第75話 ゲホッ
ナイフと剣がぶつかり合う。のと同時に転がりベッドから落ちる。点滴台が倒れ音を立てる。
「急になにするんだよ」
「先に行きたきゃ俺を倒せっていってるんだ、嫌ならここで寝てろ」
その言葉と共に、ベッドがまっぷたつになりマイヤーが更に斬りかかってくる。
「ならお前を」
「やってみろ」
更に斬りかかってくる、それを何度も何度も弾く。これでもそれなりに戦ってきたのだ、それこそアルフの戦いかたも見てきた、だからそれなりに動けるし弾ける。
「だがな」
だがそれだけだ。弾けはする、防げはする。それでも反撃できない。反撃する余裕はない。出来たとしてもそれは鎧の上などで全く意味をなさない。意味はなさないが自分には仲間が。
「タナカさん無理しないで休ましょうよ」
「そうよタナカ話は聞いたけど、死にかけなんでしょ」
「………タナカ無理は」
心が折れかける、リズ達は自分を心配しているのが分かる。本心で心配してくれているのだ、自分でも無理だということは分かる、体がボロボロなのも分かる。それでも。
「タナカお前じゃ無理だ、だから休め。アルフ達は俺が無事にここに戻らせる」
マイヤーは既に剣を下ろしている、それでもなお攻撃を続けるが、鎧で、籠手で、簡単に防ぐ。自分がやっているのは徒労にすぎないのかもしれない。体を動かす度に体の中が痛む。
「ゲホッ」
血が口から出る、口の中が鉄の味がする。
「ほらもう無理だ、やすめ」
軽く押される、それだけで足がふらつき立っていられなくなる。そして。
「タナカさん」
「タナカっ」
「………タナカ」
崩れ落ちるかのように倒れこむ、体に力が入らない。
「ゲホッゲホッゲホッ」
地面が赤く染まる。
「タナカさんが死んじゃう」
「いや血を流し、軍医を早く」
体の異物を吐き出すかのように、血を吐き出す。何度も何度も吐き出す。ナイフが血に染まる、いつの間にか落としていたようだ。
「はぁはぁはぁはぁはぁ」
「エレインはまだか、くそっぼっこぼっこにしてベッドに寝かしつけられる様にするからって離しといたのが不味かったか」
口から血が出きると、不思議なことに体の痛みがなくなる。だから体を起こし。
「タナカさんっ」
血まみれになったナイフを構え。
「タナカっ」
誰かを呼ぶマイヤーに。
「………タナカ」
突っ込む。
「バカかよ、ブースト」
その言葉と共にマイヤーが消え、いやナイフが勝手に動く。
「「「「えっ」」」」
脇から斬りかかるマイヤーの剣と打ち合う。と共にまたマイヤーが消え、ナイフが勝手に動く。
「なんだよ」
そしてまた現れたマイヤーの剣と打ち合う。そしてまた消え、ナイフが勝手に動き、打ち合う。
「ちっ、鑑定」
そして目の前に現れたマイヤーがスキルを使う。
「なんだよそのナイフ」
ナイフを指差し叫ぶ。
「神殺しのナイフってなんなんだよ」
「知るかっ」




