第84話 これでもドワーフだから
「はぁ」
「まあ落ち着けよ、でここのテントがお前らのだ出撃前の語らいでもしててくれ」
「なんか死にそうな」
「万が一があるかもしれないしな」
その万が一すらできれば避けたいのだが、避けられないこともある。ここまではのんびりと冒険できていたがいつなんどきあるかはわからない。わからないがなければ無い方がいい。そう思いながら中に入ると。
「バカっ」
いの一番にビンタされた。
「なんで来たのよ」
「おいおい来るって言われたが」
「タナカさんなので仕方ないですよ」
「………リズもしっかり止めればよかった」
「けどいないよりいる方が」
「と言うかお前らもついてくんなよ」
懐かしかった、そんなに時間はたっていないはずなのだが懐かしい。
「タナカ」
「………イリアのビンタ痛いから」
「そうだったんですか」
「へぇ」
「違うから、違うよね」
涙を浮かべてしまっていたようだった、その涙を拭き取り、わざとらしく痛がる。
「いてててて」
「うわぁ」
「ひどいですねイリアさんは」
「………さすが学園一のビンタ女」
「メリベル、それ本当なの」
まあそんなことはおいておくとして、まずはこれからどうするかを決めなくてはならないかだろう。
「でだ、アルフ達はボスのところまでいきたいんだろう」
「ああ、出来れば手を出さないでほしい」
「それはいいんだが」
急に座り込み、真面目に話し出す。
「勝てるのか」
「倒すさ」
「そっか」
アルフの目には何かしらの決意が宿っていた。多分相討ちでも殺す覚悟だろう。それでは意味はないのだが、言葉で止めることすら不可能な目つきだ。多分止められるとしたら、マリアさんくらいだろうが、彼女はアルフの考えを理解しているのだろうか、止めることはなかった。
「それじゃあ時間稼ぎは任せとけ」
「………そう、男なら決めるときは決めるべき」
「アルフさん頑張ってください」
「みんな、俺はっ」
アルフが感極まって涙を流す。
「アル君いい仲間じゃない」
「ああ、俺の自慢の」
「じゃこの例は酒場代お前のおごりな」
「………前から気になってた高いお酒がある」
「メリベルお酒飲めるんだ」
「………これでもドワーフだから」
「おいっ」
だが自分達のパーティーで真面目な話は出来るだけしたくないし、アルフが生きて帰る理由が必要だ。だからふざける。辛いことを遠ざけるように、重い空気を吹き飛ばすかのように。そうして時間だけが過ぎていった




