隠れろ、エレナリズにこれ渡してくれ」
リズでも運べない全身鎧のために前線をあげる、そのためにエレナに銃を持たせ、リズへと渡し、その間はショットガンで対応する。
「ああもう」
「受けとりました」
「なら援護」
今度は自分の番だとリズと反対側の壁に走ろうと。
「タナカさんっ」




