第52話 今回はやりあいたくないなぁ
「さてと」
リサさんがメリベルを、ちょっと手伝ってと言いながら連れていくと暇になってしまう。
「それにしてもタナカさん」
「んっ」
「また魔王ですか」
「今回はやりあいたくないなぁ」
「と言いつつ今回もやりあうんじゃないの」
「はぁ」
これまでにもチート持ち魔王や龍なんかとやりあってきたがそのどちらでも重症を負っていた。誰かが死ぬよりはいいのかもしれないが、治療費はかさむし、何よりいたいのは嫌だ。
「けどタナカさん今回は国が動いてますし」
そう言って慰めてくれるが、今回の敵は吸血鬼。最大の特徴と言えば敵を味方に引き込める可能性があると言うことだろう。小さいところならどうにかなるが大きくなればなるほど確認しようがなくなり、欺瞞情報やら裏切りやらで役に立たない気がする。こういったときに役に立ちそうなのが鑑定とかのチートスキルなのだが持ってもいないし、そもそも一介の冒険者である自分が国がどれくらいチート持ちを重要視してるかとか、何人抱え込んでるか何て知らないし、そもそもどれくらいのチート持ちが来てるかさえも知らない。なので最悪な状況だと国の魔王討伐隊が動くのも大分先になるかそもそも内戦突入等で動けなくなるかもしれない。だが今回の目標は魔王ではなくアルフを見つけだし、連れ戻すことだなので魔王との遭遇は。
「国、と言うより騎士団か」
「正確に言うと騎士団プラス少しの冒険者ね、大規模に騎士団が動くとしたら、露払いとしてよく雇われるからね」
「そうか」
となると裏切り者を多数仕込みやすくなる。
「そう言えば冒険者と騎士団ってどっちが強いの」
「独学と正規訓練、どっちの方が強くなりやすいかしら」
「なるほど」
だから裏切られても対処しやすいように少数雇うのだろう、合理的なような気がする。
「戦力としては」
「そこまで詳しくないわよ」
「だよなぁ」
まあわからなくとも国が期待しておくる精鋭なはずだ、弱いはずはないだろう。と言うかそうであってほしい。勢力争いやら箔付けのための弱い部隊がきたら逃げる、と言うか逃げられればいつでも逃げるが、ちゃんと逃げ切れる時間が稼げる部隊が来てほしかった。
「チート持ちが来てくれたら楽なんだけど」
「そのチート持ちって強いの」
「ササキとか」
「お爺ちゃんかぁ」
「チート持ちは何でもありだしなぁ」
その代わり身の丈に合わないことをやって苦労していたり、背負いきれない責任を背負いおかしくなったりするのだろう。
「ないものをねだっても仕方ないし早く寝よっと」
「そうですね、タナカさん怪我してますし」
「そうだったわね」
「と言うわけでおやすみ」
そう言って即眠りについた。




