第56話 なにやってるんだよ
当たり前ではあるのだがなんの軍事訓練も受けたことのない身で、ショットガン1丁で敵の進行を防ごうとなると躊躇いなく撃ち続けるしかない。撃ち続けなければならないので。
「弾がなくなる、どんだけいるんだよ」
集団で襲ってくるので接近されると処理できず、かといって長距離だとショットガンの弾は散る上に当たってもごくわずかの時間しか動きを止められない。だからだんだんと距離を詰められている。詰められているのだが対処する方法もなく、ただただ弾だけを消耗していくだけだ。
「なんだよ吸血鬼、ルール違反だろあれ」
「タナカさん数が多すぎて」
「むりむりむり、逃げるぞリズはリサさんを連れて早く行け」
「タナカさんは」
肩にかけた鞄から弾を取りだし、ショットガンに込めた弾はどんどんと減っていく。
「ちゃんとついてくから」
ポンプを動かし、装填するのだが。
「近いんだよ」
その頃にはすでに目の前にまで来てしまっている、だから躊躇いなく顔を吹っ飛ばす。
「ああっやってられるか」
狙い撃ち、吹き飛ばすのを何度か繰り返すのだが当たり前であるが、撃てば弾は切れる。ショットガンに込めた5発分を撃ち尽くした後は、もはや弾を込め直す時間はない。だからショットガンを振り回す、殴りかかるのだが。
「えっ」
簡単にバックステップで避けられ、殴られる。殴られたはずなのだが。
「あれ」
外にいた。
「タナカさん」
「あれかなりヤバイかも」
痛みが襲ってくる、殴られた顔となぜか頭が痛い。痛いがうご。
「うぐゴホッ」
腹に衝撃、目の前に顔。両腕は押さえつけられ動かせない。馬乗りになっている吸血鬼らしきおっさんが牙を見せつけてくる、その顔に向かって鎧がわりになっているスライムを。
「っ動かない」
動くことはなく、首元に牙が迫る。体をバタつかせ抵抗しようとするが、そもそも動くことはない。動かないので武器をとることもできずおっさんの顔が首元へと伸びる。少しでも離れようと体を動かそうとする、そして。
「なにやってるんだよタナカ」
首と血が落ち、その先には。
「もう少し丁寧に助けてくれよアルフ」
自分達の仲間であり、行方知れずになっていたアルフがそこにいた。
「タナカ武器は」
「もう残ってない」
「ほらよ」
そう言って渡してきたのは中折れ式の単発ショットガンだ。
「弾くらいはあるんだろ」
「後少し位だけどな」
「弾くらい買っとけよ」
「どっかの誰かさんが有り金の大半持っていったからな、貧乏に逆戻りだ」
鞄から弾を取り出す、残った弾丸は爆裂弾、要は爆発する弾だ。コストが高く使いたくはないのだが。
「アルフ、爆裂弾10」
「了解タナカ切り抜けるぞ」
「あぁ」




