第55話 なんだよそれ
爆発音、そして柔らかい感覚、そして声。
「タナカさん、タナカさん起きてください、タナカさん」
目を開くと、目の前に焦っているようなリズの顔があった。
「タナカさんやっと目を覚ました」
「えっと」
「敵襲が来てるのよ、わかる」
周りを見ると木でできた建物のなかにリズとリサさんがいて、自分の荷物と言うか銃なんかも転がっている。また爆発音。
「敵って」
「知らないわよ」
「わかりません」
「と言うか何があったんだよ」
状況がわからない。だがわからないと言って爆発音が消えることはなく、またなにも変わる気配がない。
「この村の跡地に来た後に急に敵襲が」
「急にって」
「魔術的な探知機でもあったんでしょうね」
「そこら辺はいいとしてイリアとメリベル、それにエレナは」
「3人は別のところで戦ってます」
「だからなにと」
そう思い、窓から外の様子をうかがうとメリベルが例のパイルバンカーを振り回していた、振り回してる相手は。
「人」
人だ、それもどこにでもいるような村人のようなものだ。それに対して武器を振るう。顔をリズたちに向け直す。
「えっと敵って」
自分の目には、村人に対して武器を振るっているようにしか。
「吸血鬼よ、野良なのか魔王の配下かは知らない。そもそも生態を知らないからわかりようがないんだけど」
「へぇあれが」
端から見れば村人のようにしか見えない、あれが吸血鬼ならすれ違い様に噛まれるのも仕方ないだろう。そう思いながらもう一度覗くとメリベルが吸血鬼だと思われる村人の腕を切り飛ばしていた。
「おい」
叫んでしまう。
「タナカさん」
「なにやってるのよ、隠れてたのに」
腕を切り飛ばされ、戦線離脱仕掛けた村人と目が合う。それがこちらに向かって。
「タナカさん銃です」
「えっ、おう」
リズからアサルトライフルを受け取り、鞄も引き寄せるために目をそらす。
「なあ本当にあれ」
「タナカさん見ればわかります」
また外を見ると大分接近した、五体満足の村人が。
「なんだよそれ」
アサルトライフルを撃つ。
「腕切り飛ばしても、そもそも負傷しても魔力が続く限り回復するみたいなのよね」
「なんだよ、それ」
1マガジン30発を吸血鬼に叩き込むが怯むだけだ、鞄に手を伸ばし次のマガジンを。
「あれ」
くうを切る。そちらを見る、マガジンは1本も入っていない。
「タナカさん危ない」
「えっ」
向き直すと、目の前に吸血鬼が。ここまで来て気づく、口から牙のような歯がはえていて、目が赤く充血している。確認できたのはそこまでだった。理由は簡単だ。
「私戦闘要員じゃないんだけど」
銃声と共に顔が吹っ飛ばされている、振り向くとショットガンを構えたリサさんが。
「返すわね」
「あ、ああ」
「タナカさんどんどん来ます」
「リズ武器は」
「ごめんなさい、ナイフくらいしか」
「分かりたくないけど、わかった」
ショットガン1丁で、何とかしなければならない。
「なんとかなる気がしないよ」




