第33話 ………タナカ出られたんだ
「さてと」
冒険者ギルドを後にしたのだが。
「イリアたちの様子見に行くか」
「そうしましょうかタナカさん」
することが特にないので、イリアたちの方、魔術ギルドの方に向かってみることにした。
「そういえばさ、魔術ギルドって何してるの」
「えっと、新しい魔術を作ったり、有望な人材を魔術学園に案内したりでしょうか。詳しいことはイリアさんたちの方が」
「まぁそうだよな」
魔術師、という職業は勝手なイメージだが、秘密主義な感じで付き合いにくそうなイメージがある。さらに言えば塔や古城をメインに活動しているイメージ。
「あっここですね」
「えっ」
そう言って案内させられたのは、小さな平屋だった。冒険者ギルドは2階建ての建物なのだがここは本当に小さい建物で、人がおらず、本当に中に入れるのか、みたいな状態だった。
「中に入りますか」
「入ってみようか」
外からは窓がなく中に入ってみないとわからないこともあるだろう。というわけで中に入ってみた。
「あっタナカ」
「………タナカ出られたんだ」
「そりゃ出られるよ、でここは」
中はカウンターを挟み2分割されており入り口側にイリアとメリベルが、奥には職員と思われる人が3人だけいた。
「こちらへはどのようなご用でしょうか、魔術学校への入学に関しましては時期が悪く少々お待ちになっていただくことになりますが、紹介状ならば」
「あっいえこの2人を探しに来ただけなので」
「そうでしたか」
「タナカ探しに来てくれたんだ」
「まぁ暇だったから、それで何の交渉に」
「図書庫の使用許可申請にね」
「図書庫」
多分図書、本が貴重なのだろう。それを学校として扱っているのだろう。
「………時間がかかるから先に申請しに来た」
「その件なのですが、様々なところから申請がありまして、一般学生、それも卒業生に開くというのは」
「だから少し、夜間だけでも」
「本って貴重なの」
「………複製品がないものが多く置いてあるから人数制限がある」
「なるほど盗まれたりしないようにか」
「………そういうこと」
ということなら、お金なんかを積んでる所もあるのだろう。なら自分たちが使用できるのは相当後に。
「タナカごめん無理そう」
「そっか」
これで魔王への、いやアルフへの道が絶たれた。
「あの」
ちょっと絶望しようかなっと思っていた時にリズが口を挟む。
「タナカさんなら忍び込めませんか」
「えっ」
少し考える、スライムのステルス性能、魔力が宿っていない体。ぎりぎりいけそうな気がするが。
「いや犯罪でしょ」
と言うかさすがにそれを忍び込む先の関連した施設でいう必要はないと思う。まぁさすがに本気ではないだろうが。
「そうよ、そんなことするくらいなら、ねぇこれでも気が変わらない」
イリアが止め、ギルド証明用の指輪を見せる。
「はぁ、魔術ギルドの………………えっこれは失礼しましたイリア様」
「なにを……やったの」




