第31話 アルフさんとの3人旅してきた時以来ですね
「あのタナカさん」
「……なに」
「気持ちはわかりますし、うれしいのですが、その私の陰に隠れるのは」
リズの背に隠れ、周囲をきょろきょろしながら大都を歩く。
「しかたないじゃん誤認逮捕で1日雑居房だよ、しかも入った部屋が」
そこまで行って怖くなり口を閉じる、一緒の雑居房にいたのがこの音を騒がせているらしかった殺人鬼で、その男と2人きりで過ごしたのだ。現役冒険者ということで強そうということだけで。
「だからもう捕まりたくない」
「だからタナカさん、そんな恰好でいたらまた捕まりますよ」
「…………ごめん」
そう言ってリズの背に隠れるのをやめる。
「それにタナカさんの大きいので隠れても意味ないのでは」
「そうなんだけど、隠れてるって状態が安心するんだよね」
「なら、その、安心するかわかりませんけど、手つなぎません」
「手か、それもいいね」
というとリズと手をつなぎ、大都を歩く、大都はなんというか、乱雑なところだが活気があり、物があり、本当に都会という感じだった。そんな街中を2人で手をつないで歩く。
「そういえばタナカさん」
「なに」
「2人っきりで歩くのなんて、アルフさんとの3人旅してきた時以来ですね」
「そうだね」
あの頃は1村人としてここに来て、いろんなことに驚きながら過ごしていた時だ。あの頃からかなり時間が経っていた、うれしかったり、辛かったり、ときには死にかけたり、というか死んだりしたが、ここまでたどり着くことができた。そう思うと感慨深くなる。
「はぁ、で一応聞いておくけどイリアたちは」
「お2人は、魔術学校出張所の方にこの先の手配をしてくると言って大都にあるそちらの方に」
「場所は」
「それがついていきましょうかと聞いたのですが、お2人からは断られまして」
「そっかなら仕方ないか」
何かあるのかもしれないが、魔術関連はさっぱりわからない。
「それとファクラーさんから依頼が終わったのですが、最後の依頼として別の町までの護衛の手配してほしいとのことです」
「それは自分でした方が」
「そうイリアさんも伝えたのですが、本人いわく商談と仕入れがあるので依頼だけ頼みたいとのことです」
「そっかなら仕方ないか」
依頼料はもらってもう契約は解除されているが、最後の仕事とばかり、冒険者ギルドに向かうことになった。




