第89話 背中は守ってやる
「扉は開きませんでした」
「そうか」
ここはホラーの世界ではないようだ、こういう場面では帰ってこない可能性もあったのだが。って当事者になるとそんな怖い考えが浮かんでしまうのが嫌だ。
「なら前に進むしかないだろう」
「了解」
「それで避難させるものたちは」
「連れていくしかないだろう、変に2手に別れたら後がキツイ」
「そうですね」
と言うわけで捕まっていた人たちをつれて移動することに決まったのだが。
「その担当が自分達なのか」
「どうせ暇だろう」
「いやいやいやこんな戦場で」
「よろしく頼みますよタナカさん」
「安心しろ、問題はこっちで引き受ける」
と言うわけで進んでいくのだがやはり問題なく階段までたどり着く。
「ここまで問題なく来てしまうなんてな」
本当に問題がない、マイヤーはあえて敵を釣るために全身鎧のうちの1人を別行動させたりむしろ存在を示すように歌いながら来たのだが誰一人現れない。そしてそれは目的地にたどり着くまで続いた。
「おいっ」
「えっと誰かしらいるはずなんだけど」
「情報が漏れていると知って切り捨てたか」
「ですが戦力をぶつけて削るのは常套手段です」
「その常套手段をしないと言うことは」
「戦力の一点集中」
要はボスラッシュ、ならばこちらも戦力を集中させないといけないのだが。
「そうかこれが狙いか」
そう言って連れてきた捕まってきた人を見る。戦力にならず更に言えば守らなければならない人たちだ。
「つまりは」
「なら残る」
いの一番に手をあげる。
「タナカ」
「タナカさん」
「自分には魔王を倒す理由はないが、アルフの背中を守る理由はあるからな」
アルフを見るが目をつぶり、精神統一をしている。
「なら私も残ります」
リズが。
エレナが手をあげる。
「2人とも」
「私は戦闘は苦手なので」
エレナもうなずく。
「いや下手したらこっちの方が戦闘になりそうな」
「タナカ本当に大丈夫」
「これ以上戦力を削るわけにはいかないだろう」
そう、この先どうなるかわからないなら削っても問題なく、更に時間の稼ぎやすい銃をメインに使うのが残ればいい。
「わかった」
マイヤーはそう言って全身鎧のうちの1人、先ほど扉を見に行った鎧のようだに目配せする。
「了解時間を稼ぎます」
「タナカ死ぬなよ」
「死んでほしくないならさっさと勝利してこい」
そう言い合う。そして。
「アルフ」
「ダメだ、くそっ」
「いや脳内トレーニングはひとまずおいといてくれ」
というか始めて見た。
「まあいい、背中は守ってやる勝てよ」
「………………」
アルフは黙る、まあ仕方ないだろう仇が上にいるのだから。
そうして仲間たちと別れ。
「くそっリロード」
「タナカさん」
「エレナそれ寄越せっ」
「誰も逃がさないつもりか」
「ヘボるなよ、アルフ」
激戦へと放り込まれた。




