第36話 ワイバーンですよタナカさん
次の日、全員揃って魔術ギルドに向かう。
「さてと」
一応イリアが言うには道具すべてを持っていった方がいいとのことなので、道具と言ってもお金がないので、本当に最低限。アサルトにショットガン、それぞれの弾はアサルトはマガジン5つにショットガンの弾であるシェル40発、特殊弾である爆裂弾が4発、それにメリベル作の剣にリズがくれた安物のナイフ。というかそのナイフなのだが、元々は鉄製のナイフで鉄の色だったのだが今では何かの血がついているように真っ赤に染まり、研いでもらっても落ちないという品になっている。まぁ切れ味が変わったわけでもないし、そのまま使っているのだが。それと最低限の干し肉が拳1つ分、にそれらを入れられる鞄が1つだ。あっ後それに加え、スライム製の全身鎧に服なのだがこちらはあまり変わっていない。更に言うとリズはメイド服のような服に、自分と同じ鞄、それにサブマシンガンにナイフを持ち、イリアとメリベルに関しては。
「何でローブ」
「卒業生が学園行くときは着ないとダメなのよ」
「………鎧は持ってきてあるから大丈夫」
と言うわけで2人はローブを来て、メリベルの方はその上に鎧やライオットシールド、要は透明の警察が持つような盾のことだ、を背負い。エレナはなんというか普通の服にリズ手製の鞄、腰にナイフを指しているだけだ。これに馬車があれば今持ってきたすべての荷物なのだが、馬車は冒険者ギルドに預けてきた。冒険者ギルドでは荷物の預かりなどはしていないようなのだが、昨日の依頼を持ってきてくれたことで、特例的に認めてくれた。それほど切羽詰まっていたらしい。そんな大荷物で歩くので街の人に見られるが、冒険者のようだと判断されるとすぐに納得され目を背けられる。多分出ていく人たちだと判断されたのかもしれない。そんな奇異な視線にさらされながら魔術ギルドに。
「イリア様用意ができました」
そこには更に奇異の目にさらされそうな光景が広がっていた。小型のドラゴン、いやワイバーンがいたのだ。というかこっちの世界に来てこの手の生物を間近で見たのは初だ。
「ワイバーンですよタナカさん」
「これどうしたのよ」
「はい、学園の方に連絡したところ学園で飼育しているワイバーンを1匹送られてきた次第であります」
「はぁ」
そう息を吐くのだが内心は興奮していた。なぜならワイバーンだ、異世界物の中の強敵、戦闘であれ移動であれ様々な手段で絶対的な能力な飛行能力を持ち、それに見た目がかっこいい、ワイバーンだ。実際1度はあるのだが、あのときは戦闘中だったので目の前にいるとなると興奮するしかない。
「そうワイバーンね」
「えぇですので少し用意が整うまでお待ちください」
そう言って昨日話をしたギルド職員はギルドの中に入っていく。
「そういえばさワイバーン見るのほぼ初なんだけど、なんか理由あるの」
と言うか地上におるモンスターは騎士団に殲滅されているのは聞いているが、ワイバーン等も見た覚えがなく、こちらは倒しにくい存在なはずなのでどうしてだろうと思っていたのだが。
「………地上のモンスターが減ったらワイバーンの数も減ったみたい」
「あぁ、なるほど」
要するに食料の減少による数の減少のようだ。
「それにその魔王が出た後でワイバーンに乗った竜騎士団のほぼすべてが壊滅したそうよ」
あとは戦闘による減少らしい。その2つが合わさり日常では見なくなったのだろう。そしてそこから察するにこのワイバーンすごく貴重な個体なのだろう。
「準備ができました」
魔術ギルドの職員が戻ってくる、手には大量の布をもって。
「空の上では寒いのでこの布にくるまってください、それと皆様が乗られる場所なのですが」
そういわれ集められ案内された先には。
「牢屋」
牢屋の屋根にロープが取り付けられ、なかには大量の布が、なんというかすごく景色の良さそうな移動手段であった。
「こちらの篭の中にはいっていてください、それと中にはいられましたら、あまり暴れないようにとのことです」
「はぁ」
牢屋ではなく、篭らしいがもはや気分の問題だろう。個人的には入って来たばかりの牢屋の方が思い浮かばれるので牢屋だ。なのでその牢屋に入る。牢屋のなかは前の時の牢屋と比べ居心地が。
「安全のために鎖巻きますね」
そう言われ鎖でぐるぐる巻きにされる、中の居心地はいいのだが、気分が悪くなる。
「タナカさんナイフに手を伸ばしてどうしたんですか」
「あっいやなんでもない」
無意識でナイフに手が伸びていたようだ。
「………タナカ落ち着いて」
エレナもそれに同意する。そうこうしている内に鎖をぐるぐる巻きし終えたのだろう金属音が止み、声がかかる。
「イリア様、イリア様によろしくお伝えください」
その言葉と共に急な浮遊感を味わうこととなった。




