第8話 私は構わない
「それではリズさんにお話ししましたがあなた方にもお話しますね」
そう言ってファクラーさんの話が始まった。
「見ての通り私は駆け出しの商人です」
「いえ見ただけではわからないんですが」
「まぁ駆け出しなので貫録とかないんですかね、それは置いておきまして今回の依頼が高収入なのが疑問なのですよね」
話を聞かれていたようだ、イリアとメリベルが気まずそうな顔になる。
「いえ私もこんな話を聞いたら疑うと思いますがこれにはわけがあるのです。ひどく簡単に言えば、優秀な冒険者に知り合いがいない私は、騎士団に協力を依頼したのですが断られてしまったんです。なのでこれを機に私も優秀な冒険者に知り合いを作ろうと思いあれだけ好条件の仕事にしました、まずかったですか」
「そうですか」
「と言うわけでお受けいただけますか」
「あの先ほどもお聞きしましたが、何の商売なのでしょうか」
「リズそれ聞いてなかったの」
「………アフェならどんなに積まれてもやらない」
それを聞くとエレナが怖がる。
「さすがにそれを運ぶなら見ず知らずの人に頼みませんよ、私が運ぶのは武器や農具、といった金属製品ですよ見ますか」
「………お願いします」
「ほかの人はどうなさいます」
「彼女に任せます、いいよねタナカ」
「あっ、はい」
と言うわけでメリベルとファクラーは出て行った。
「で」
「アフェについてよね」
「何それ」
「アフェはアフェン草と呼ばれる草を乾燥させて、粉末状にしたにした薬ね」
「あぁなんとなくわかってきたような」
「タナカのところにもあったの」
「麻薬みたいなもんだろう」
「マヤクがよくわからないけど、アフェは気分が異常に高揚して、痛みなんかが鈍くなったりしてたから、一時期冒険者の中で流行ってたのよ、けどそれを服用していた冒険者はおかしくなっていって、無気力になるくらいならいいけど、一部のものがアフェの購入のために犯罪を犯したりしたころから、規制されるようになったのよ」
まんま麻薬だった。
「一応撲滅したはずなんだけど」
エレナが怖がっている。
「アフェについて何か知ってるの」
エレナは怖がりながらも頷く。
「いろいろなところで取引されてるのよ、非常に高値で」
本当に麻薬だった。
「で持ってるところを見られたり、使用が疑われたりしたら」
「1発で逮捕とか」
「いえその場で処刑ね」
非常に怖かった。けどまぁ拡散防止にはそれくらいするのが1番なのだろう。
「と言うかそんな薬がそんなに簡単に出回るの」
「それは知らないわよ」
「たぶんで回ってますねタナカさん、奴隷ギルドでもそれの運搬係を集めに来た人が処刑されてましたし」
奴隷ギルドとは、ひどくいってしまえば自分の体、と言っても肉体労働的な意味でだが、を担保にしてお金を貸すギルドだ。貴族が雇うメイドなども本格的なメイドひとりに奴隷ギルドの似非メイドを何人もつけるのが、この世界での当たり前らしい。これとは別に奴隷商人もいるがこっちは何でもアリな方だ。それこそアフェの運搬もやらせるし、よくある奴隷の使用方法もこちらなら可能だ。リズに関しては前者でかつ借金を返済したらしいので元がつくのだが。
「………確認してきた、問題ない」
メリベルが戻ってくる。
「これでよろしいでしょうかね」
「………私は構わない」
「メリベルがそう言うなら自分も構わない」
「私も、けど前金で4日分先にもらっておきたいけど構わないかしら」
「えぇそれくらいなら」
「なら私も構わないわ」
「私はタナカさんの意見に賛成します」
エレナもイリアに隠れながらだが頷く。
「それじゃあよろしくお願いしますね」




