第79話 やってみせろ
「で、どこに向かいましょうか」
「いや、その」
自分より小さい女の子に背負われ、野戦病院内を移動する。正直、いやそんなことを言わずとも恥ずかしいし情けない。
「そんなことより重くない」
「いえ獣人の力は強いので、それより居心地が悪いと言うようなことは」
「そんなことはないけどさ、そのね」
なにか言おうと思うのだが、言えるわけもない。何故なら自分が動くにはこの手段しかないからだ。
「車イスぐらい作っといてくれればいいの」
あればこんなに恥ずかしい思いをしなくていいのに。それはひとまず隅においておくとして。
「まずはユーリの所に行こう」
「わかりました」
リズが歩きだす、大分揺れるが自分で歩くより速い。もし無事に五体満足で帰ってこれたら体を鍛えようと考える。そしてすぐにつく。
「勝手には入れるの」
「問題ありません、許可はいただいてます」
「そっか」
そう言われ中に入る。
「オレハワルクナイ、オレハワルクナイ、オレハワルクナイ、オレハワルクナイ」
中には壁に向かってそう言い続ける少年、いやユーリがいた。
「あなた達は」
そしてそのそばに寄り添うように美少女が2人。多分ユーリの仲間だろう。
「ユーリに話がある」
ここで詰め寄れればかっこいいのだが、さすがに無理であり、リズはその2人に止められる。
「今ユーリ様は」
「そのユーリの力が必要なんだ、おいユーリ聞こえてんだろう」
声を出す度に体が痛む。
「お前は勇者なんだろ」
「オレハワルクナイ、ニホンジンヲキズツケルツモリハ」
「傷つけたくないなら、お前がどうにかしろ、勇者なら敵も味方もひっくるめて救ってみせろ。それは冒険者である自分にも、ただの領主であるマイヤーにもできないことだ、だからやってみせろ」
そう叫びきる。ユーリに反応はない。がやりたいことはやった。後は武器を揃え追いかけるだけだ。
「次は武器を取りに行こう」
「はい、なら武器庫ですね」
リズに頼み、武器庫に向かおうと振り返る。そしてユーリの部屋を後にした。




