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第37話 紛らわせることね

 空の旅は大変である。

「……………………うっ」

「イリア、大丈夫」

「………タナカはよく………うっ」

「水でも飲んで落ち着いて」

「………………………タナカ私にも」

「…………すいませんタナカさん私にも」

「今準備するから、エレナも」

 エレナが頷く。と言うわけで水を4人分コップに注ぎ、手渡す。4人とも顔色が悪い。まぁ仕方ないだろう、ワイバーンでの移動は辛すぎるのだから。


 ワイバーンでの移動の辛さの始まりは浮遊感を味わい、それが収まった頃からだった。当たり前ではあるのだが空の上の方は風が強く、ワイバーンは見た目通り羽を羽ばたせながら飛ぶ。要するにだ、そんな状態にさらされた牢屋がどうなるかと言えば、揺れるのだ、上下左右関係なしに。それも激しく。だから酔ってしまうまでは一瞬だった。よくある空がきれいとか、雲に乗れないか等の楽しそうなイベントが起こるわけもなく、吐き気との戦いが始まったのだ。


 4人は水を飲むと少しは落ち着いたのか、吐き気をこらえるような顔ではなくなる。とはいっても顔色は青白く悪そうでしゃべるのも辛そうではあるが。

「………………タナカは……気持ち悪くないの」

「ないな」

 かなり揺れているが、それほどでもない。むしろ高いところにいくので怖そうに思えたが、鎖をぐるぐる巻きにされ外が見辛いのと周りの4人が気持ち悪そうにしているというある意味の恐怖感で、高所の恐怖は押さえ込まれていた。

「4人とも気持ち悪いなら吐いちゃった方が」

 そう声をかけるが、4人とも首を振る。まぁさすがに人前で吐くのは嫌だろうが、この場合だと吐いてしまった方が楽になれそうな気がする。

「………タナカさん………気分が紛らわせることなにか無いですか」

「紛らわせることね」

 何かないかと考えるが1つしか思い付かない。

「あのさ、イリア飛び立つ前にさ」

 そこまで言うとイリアは何かを察したような顔になる。

「ああ、名前を2回呼ばれたことね」

「そうそう」

 それぐらいしか気になったこと、というか話題にすることがない。

「あれはね、私の家族、と言うよりおばあちゃんとお父さんと私だけなんだけど3人とも名前がイリアなんだ」

「へぇ」

「理由はおばあちゃんいわくおじいちゃんにわかってもらうためだって聞いてたんだけど」

「なるほど」

 何となくロマンチックな話に聞こえるが、実際にそういうつけられ方をした人を名前が呼びづらいだろうな、という思いの方が先に出てくる。ついでとばかりにリズとメリベル、エレナにも聞くが、エレナ以外は親がつけた名前であり、エレナは非合法な元奴隷商人に売られかけた経歴からか、奴隷仲間につけられたという回答が帰ってきた。

「そういうタナカはどうなのよ」

「えっと」

 自分も答えるように言われるが、答えたところでリズとメリベルと同じように親につけられただけなのだ、あまり面白味がない。だがそのまま答える、何か面白いことを考え付かなかったのだ。

「はぁであとどれくらい」

 会話が終わってしまうと、あと気になるのは到着までの時間になるのだが、空の移動は初めてなために不明らしい、だからしょうもないことを話ながら、それ以外のことを気にせず、牢のなかでのんびりと過ごした。

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