第60話 なら私が貸そうか
「おい」
「あの」
「最低ですね」
「どうしましょうかこのゴミ」
「………イリア、ゴミなら捨てるべき」
「アル君さすがにかばえないよ、と言うか私も責めたい」
「そうね捨ててしまいましょうか」
無駄に豪華な家具が並んだ洞窟で説教を始めたのだが先になかなか進まない。何せ100万Gだ、すごく単純計算で1Gが大体100円くらいの価値だとすると1億円だ。時おりチート持ちがなんやかんやしてそれ以上の価値があるものを手に入れたりしているが、そんなものは宝くじに当たるよりひどい確率になりそうだ。要するに手堅く稼ぐ必要がある。
「でいつまで返す必要があるんだ」
それが重要だった。もし返済日が目前ならこいつを見捨てる覚悟はある。
「いや返すのはいつでもいいんだが」
「だが」
「一定期間毎に額が1割り増える」
「よし見捨てよう」
「そうですね」
「そうね」
「………だね」
「アル君ごめんね、久しぶりにあえて嬉しかった」
即全員が見捨てる体制をとる。
「おいおいおい仲間だろ」
「勝手に金持ちだしといたのは見逃してやるが、借金作るとはさすがにな、ふざけんな」
「えっと」
「で何に使った家具買うっつってもそんなに使わないだろ」
「いやそれが」
「タナカさんでしたっけ、少し前にべろべろに酔って」
「酒かよ、また酒かよ」
酒のようだ、たぶん酒場でなにか壊したか、傷害事件でもおかしたか、それとも酒場そのものを破壊したのだろう。
「いや1本10万Gの瓶を」
「死ねよ」
「タナカさんストレートすぎます」
「けどタナカの言うこともその通りのような」
「タナカさんアル君がいくらバカでもそれは」
「………バカは死んでもなおらない」
「そもそも1本10万Gの酒ってなんだよ」
単純計算で1本1000万円だ、そんな酒は酒場に普通においてあるとは思えないのだが。
「いやぁ家具買ってきたときにふらっと入った店で」
そう照れながら言う、要するにだ高級店に入って、かつそれなりに懐が暖かかったために高そうな酒を飲みまくり、地獄となってしまったのだろう。
「大金もって破滅するパターンじゃないか」
「ごめんなさいみなさん、アル君は馬車馬のように」
「そしてすまん、お前らの事も売ったかもしれん」
「死ねよ、本気で」
もはや怒りでナイフを抜きそうになる、たぶん払えないからつけにしようとして、さらにおまけとして仲間、この場合は自分達の名前を告げたのだろう。もはや赤の他人のフリをすることなんて不可能に近い。
「タナカまだ行ける、まだ私たち顔を見られてないんだから」
「後拠点にしてるギルドも告げた」
「………終わった」
なぜにこいつは逃げ道を塞ぐことだけは忘れないのだろうか、そう絶望にうちひしがれる。
「うん美味しかった、吸血鬼さんってあれ何してるの」
離れて食事を食べていたのだろう満腹そうなリサさんが来る。だが誰もリアクションをとる暇はない、逃げるか出頭するか、出頭したら奴隷行き決定な。
「さすがに奴隷ギルドでも100万Gは」
「マジか」
奴隷すら無理らしい。
「なら私が貸そうか100万G」




