第58話 私はマリアよ
アルフと睨み会う、一触即発とは今の粉とを言うのだろう。それぐらいお互いに緊張が漂う。それを察したのだろうイリアとメリベルは少し離れたところにいる。
「タナカお前弾入ってないだろう」
「はっそんなわけないだろ」
アルフとやり合った、と言うより一方的に殺られたのはこの世界に来た直後だった。あのときは奴隷であったリズの扱いを巡り嘘をつかれ弾切れの銃のトリガーを引き、気絶するまでぼっこぼこに殴られると言う展開だった。それと今は一緒だ。そう弾なんてもう入ってはいないだから完璧にブラフだ。
「お前の方こそ弾が入ってるんじゃないかって言う恐怖と戦ってるんじゃないか」
そう何が嘘で何が本当かわからないなら強気に出てしまえばいい、弱気になればつけこまれる。
「それに怖くないなら飛び込んでくればいい、もしかしてだが体力つきてんじゃねぇの」
「そんなことねぇよ」
互いに互いの状態を探り合う、勝負は一瞬だから互いに探り合う。
「そもそもなんで疑う」
「こんなところでアルフと再会するなんて普通は思えないからな」
「そっちだってタナカはなぁ、転送陣が使えないんだよ、へっそんな初歩的な事を調べてないなんて三流だな吸血鬼っ」
そうして突っ込んでくる、それはまるで弾丸のようだ。銃の弾はないので回避に専念しようとするが、避けられる自信はなく、諦めつつあった。つつあったのだが、誰かが割り込んでくる、それはイリアたちではもなければ、関わったことがある人でもなく、見ず知らずの見知らぬ女性が自分とアルフの間に割り込む。
「やめて、アル君」
その一言でアルフは止まる、そう止まったのだ。と言うか無理矢理止められている。
「マリねぇ、何で隠れてないんだよ」
「アル君が心配だったから」
「心配ってこんくらい大丈夫だし、そもそも危なくなったら逃げてくるつもりだったさ。と言うか俺にとってはマリねぇの方が心配なんだよ」
マリネぇと呼ばれた女性はアルフが突き出した剣を受け止めながら話をしている、そこにリズたちも合流したようなイリアたちが駆け寄ってくる。
「タナカさんこちらに吸血鬼が駆け寄ってこられましたが」
「この人よ、うわぁ本物だ」
「………これが吸血鬼」
「こんなにそばにいて大丈夫なのかしら」
命がけの決闘の雰囲気が霧散する、そこには和気あいあいとして空気が広がる。もはや決闘がどうとか殺しあいがどうとか言う雰囲気ではなかった。まぁ決闘していたら確実に負けていたが。
「えっとアル君この人たちは」
「俺のお節介焼きな仲間と、あんたは誰だ」
「私はただの学者のリサ、男はちょっと苦手だから離れてくれない」
「でアルフその人は」
マリねぇと呼ばれていた女性を見る。
「私はマリアよ」
「そして俺の……そのなんというかあれだよあれ、許嫁ってやつだ。それでなんだ後ここで長話は不味いこっちに来てくれ隠れる場所がある」お




