第18話 暗殺向きじゃ
朝はちゃんと起きることができ、仕事は遅れてはいないのだが、馬車の上では役立たずな状態だ。
「なんか手伝えること探そうかな」
そうは呟いてみるが、馬の事も詳しくないし、道にも詳しくない。更には馬車にも詳しくないので、出来ることは表れる可能性がかなり低い山賊を警戒するかそれよりも可能性が低いモンスターを警戒するしかない。
「モンスターとあったのも一度きりだしなぁ」
「タナカモンスターと会ったの」
「1回だけゴブリンと」
「珍しいわね」
異世界まで来てるのに、異世界的な生物である、ゴブリンと会うのが珍しいのは何だか悲しくなる、他の代表的なモンスターはスライムだが、これはまた特殊すぎた。過去の人類生存のために残されたシェルター、ここでは遺跡と呼ばれている、を守護する流体金属製防衛兵器の事をスライムと呼んでいた。この世界的にはスライムには剣も魔術も効かず、そして遺跡に近づくものだけを襲うモンスターとして有名になっている。自分との関係としてはこの世界にたった2人しかいない、人間であり、自分は彼らに守ってもらっている。守ってもらいかたは実に簡単で、流体金属であるスライムを纏っている。まとわれていることに違和感は全く感じないためにずっと纏っているため、一応みた限りで違和感がでないように、いつもは透明ではあるが、戦闘となれば形を変え、時に武器、時に盾となってもらっている。そこまで考えてふと思う。
「あれ暗殺者向きじゃ」
スライムの透明化、たぶん光学迷彩とかなんだろうなと予想してみる、があればどんなところにでも侵入できるし、武器や盾になると言う事はどんなところにも武器を持ち込めるようになるだろう。そうなれば王などの警備をすり抜け暗殺を。
「あほくさい」
考えるのをやめる、一応転送理由はのんびりと異世界で生活してほしいとのことだし、殺しを楽しめるほど人間的にどうかと言う感じでもないし、そもそもそんなことをする意味がない。
「タナカ暗殺って」
「いやぁ自分の装備が暗殺向きかなって思って」
「まぁそうよね、それにタナカ魔力ないでしょ探知魔術にも反応しないんじゃないかしら」
「うわぁ」
暗殺者向きと言うよりも、もはや暗殺者以外に何もできない。さらに言えば攻撃も低いので一撃必殺を狙わなければならないし、もうなんだかなぁと言う感じにしかならない。さらに言えば悲しくなってくる。
「はぁ」
「………タナカ、何かいるかも」
「うそぅ」




