第82話 やっぱり効果あったか
「ここが野営地になります」
たどり着いた先は女性の園だった。
「うわぁ」
「やっぱり来たか」
後方の扉が開かれると共に、マイヤーとティアナが乗り込んでくる。
「人払いを」
「はっ」
「あの私は」
「悪いが外で待っててくれないか」
リズすらも追い出され、装甲馬車の中は日本人3人だけになる。
『やっぱりとは言ったけどなんで来ちまったかなぁ』
だから会話も日本語だ。
『仕方ないだろ、仲間のためだ』
『チート持ってないなら素直に引っ込んでた方がいいのに』
『それを言うならティアナ』
『ユキの方がいいわよタナカさん』
『じゃあユキさんこそ来ちゃ不味いだろ』
彼女も自分と同じでチートなしなのだが。
『魔力はあったから、装備とかで無理矢理な』
『むちゃくちゃだろ』
『そうよ、そのせいで私たちの財産半分以上飛んだじゃない』
金がない冒険者にとっては聞きたくない話だ。領地をもつ貴族の財産の半分と言えば、日本人的な価値観で言えば地方予算の半分を私用につぎ込んだのだ。もし日本でやれば一気に首がとぶだろう。
『別にいいだろ、それにお前だって魔法使いたいっていってたじゃないか。だから学園の希代の魔術師に金を積んで』
知り合いに金を積んでいたらしい、と言うかここで彼女に繋がるとは思っていなかったが、なにも言わない。
『けどそんな強力な魔法じゃなくても』
『魔術は強ければ強いほど便利なんだよ』
兄妹ケンカが始まるが無視をする、まあそれはそうと点滴を打たれているからか、だんだんと痛みが和らいでいるような気がする。
『それはそうとタナカさん怪我大丈夫』
『いや実は歩くのもしんどいんだけど、大分ましになってきたかな』
と言うか歩けないはずなのだが、ここに来るまでの間でかなり痛みが和らいだ気がする。
『おっ、やっぱり効果あったか』
『なにしたんだ』
『いやポーションと魔力入りの血を同時に流し込んでるんだが』
たしか、ポーションは魔力に働きかけることで自然治癒力を高めるらしいので、ポーションの効力で治癒力を高めながら、魔力を抜いて輸血すると言う荒業を行われているようだった。
『ただまあ、その状態でも鑑定できないから、多分魔力が定着することはないんじゃないか』
つまるところ、これを受けられるのはマイヤーの所でだけらしい。
『一応戦闘が終わっても禁断症状とか出てこないか通院だけはしとけよ』
『りょーかい』
異世界で病院がよいが決まってしまった瞬間だった。
『まあひとまず体のことは置いとくとして、作戦は』
『時間がないのは聞いたか』
『一応な』
『だから正面決戦を仕掛け短期決戦で終わらす、その為にうちの軍をすべて召集した』
『作戦はそれだけか』
『一応別動隊が内部に奇襲をかけるが、使えるユニットが俺と部下の優秀なの5人、後は志願しているアルフ達だな』
アルフも突撃する気らしい。
『なら自分もだ』
『止めないのか』
『止める権利なんてない』
『なら私も』
『ダメだ』
『なんでタナカさんはよくて私は』
『ダメなものは』
ケンカを尻目にできる限り体を休めておくことにした。




