第22話 アルフがいればなぁ
「うらっ入ってやがれ」
多勢に無勢で勝てるわけもなく、捕まり、どこぞの洞窟の横穴に鉄の棒を組み合わせた簡単な牢に閉じ込められる。
「でどうするんでぇ」
「商人を逃がしちまったのは残念だがよ、女が手に入ったんだうっぱらちまおうぜ」
「やったりしねぇんですか」
「あほか、こいつら売った金を元手にほかの商売始めんだよ、いまどき山賊業じゃ食っていけねぇ。だからよきれいなまま売っちまう方がいいだろう、そっちの方が金になる」
「つまり」
「触んじゃねえぞ、もしも指一本触れたら触れたやつも売っちまうぞ、まぁ男はどうでもいいがな」
「へぇ」
「お前は監視しとけ」
そうして自分たちを捕まえた山賊のトップが離れていく。
「くそぅ」
それをイライラしながら見送る、部下A。名前を知らないからこう扱うことにする。そのAに聞こえないように相談する。
「でどうするのよタナカ」
「どうするもこうするも」
この牢に入れられる前、ほぼすべての武器を取り上げられ金もすべて持って行かれた。まあスライム鎧があるので脱出は簡単だったりするのだが。
「これだけであの数相手にするのは」
無理である。これで魔法やらチートやらが使えれば1人で無双できるかもしれないが、どちらも使えない身としては闇討ちで、暗殺。
「ははははは、それしかないのかな」
「………それよりも依頼失敗した」
「ぎりぎり失敗ではないのでは、護衛対象も逃がせましたし」
「それだけじゃダメだろ、というか捕まる護衛を雇いたいとも思わないし」
「そんなことより逃げる手段を考えないと」
「だよな、ひとまず使えるものは」
「杖とられたから何にもできない」
「………私も」
この世界では魔術を使うのに杖、というより魔法陣が刻まれた品が必要であるらしい、要するにイリアは戦力外でメリベルはただの武器を奪われた騎士というわけだ。
「私はそれなりに戦えなくはないですが」
リズはメイドではあるが、獣人なので身体能力は高いらしい、なので戦えるが、強くはない。最後のエレナだが非戦闘員なので考えるだけ無駄だ。さらに怖いのか震えていてイリアに抱き着いている。最後に自分だが、武器は一応あり、戦闘経験は異世界に来た後に積みそれなりにあり、人を殺すことに快楽なんかを感じるようなものではないが躊躇うつもりはない。要するに自分とメリベル、おまけにリズだ。
「アルフがいればなぁ」
彼がいれば何とかしてくれたような気もするが、探しに来たわけなのでいるはずもなくこのメンバーだけでどうにかするしかない。
「いないのは仕方ないんだし」
「おい、俺は暇なんだよ、なに相談してんのか知らねえがよ楽しませろよ」
Aは退屈していたようだ。
「まずそこの包帯銀髪」
イリアのことだ。
「なに」
「男の両手をこいつで縛りな」
そういって牢に麻縄が放り込まれる。
「タナカ、手」
「んっ」
イリアに手を差し出す、Aを安心させるためにきつめに。
「見せてみろ」
その縛られた両手を見せる。
「よしよし、じゃあ女どもは奥の壁に額でもつけてな」
その言葉でイリアたちは動き、自分だけが取り残される。
「よーしじゃあ男は出てこい」
そういわれ外に。
「気分良くさせ」
けられる前に体の一部から棒状の何かを出現させ喉元に叩き込む。
「うっ」
「よし脱出するか」




