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第61話 これには懲りてくれ

「悪かったな色々と」

「もういいよ」

「いや本気で」

「何回目だよ、謝ったの」

「タナカさん頑張りましょう」

「はぁなにやってるんだろう」

 昨日100万Gの借金があることが判明し、その返す当てからの依頼と称して頼まれたのは、吸血鬼との戦いに使用した村の後片付けならび死体の一部回収と高級家具すべての引き渡しである。と言うわけでイリアとエレナは町にお金を返しに、メリベルはリサさん、マリアさんと共に吸血鬼のできる限り傷ついていない死体を回収したのち吸血鬼の研究を行っているためにこの場にいるのは自分とアルフ、リズの3人だ。その3人がやることと言えばクレーターだらけなのでそれをひとつだけ残し埋めたり、逆に穴を掘ったりといった土木作業だ。といっても魔術で1発とはいかず、村に残っていたスコップを使い肉体労働を行っている。

「はぁ」

「アルフさんこの人は」

「えっと、ああっこの人はまだ埋めないでくれ」

「分かりました」

「えっとこの人は、こっちか」

 と言っても穴を埋めたりしてるのは自分1人だけでアルフとリズは判別できる死体をこの村にいた人かどうかを判別している。

「タナカさん手伝いましょうか」

「いや…………大丈夫」

 この仕事分けは仕方ない、判別はアルフしかできないし、リズに肉体労働は向いていないと思う。いやまぁそう言ったことをしたことない自分よりは役立つだろうけど、何となくだがさせるわけにはいかないし、かと言って死体運びはあまりしたくないのできっと適材適所だろう。さらに言えば死体に関しては火葬するようで、この村にいたと思われる死体は個別で焼かれ、それ以外の死体はまとめて焼かれる。これには死体に引かれて獣や今は少ないがモンスターに襲われるのを避ける為のようでどこでもにたようなものだそうだ。ただ盗賊などの犯罪者の場合、場所にもよるが放置が基本のようで、犯罪者の安息の地を減らす意味が強いらしい。だからそのその他大勢のために大きな穴をひとつ掘って残してあるのだ。

「だからって1人でやらせることないだろうに」

 襲ってきた吸血鬼はそれなりに多く30~40人ほどであった、いや死体の数からの推測でしかないのでもっと数がいただろうが。実数がどうであれよく生き残れたなと言うものだ。その分穴を掘る数も増え疲れがたまっていくと言うものだ。

「よしこれで最後だ」

「終わりました」

「こっちは全然、でどれだけ開ければいいんだ」

「小さいのを9人分頼む」

「そっか」

 アルフは気軽に頼んでくるのだがこの村はアルフの故郷だと言うことを今思い出す。そう思うとアルフの声に悲しみが混ざっているような気もする。

「アルフ、ここで何があったんだ」

「ここでか、話すと長くなるが」

 アルフの話が始まった。

「と言ってもあまり話すことはないな、なにせ俺はまだ子供で武器の使い方も村のガキたちで頼み込んで無理やり村一番の使い手、と言っても冒険者になって村の専属護衛として引退した気のいいおっさんだったんだが、まぁそのおっさんに武器の使い方、戦いかたを教わってたんだ」

「それで」

「まぁある晩のことだったんだがマリアねぇが慌てて隣の家の俺んちの部屋に飛び込んできて、アル君隠れてって言ってきたからベッドの下に飛び込んだんだ」

 ありきたりな話だが実体験として聞くとかなり恐怖を煽られる。

「そのあとはベッドの下で怯えながら朝が来るまで待ってて、そして朝日と共にベッドから出るとそこには誰も何も残ってない村に取り残された独りになってたわけだ。でその後騎士団に助けられて冒険者になって今に至るって感じか。吸血鬼の仕業って聞いたのも後になってからだし、何が起こったのか知らないから聞かれても困るんだけどな」

「でマリアさんはその事は」

「俺も気になって聞いたんだが、その辺りの記憶がないらしい、覚えているのは俺をベッドの下に逃げ込むようにいったところまでで後はあやふや、で吸血鬼の城にいた記憶になってるらしい」

 つまりはよくわからないらしい。

「で彼らは」

 そう言って個別に埋めていく死体を見る。斬撃に銃撃を受けて死んだはずなのだがきれいだった。

「もう十分悲しんださ、タナカ、リズここを任せても」

「ほらよ」

 最後まで言わせずにアルフに瓶を渡す。

「けどなこれには懲りてくれ、本気で」

「わるい」

 そう言ってアルフは離れていったのでリズと2人でもくもくと死体を穴に入れる。すべての死体を入れるのはそれほど時間はかからなかった。

「でこのあとは」

「後はこれを入れるだけなんですが」

 そう言って見せてきたのは陣が刻まれた板が10枚。

「私も作ったのはこれがはじめてなのですが」

「まぁそれはおいといてそれをどうすればいいんだ」

「これを穴の真ん中にいれて魔術を使えばいいだけです」

「そっか」

 個別の穴はおいといて、大きな方の穴にその板を置く。そしてリズがその板に触れ離れると白い炎がつく。それは幻想的な光景で、もの悲しい光景でもあった。

「これで火が消えたら埋めておしまいなのですが」

「勝手にやるのは不味いよな」

 そう言うことで後9個の炎が消えるまでその村に留まることになった。

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